【地域で輝く学生vol.25】神戸学院大学 経営学部 柳久恒ゼミ~スポーツビジネスコンテストの取り組みの意義について~
まず初めに、ヴィクトリーナ姫路スポーツビジネスコンテストに尽力し、学生たちに貴重な交流と学びの機会を提供くださいました皆様にお礼申し上げます。学生たちと共に学外の企業等と関わる中で、このような充実した学習機会のサポートが決して当たり前ではないと感じることもあります。ぜひ今後もこのような志と質の高い企画を目指して発展し続けることで、より多くの学生たちに有意義な交流と学びの機会を提供いただければ幸いです。
今回、参加を決めた意図、本企画に期待したこと
私たちのゼミナールでは、本企画にかかわらず、参加を決めるかどうかを判断するのは原則としてゼミナールに所属する学生たち自身であるべきだと考えています。私の考えではスポーツへの参画(するスポーツ、みるスポーツ、支えるスポーツなど)と同様に、企画への参加の可否については学生たちの自主性を重んじ、強制することはありません。
例えば、「冒険活動」の分野で有名な「Project Adventure」*¹の言葉をお借りすると「Challenge by Choice」の考え方に通じ、可能な限り本人たちの意志を尊重したいと考えています。参加するのかどうか、参加できるのかどうかだけではなく、時には撤退するかどうかについても、それぞれの状況や立場に応じて学生間で協議し、判断、対応してもらいたいと望んでいます。
大学コンソーシアム神戸ひょうごに本企画を推薦したのは、そもそもこの企画の端緒となる取り組みに参画していたからです。本企画の端緒は、2020年2月の西宮ストークス(日本プロバスケットボールリーグであるBリーグの当時2部所属)のホームゲーム企画に遡ります。当初の取り組み内容は、予てからいつか実践したいと私が頭の中で描いていたものでした。その叩き台を、西宮ストークスに当時所属されていた武田隼取締役と関西学院大学の林直也教授の並々ならぬ協働により磨き上げ、実現することができました。*²
当時、目指していたのは、企画を発表するだけで終わらせないことです。世の中には様々なビジネスコンテストがあると思いますが、時間的・経済的な制約等もあり、学生たちは企画を発表して終わることが多く、企画内容を実施できる機会は限られていると思います。そこで、我々の取り組みでは企画を必ず「実践」し、その楽しさや難しさを学生たちが体験できる機会を提供したいと考えました。
「言うは易く行うは難し」ということわざがありますが、「実践」することは発表するだけではわからない課題や問題に直面することがあり、場合によっては企画がとん挫する可能性もあります。課題や問題に直面した際に、グループまたは個人でどう課題解決に取り組み実行に移していくのか。また、実践できたとしても、その企画が対象者に受け入れられるのか、求められるのかは実際のところ誰にもわかりません。であればやはり実践する機会こそ、本質的な学生たちの成長には不可欠だと考えています。企画発表においては実現可能性を評価項目として設定することもあると思いますが、実践することで自ら課題や問題に気づき、課題解決に取り組むことも重要な要素だと思います。
今後もこのような機会が設けられ継続されていくことを当時から望んでいましたので、今回学生らに企画を紹介し、学生らが参加を決断した次第です。
また、本企画に期待していたのは、学生の「成長」です。私たちのゼミの目的は「学生の成長」なので、このような企画を通じて学生個々人が自分自身のパフォーマンスを最大限に発揮し、グループで試行錯誤しながら各々の成長につなげてほしいと期待していました。
本企画の振り返り、学生への効果・成長を感じた点
本企画においては、事前の課題設定段階での曖昧さが反省点として見受けられます。そのため、企画発表の際に学生たちが提示した企画が、チーム側の都合で進められないという事態が生じました。学生たちにとっては思いがけない事態で、発表までに時間と労力を注いできた企画内容が一蹴されたと受け止めた学生たちも多くいました。そのような状況で、学生たちがどのように対応するのかに注目しました。学生たちは希望する企画が実施できないのであれば企画を断念し本企画との関わりを断つことや、実施を見送ることも可能でした。しかし、学生たちは話し合いの末、チーム側が期待した提案を受け入れ、やる気を持ち直して実施に漕ぎつけました。学生たちの諦めずにやり遂げた実行力は、スポーツやビジネスが好きだから、ただやりたいことだけに注力できたというわけではありませんでした。
