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一攫千金「金のなる木」 -定野司の読むだけで使ってはいけない金言名句集

令和五年度の予算編成が始まります。
予算編成作業も佳境に入ると、原課の要求に対し
「金のなる木でも持っているとでも思っているのか!」
と憤ったりすること、何度もありますよね(笑)。
「要求なきところに査定無し」とは先達の教えです。
その要求ですが、「要求ばかりで努力なし」VS「要求の裏に努力あり」なら、どちらに予算を付けるのか・・財政課の職員だって人間ですから・・

子どものころ、父が、「金のなる木」を買ってきました。
この木の本名は、「フチベニベンケイ」で、ベンケイソウ科に属する丈夫な植物です。
南アフリカ原産ですので、多肉質の葉や茎にたっぷり水分を蓄えることができ、乾燥に強く、耐暑性にも耐寒性も優れている。
要するに育てやすく枯れにくい。
「ベンケイソウ」の和名の由来も、この植物としての強さにあり、「武蔵坊弁慶」にあやかったというわけです。
枯れない「金のなる木」ですから、縁起のいいことも二倍。
花言葉は「一攫千金」、「幸運を招く」です。

では、どうしてこのベンケイソウが「金のなる木」と名乗るようになったのでしょう?
主要な説は次の二つです。

1)「金のなる木」の肉厚で丸みのある葉っぱが五円玉のように見える。
英語でも「money tree」と呼ぶそうですから根拠もあり、理解できます。

2)「金のなる木」が昭和初期に観葉植物として販売されるようになったとき、日本の業者が五円硬貨の穴を「金のなる木」の新芽に通して固定し、そのまま成長させると、あたかも木の枝に硬貨がなったように見える。これを縁起物の「金のなる木」として販売した。
もっともらしい説ですが、5円×20個、30個・・・100個なっても500円です。
とても「成金草」と呼べるほどの代物ではありません。
しかも、5円の穴あき硬貨が製造されたのは昭和24年のことで、昭和初期(戦前)に流通していたのは、5銭硬貨、10銭硬貨だったはずです。

ところで、この穴あき硬貨ですが、世界的には珍しいそうで
「海外旅行のお土産に持っていくといいよ」
という言葉を鵜呑みにして、チップとして5円玉をホテルで渡したら不思議な顔をされました。
なんと、日本の硬貨で5円玉だけが日本語Only。
1円玉には「1」の文字(世界共通のアラビア数字)がありますが、5円玉には「五円」とだけ刻印されていて「5」の文字はどこにもありません。
訳の分からない硬貨(チップ)を渡されて、ホテルのボーイさんも大いに困ったはずです(笑)。
現在、日本の硬貨で穴が開けられているのは5円玉と50円玉の二つです。
穴をあけた理由ですが、5円玉は材料の節約のためです。
終戦直後の昭和23年に発行された当初は穴なしでしたが、資源不足で、素材を少しでも節約していく必要があり、発行の翌年には様式が変更され、厚みを薄くし穴をあけることで、材料となる銅と亜鉛の節約を図ったというわけです。
50円玉も昭和30年に発行された当初は穴の開いていない硬貨でした。
ところが、昭和32年に100円玉の製造が開始され、どちらも銀色で穴のない硬貨だったことから、間違えられることが多く、そのため50円玉の方に穴をあけ、100円玉と区別できるよう改良したのです。
しかも、100円玉の発行から僅か2年後の昭和34年に穴あき50円玉を普及させたのです。
とてもお役所仕事とは思えません(失礼)。
中学生のころ、学校の帰り道に1個5円のコロッケを4個買い、穴なし50円玉を渡して80円のお釣りをもらっていました(黙っていて、ごめんなさい)。
その後、昭和42年に50円玉は現在の形に変更されましたが、100円玉と見分けやすくするため、穴あきが踏襲されました。

さて、この「金のなる木」を5円玉ではなく50円玉で育て、100個なっても5千円です。
とても「成金草」と呼べないのは5円でも50円でも同じです。
もっとも、さし芽(さし木)で増やしても5円玉も50円玉も実を結ばないことは明らかです(笑)。
ところで、この国には「金のなる木」ならぬ、国債発行システムがあります。
1200兆円もの巨額の赤字を埋めることができるのは、この「金になる国債」があるからです。
しかし、「金のなる木」と違うのは、国債が借金だということです。
将来世代の返済を期待して現世代が借金をしているのです。
この事実について、借金を返済するときさらに借金(借り換え)すればいい、円建ての国債だから円(日本銀行券、通貨)を増発すれば返済可能であり、デフォルト(債務不履行)になることはない、という楽観論が出回っています。
「Modern Monetary Theory」略称、MMTです。
日本では、「現代貨幣理論」とか「現代金融理論」と呼ばれていますが、MMTによれば、税は財源ではなく通貨を流通させる仕組みということになります。
確かに、自国通貨を発行できる「国」は財政赤字を拡大させても債務不履行になることはないでしょう。
しかし、このMMTが成立するには条件があります。
「巨額の財政赤字でもインフレも金利上昇も起こっていない日本はMMTの成功例」と言われるように、財政赤字でも「国」は(大幅な)インフレが起きない範囲で支出を行うべきなのです。
これを忘れて財政規律を緩めれば、大幅なインフレが起きたとき、これまでにない厳しい歳出削減と増税を断行しなければなりません。
それがいつなのか?
差し迫った脅威の無いところが「財政錯覚」と言われる所以でしょう。
MMTにしても、財政赤字を無尽蔵に膨らませても問題ないかのように「いいとこ鶏」されているに過ぎないからです。
「国」の借金は「国」の借金であって、自分の借金ではない。
他人事でいいのか?
国民と「国」とはどういう関係なのか?
距離感を感じずにはいられません。

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