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【事業再構築補助金】事業環境

こんにちは。東京のコンサルタントです。
このシリーズではご自身で事業再構築補助金の事業計画書を書かれる方に向け、採択されるための書き方やテクニックを解説しています。

 これまで、現在の事業の状況SWOT分析について解説をしてきました。自社内部の分析に関してはこれらの記事を参考にしてもらいたいと思います。今回の記事では、「事業環境」について解説と書き方を説明していきたいと思います。今回の記事は公募要領の全体の流れの中では下記の赤線部分に該当します。

公募要領(第10回)P41-10.事業計画作成における注意事項

1.事業環境とは

 事業計画書での事業環境とは、市場規模と市場の動向のことです。
市場規模とは市場での取引額、市場の動向は市場の動きや傾向を表します。
現在の事業の状況」と「既存事業のSWOT分析」を自社内部の分析と位置付けるなら今回は自社外部の分析です。このセクションで、市場の中で自社が置かれている立場を正しく把握することができているということを審査員にアピールしましょう。

2.「事業環境」のテンプレート

「事業環境」の例を示します。例として小規模事業者が行なっている小売業を想定します。

 右図の上段グラフは全国における◯◯◯の消費額(月額)の推移を表しています。これは総務省統計「家計調査」に記載の世帯あたりの支出額(月額)に、同省統計「国勢調査」に記載の総世帯数を乗じて算出しました。このグラフの推移から見てもわかる通り、◯◯◯の市場はここ数年安定的かつ、増加傾向にあります。右図の下段グラフは東京都・神奈川県の世帯における◯◯◯の消費額(月額)の推移を表しています。これは上段グラフと同様に支出額を対象地域の総世帯数に乗じて算出しました。当社が主なターゲットとしている地域でも△△△円規模の市場が存在しており、この市場が増加傾向にあることがわかります。
 市場の動向としては、上述の底堅い需要に支えられながら市場が拡大していっている反面、安価な外国産の商品の流入や、チェーン展開している大手の参入などで、小売業者間での競争は激化しています。

3.事業環境のポイント解説

 事業環境のセクションを書く際のテーマは「マクロとミクロの2つの視点で!」です。まず、市場規模について説明していきます。

 市場規模とはある事業分野における取引額の大きさを表します。これを時間軸に沿って示すことで、顧客側の需要や事業の有しているポテンシャルの推移を示すことができます。このセクションでは市場規模の5年間の推移を下図のようなグラフで示し、文章でグラフの説明を行うようにしましょう。市場規模はマクロ(大)視点とミクロ(小)視点という2つの視点で分析します。マクロ視点とは日本全国の市場規模など広い視点です。ミクロ視点は東京都や世田谷区の市場規模といった比較的小さい視点です。ミクロ視点は、自社の事業が事業を行っている地域やターゲットとしている地域を用います。マクロ視点とミクロ視点という2つの視点から分析を行うことで、自社の事業環境を複数の観点からしっかりと検討・理解しているということをアピールすることができます。また、全体に対して自社がどれくらいのパワーを有しているのかといった自社のポジション把握が容易になります。自社が該当する業界の市場規模はインターネットを用いて調べることができます。引用元を明記して示しましょう。インターネット上に、適当なデータがない場合、ご自身で算出してください。この算出方法は一世帯あたりの消費額(円)×世帯数(世帯)という計算式です。データによっては一世帯あたりの消費額を一人あたりの消費額に変更したり、世帯数を人口数に変更したりする必要はありますが、基本的にはこの式の通りで算出できます。総務省統計局が発表している「家計調査年報(家計収支編)」という資料で、品目ごとの一世帯あたりの支出額を見ることができます。これを単位に国勢調査より引用した世帯数や市区町村のホームページで公表されている世帯数を乗じて求めましょう。市場規模の推移をグラフで示したら文章で、市場規模が増加傾向にあるのか減少傾向にあるのかについて書きましょう。

市場規模グラフ例

 市場規模について書けたら、次に市場の動向についての説明を書きましょう。市場の動向は市場規模の増加・減少の原因や今後の見通しなどを説明するものです。市場規模が減少している場合は、その理由と「今後の見通しが立たない」といったように事業再構築に繋がるような動向を記述しましょう。市場規模が増加傾向にある場合は、不安要素を記述しましょう。既存事業の市場規模が増大しているのは新事業には不都合になります。既存事業の市場自体は増大しているものの、それに伴う競合の増加などの懸念点があるということを述べるようにしましょう。

4.おわりに

 今回は事業環境について解説しました。このセクションを通じて、自社が置かれている外部環境を適切に把握しているということを審査員に伝えましょう。その際に、時間軸とマクロ→ミクロという視点から分析・評価を行なうのが肝心になってきます。市場の動向では、市場規模が減少ならその理由、増加なら理由と懸念を記述することで、事業再構築の必要性に綺麗に繋げることができます。外部環境の分析は事業計画書を書く上で、重要になってくるのでしっかりマスターしましょう。