Kings Of Leon 『Can We Please Have Fun』(2024)
4/10
★★★★☆☆☆☆☆☆
全体的には前々作『Walls』(2016)、前作『When You See Yourself』(2021)と似たような作品だと思う。BPM遅めのまったりした曲とアップテンポな曲で構成されたシンプルな作品。音に大きな特徴は無いしガラッと変わったところも無い。ピークを過ぎたバンドは大体こういう包括的な方向性になってくる。
前二作と比べた場合、ややラフで生な演奏および録り方になっていることに気付く。それは先行シングル2曲(“Mustang”, “Nothing To Do”)を聴けば明らかだ。フィンガーノイズや弦のビビリまでそのまま収録している録音、プリセットそのままみたいなエフェクト、そしてファーストテイクかのように荒いボーカル。その方向性は、例えばエンジニアリング面での完成度の高さを追求した『Mechanical Bull』(2013)と比べると真逆だ。タイトルに込められた意思=「何も気にせずやりたいことをやる」ということの現れだろう。売れっ子プロデューサーKid Harpoonのアイデアも多分に含まれているそうだ。
だが「マンネリ解消のためにちょっとラフな演奏/録音にしてみる」という手法/アイデアは非常にありきたりなものだし、その結果出てきた音自体もありきたりだ。もっと言えば、ちょっとギターの音を大きくしようが、ファズを強めに効かせようが、それはエフェクターやミックスのツマミの目盛位置の話でしかない。本質の変化ではない。「これからのロックの指針!」と喧伝している評論家もいるが、明らかにそういう性格の作品ではない。まるで釉薬だけを見て瀬戸物を語るようなもので、そんな表面的な評論に意味があるとは思わない。
なんにせよ、曲自体の出来が芳しくない。ソングライティングの充実度で言えば、特にミドル〜アップテンポな曲の出来は過去最低レベルだろう。前作の方が印象に残る曲が多い。ロックにおいては何をどれだけどのようにやろうとも最終的には結局ボーカルメロディが最重要と思っている私のようなリスナーにとっては、失われた若々しさを求めようが荒い曲をやろうが何しようが、本作の曲を前にして満足したと言うことは到底できなかった。
“Ballerina Radio", “Don't Stop Breathing", “Seen”は良い曲だと思う。こういうミドルテンポの曲が結局一番似合っている。