見出し画像

「買い出しスーパースター」

リモートワーク17日目。

anna magazine特別号校了日ということで、一昨日はずいぶん久しぶりに朝方まで仕事をしたのだけれど、体はとても正直で、それから2日間背中とか腰とか、あちこちが重く感じる。ほんの少しだけど、気持ちもなんとなくそわそわと落ち着かないしね。やっぱりコンディションを整える上で、ライフスタイルのリズムというのはとても重要なんだと思う。

ところで、締切の日は、つまり僕らの仕事ではたいていそれが校了日にあたるのだけれど、なぜ必ず夜中まで仕事をせざるを得ない状況になることが多いのだろうか。20年以上編集という仕事をしてきたけれど、振り返ってみると、校了日に定時で仕事が終わったことはほぼ皆無。よくて夜中、たいていの場合、すべてが終わるのは朝方になる。

夜中の12時を過ぎると編集部全体のテンションが異常に高くなり、カップラーメンやらスナックやらジャンクなものが食べたくなる。そこでアシスタントは、コンビニで大量に買い込んできて朝を迎えるための準備をする。ちなみに僕が新人の頃は、この「買い出し」で何を買ってくるかが、そのまま編集者としてのセンスまで問われる重要かつ恐怖のタスクだった。なにしろ買ってきた内容いかんで編集部内でのアシスタントの序列が変わるのだ。いい仕事にありつきたいなら、注意深く編集部の空気を読み、購入する食料の種類、量を吟味しなければいけない。

画像1

考えてみれば、それはとても合理的なことだ。「買い出し」における思考・行動の一連の流れは、編集の仕事のプロセスそのものだ。細かく分析してみよう。

1 ヒアリング 場の空気を読んで、編集部内のトレンドを理解する
2 テーマを確認 ごはん系なのか、スイーツ系なのか。もしくはおもしろ系とかね
3 編集 コンビニの膨大な棚のなかから設定されたテーマに沿ってアイテムをセレクト・もちろん全員にフェアに分配されるボリューム感も大切だ
4 デザイン 戻ってきたらできるだけみんなが取りやすい場所に置く。それも一目で全貌がわかるようにデザインする
5 PR 購入してきたことを知らない人もいるので、できるだけ大きな声で「おやつの時間ですよ!と叫ぶ

画像2

その時は「なんでこの忙しいのに買い物なんて」と思ったものだけど、こうして分析してみると、これは編集者としての正しい修行だったのかもな、と思う。ぶつぶつ言いながら買い出しに行っても、帰ってきて先輩に「おおっ、いいセンスだな。ありがとう!」って言われるととてもうれしかった。その瞬間はまさに、「買い出しスーパースター」だ。ああ、それって今と何にも変わってないや。どれだけ大変なプロセスだったとしても、クライアントや読者に「素晴らしい仕事を、本当にありがとう!」って言われるとぜんぶ報われるもの。

ちなみに僕がアシスタント時代、一番フィットした「夜のおとも」は何を隠そう「魚肉ソーセージ」だった。それも太めのやつ。なるほど。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?