別のグループでは、グループワークではよく見受けられる個人の取り組む姿勢の違いやミーティング等の参加率の違いが課題となっていました。リーダーを務める学生はどうすべきなのか悩み苦しんでいましたが、最終的には一部のモチベーションが高い学生だけで取り組むことを選択せず、話し合いを重ねて誰一人置き去りにしないグループ全員での実践にこぎつけました。話し合いを経て、チームが改めて同じ方向を意識して目指したことで、チームのベクトルがより太く長くなったように感じました。
実施に至った両グループですが、残念なことに実施初日は本人たちが想像していた理想的な結果ではありませんでした。想像していなかった現実に直面し、学生たちは落胆し気落ちする部分もあったと思います。ところが、学生たちは落胆している暇はないとばかりに翌日の最終日に向けて何を改善できるかを話し合い、限られた時間の中でねばりと行動力を発揮しました。その時こそ、今まで眠っていた個々人の潜在能力を覚醒させ、持てる力を最大限に発揮しようと奮い立ち、チームが一致団結して取り組んだ瞬間だったと思います。
様々な局面を迎えた4か月間の本企画を通して、学生たちは何度も協議を繰り返し、実現に漕ぎつけようと努力し続けたことで、企画を実践する楽しさも難しさも体感してもらえたと思います。このような経験は、コロナ禍でなかなか「ガクチカ」を見い出せなかった世代である今の学生たちにとって、自分の言葉で自信を持って話せる「ガクチカ」を作り出す貴重な機会になったのではないでしょうか。
大学間連携で実施することの意義
本企画に期待していたことと重複しますが、普段はともに活動することの少ない他大学の学生たちと時には競争、時には協力、時には交流することは、本学の学生たちにとって刺激的であったと思います。特に、コロナ禍で入学当初から活動が制限されていた今の学生たちは、学内においても対面で競争、協力、交流する機会が限られていました。
競争については、スポーツにおいてもまさにそうですが、互いに競い合うことで価値を高めていく側面があると思います。
ここでは協力と交流の側面について紹介しておきたいと思います。本企画において、ゼミナールの学生たちはグッズ開発に取り組みました。その企画した商品を、競争においてはライバルであった他大学の学生らが実施当日、身に着けて紹介してくれていました。本来競争相手である学生らが協力し合う姿は、東京オリンピック2020において女子スケートボード競技で選手らが互いの健闘を称え合った姿を想起させ、若い人たちの新たな関係性を垣間見た気がしました。
また、本コンテスト終了後に、ゼミナールの学生たちが他の企画に取り組んだ際には、ライバルであった他大学の学生らに企画イベントへの参加を呼び掛けたいという提案がありました。企画の立案に取り組む際にも、本コンテストで構築した協力関係やネットワークを生かして、お世話になった方々にアドバイスを求めるなど、コンテスト終了後も関係性が継続し深化していることに驚き嬉しく感じました。
教員間や大学間だけで実施する企画も勿論ありますが、本企画では大学と地域、大学と企業の橋渡しを大学コンソーシアムが担うことで、学生たちの学習環境がより整備され、それぞれの関係性や価値をさらに高めることにつながりました。このような機会を求めている学生や、このような機会を提供したいという企業は県内にもまだまだあると思います。今後も学生たちにとって有意義な教育機会を提供できるよう、持続可能なスポーツビジネスコンテストの在り方を模索しながらブラッシュアップしていただければ幸甚です。
改めまして、この度は貴重な機会をいただき誠にありがとうございました。次年度以降も引き続き宜しくお願い申し上げます。
*¹ アドベンチャー体験から学ぶ、アクティブラーニングプログラム。詳細は、プラウティ・ショーエル・ラドクリフ共著「アドベンチャーグループカウンセリングの実践」(1997)、C.S.L.学習評価研究所発行を参照。
*²・ニシマグHP、西宮ストークス集客企画対決「K.G.Uマッチ」結果は果たして…!? (https://nishimag.com/trip/event/11299/ )
・西宮ストークスHP、【2/15,16開催】ニシマグpresents大学生集客企画対決「K.G.Uマッチ」開催のお知らせ(https://www.storks.jp/news/detail/id=15444 )
・神戸学院大学 経営学部HP (kobegakuin-biz.jp)、「西宮ストークス」の集客戦略企画バトルに参戦!(柳ゼミ)https://kobegakuin-biz.jp/?p=1138 、「神戸スポーツ産業懇話会」で集客戦略企画(Ver. 2)を発表!(柳ゼミ)https://kobegakuin-biz.jp/?p=1111 、ニシマグpresents西宮ストークス集客企画対決「K.G.Uマッチ」を実施!(柳ゼミ) https://kobegakuin-biz.jp/?p=841 。
寄稿:神戸学院大学 経営学部 柳 久恒 先生