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バカ舌のわたし

私はお酒が好きであるが正直日本酒はほとんど同じ味がする。
純米大吟醸とパック酒の違いは流石に分かるが、銘柄で利き酒をしても絶対に分からない。
フルーティーだとかすっきりだとか飲んだ直後にそれっぽいことを言うが薄っぺらいと思う。
ワインも一緒、赤ワインに関しては何となく高そうな味がするとか分かるが白ワインは全部一緒なんじゃないかとすら思う。
ウイスキーもトリスハイボールも知多ハイボールも山崎ハイボールも味の違いは分かるがどれがどれかは当てられない自信がある。

要は「バカ舌」である。

昨日、ある介護施設経営者に誘われ食事会。
その経営者は日本酒が大好き。
今回も日本酒が美味しい居酒屋を予約していただいた。

私よりも一回り年上のその経営者、私と同年代の施設長の育成で悩んでいるという。
私は最初ビール、その経営者は最初から日本酒。
多くの銘柄が並んでいるリストからお気に入りっぽい日本酒を注文。

その経営者は自分で施設を開設し自分で施設長をして、今年、後任施設長を抜擢し今は会社でいう会長的なポジションで施設に携わっている。

「今日は3合までにする」

現場で送迎をすることも多いらしく、アルコールチェック義務化に伴い、お酒の量と時間を調整しているという。

「家でも毎日日本酒1杯しか飲まないようにしているよ」

あれだけ日本酒が好きだったのになぜと思い理由を聞いてみた。

「正直体調に気をつけているのがある。家族からも気にされているし」
奥様や親族の体調不良が続いたという。
それに伴い自分も摂生に努めているとのこと。

「1日1杯にしてから日本酒に拘りを持つようになったね。そしてしっかり味わうようになった。1杯しか飲めないから」

なるほど。
1杯しか飲めないとしたら私ですら味わい方が変わって来るだろうな。
好きなだけ制限なく飲んでしまう私は単純にアルコールを摂取しているだけなのだろう。

「今の施設長に任せているんだけど物足りないんだよね、出来るはずなのにやろうとしないんだよな…」
「そうなんですね、今は何が課題ですかね?」
「今は業績かな、でも現場の質にも拘っていきたい自分の信念もあるから何でもかんでも業績を上げればいいという事ではないしね」
「業績は上げなければならないんですよね?」
「そうだけど単純に上げればいいという事ではない」
「現場の質ってなんですかね?」

この経営者、確固たる自分の答えを持っている。
自信もある。
私がこの経営者の部下ならば、結局何を求められているのか分からなくなると思う。

お酒も入っていたのでこれ以上ツッコむと言い合いになりそうだったので一旦自分を内省し気持ちを抑える。

現場の質って何だろう。
良い現場、悪い現場とはどういう事だろう。
それは誰にとって何だろう。

答えなどないよな、と思う。
しかしこの経営者の答えはあるのだろうな。

ビールから飲み物を日本酒に私も変える。
「うん、これはフルーティーなんだけど少し酸っぱい気がしますね」

たぶん今まで日本酒をフルーティー、すっきり、重め、この3つの言葉でしか表現していなかったんだろう私は。

でも考えて見るとその中での違いが少しずつあるね。
私は日本酒に対して仕訳をしていただけなのだ。

仕事でもざっと〇△×で経営状態や施設の雰囲気を仕分けする事があるな。でもこれは悪いことばかりではない。
私が得意とする分野かもしれない。

「現場の質」
これに関してはバカ舌なのかもしれない。
私も1つ1つ違いを舌の上で感じ取ることをしようかな、と思ったが私は私の強い部分を伸ばした方がいいだろうな。

我々のチームは私一人ではない、私ではないメンバーに任せよう。

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