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エレメントの紹介―第2回新しい自治体財政を考える研究会3/3

こんにちは。
前回に引き続き「第2回新しい自治体財政を考える研究会」の内容のご紹介です。

今回は「上手くいく予算編成の共通項」を「良い予算編成のためにどういう形で寄与しているのか?」といった目線で分類した「エレメント」についてのお話です。

はじめに

これから紹介するエレメントは財オタの皆さんと議論を重ね、紆余曲折を経てまとめた「現時点」でのものです。
このエレメントが「正解」「完成」としているわけではなく、今後、会員の皆さんと議論を重ねていく中で更新していく予定です。

また、抽象度が高い表現のエレメントもあり、エレメント作成過程の議論に参加いただいていない皆さんにとっては
「何を言っているのかよく分からない」
といったものもあるかと思います。

各エレメントの詳細や設定背景についても、今後お伝えしていくつもりですので、今回はエレメントの概要を掴んでいただけると嬉しいです。

エレメントの分類

「良い予算編成」というものをゴールに置いた時に「予算をしっかりと組めている」という意味での「成果があること」と、それらを編成していく「やり方への期待」という2つに分けました。

更にこの2つを
個別の事務事業の計画がしっかりなされていること、質が高く、コストもしっかりと組めていること=木

「木」を間引きしたり、順番を変えたり、2つを1つに合わせたり、など全体配分を的確にして束ねること=森

「木」や「森」が健全に育つためのプロセスや仕組みのこと=土壌

と「木・森・土壌」といった表現で3つの大分類に分けました。

「木」はさらに
①市民の利益が実現できていること
②それらを実現するためのコスト計画が適切であること
の2つの軸に分類しました。

①市民利益を実現するためには「市民価値(ニーズ)に根ざしていること」「実現方法が的確であること」が必要だと考えました。

この分類に当てはまるエレメント ※( )はエレメントを達成すべきプレイヤー
・事業の目的から考えたビルド&スクラップの内容の妥当性があること(現場)
・対象市民の的確な把握のために現場に決定の主体性があること(現場)
・市民からの要望、期待、批判などの様々な意見が予算に反映されていること(現場)
・首長の政治要望が理解され、首長が重視する事業が実施できていること(首長)
・既存事業でも時勢を踏まえた最適な手法を活用し、順次改善していること(首長/官房部門/財政課)

②コスト計画が適切である=実現方法に対して妥当である、と定義できると考えました。

この分類に当てはまるエレメント
・個別事業において費用の無駄遣いが無く、適切な経費改善がなされること(財政課)

「森」も「木」と同様に
①市民の利益が実現できていること
②それらを実現するためのコスト計画が適切であること
の2つの軸で分類しました。

①「森」のステータスで市民利益を実現するためには「必要最低限の価値(必須提供価値)をカバーすること」と「重要な価値を最大限提供すること」が必要だと考えました。
相反する部分もあるかと思いますが、この2つのバランスを取っていくことが「木」を束ねて「森」にしていくプロセスには必要になってくると思います。

この分類に当てはまるエレメント
・スクラップ・改善を実現するための考慮(十分なマンパワーを用意する等)がなされていること(現場)
・「なぜ必要な事業に予算がつかないのか」が理解できること(現場)
・財政状況を踏まえた全体最適の投資判断ができたと実感できていること(首長)

②適切なコスト計画とするためには、将来世代に負担を残さない持続可能な計画である「年代間最適配分」と首長の政策に合致しているか、部署間で重複・不足している事業が無いか、など全市的に横ぐしを通す「分野間最適配分」という2つの目線からコスト計画の最適化を図ることが必要だと考えました。

この分類に当てはまるエレメント
・財政状況を理解し、持続可能な予算要求水準を満たせること(現場)
・財政状況が理解され、持続可能な予算要求水準がみたされていること(財政課)
・首長の政治要望が理解され、首長が重視する事業が実施できていること(首長/官房部門)
・全庁において、横ぐしを通した最適な事業改善が行われていること(財政課)

土壌

「土壌」は
①市民説明や情報開示などルール上必要なものを整える「行政制度整備」
②職員が生き生きと仕事ができる「職員創造性発揮」
の2つの軸で分類しました。

①「行政制度整備」の実現には透明性や説明性が確保されていることが必要だと考えました。

この分類に当てはまるエレメント
・スクラップ対象の利害関係者へ正当性をもって説明責任を果たせること(首長/官房部門/現場)
・執行機関の意思決定において適切な巻き込みを実感できること(議会・市民)
・対話し、議論して導いた結論を、その過程とともに市民と共有していること(議会・市民)
・市民がその経過をたどり追体験できるようにすること(議会・市民)
・適切なタイミングで予算・執行の説明責任が果たされていること(議会・市民)
・決断に従うという前提があること(議会・市民)

②「職員創造性発揮」の実現には
・能率を上げる(非効率な作業を排除する)こと
・努力や怠慢が可視化されるようなインセンティブをデザインすること
・事業のスクラップ案の提案などが気兼ねなく行えるような心理的安全が確保されている環境を整えること
の3つが必要だと考えました。

この分類に当てはまるエレメント
・作業過程ごとに必要な目標を達成しながら、期限内に予算編成作業を終えられること(首長/官房部門/現場/財政課)
・業務の縦LINEの伝達目詰まりを防止すること(組織全体)
・業務の横ラインの意思疎通の容易性を確保すること(組織全体)
・予算要求説明に失敗しても再チャレンジの機会が保証されていること(現場)
・スクラップ・改善を実現するための考慮(十分なマンパワーを用意する等)がなされていること(現場)
・努力・怠慢の可視化(逃げ得の防止)がなされていること(現場)
・削減努力の質や額への評価を実感できる仕組みがあること(財政課)
・「対話」の重要性を感じ取れる成功体験があること(財政課/現場)
・市民や団体との調整前に方針決定がなされること(現場)
・事業の見直しと個人の責任を分離すること(組織全体)
・最前線と後ろ盾が明確であること(組織全体)
・意見表明の手順、方法、タイミングについての組織的準備が整っていること(組織全体)

エレメントの使い方

繰り返しになりますが、エレメントは「上手くいく予算編成の共通項」です。

組織の規模や事業数、首長のキャラクター、財政状況、編成手法など自治体によって事情は様々で、最適な業務フローも異なってきます。
ですが、どんな業務フローであっても、「エレメント」の要素が組み込まれていれば、きっと「良い予算編成が組める業務フロー」とすることができると考えています。

今後はエレメントの内容更新や、エレメントの達成基準となる具体的な目標
(KPI)の設定などを会員の皆さんと一緒に行っていく予定です。


ありがとうございます!