松崎俊明

釧路高専の物理の先生.「学ぶ」とはどういうことか? 【関心ワード】教育,神経発達障害,…

松崎俊明

釧路高専の物理の先生.「学ぶ」とはどういうことか? 【関心ワード】教育,神経発達障害,学校制度,昔話,絵本,映画,図書館・博物館. 【関心ある人】ヴィゴツキー ,ランガナタン.長谷川集平. 【趣味】ギター,写真(サボってる),考えること.

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児童文学が映す「ディスレクシア」---本の中の障害者01

初出:Facebook(2017/08/16) 初出タイトル:「読字障害の啓発と児童文学」(2018/01/26 加筆修正) 最近,絵本や児童文学を漁っている.日本では「いわゆる発達障害(知的障害,自閉症,ADHD,学習障害,読字障害…)は治ることはない」と喧伝されているが,海外の絵本・児童文学においては「ディスレクシア(読字障害)」は治るものとして扱われている.所詮はフィクションの物語ではあるが,背景描写から教育現場の空気感を正しく理解した上での作品であろうと推察される.

    • 「今ここを共有する」そんな授業の雰囲気を

      本日の授業で学生が2名欠席するということで,ハイフレックス(対面の学生と遠隔の学生が共存する状態)の授業をしてみました. 遠隔授業ではカメラ動画ではなくpdfに書き込みをしていくような画面共有ですが,今日はiPadのカメラで僕自身と黒板の動画を配信.(内容は「試験範囲の確認」と「各自の試験対策」なので冒頭の20分程度しかハイフレックスの意味を成しませんでしたけれども) 演習プリントを解く動画の配布にYouTubeを用い始めたタイミングでもあるので,受信者側の気持ちをあらた

      • 学校が趣味の世界に干渉していいの?

        戦前から文部省は「全国大会につながる大会は年に2回まで」という制限を通達した.高校野球が春と夏の2回なのはこれによるもの. 高体連も初夏の大会と新人戦という2回. 国体に出ることができる競技種目はいいのかい? 高専大会を思えば,高専は高体連・高校野球に参加しちゃダメじゃない? "Ivy League" は歴史ある学校ゆえに校名を背負ってスポーツで闘う.彼らの主戦場はあくまでも学問.「スポーツ奨学金などはしない」という約束があるらしい.一方,日本においてスポーツで名を馳

        • 体育会系へ喧嘩を売る僕

          2017/01/11の僕のFBへの投稿. コロナ前から限界だった模様. 彼らは教育者ではない. 「スポーツ」って「○○道」なのだろうか? いかがわしいビジネスを知るために「インストラクター」「コーチ」「指導員」などと言うものを調べていて知った事. ごく普通の各種スポーツ競路おいて「認定コーチ」「認定指導員」なんてのを認定しているらしい. 「ルールを熟知し,公正にジャッジメントできる人材の保証」は不可欠で,それは「認定審判員」のはず. 「正しく指導できる」って何だ?

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          『はせがわくんきらいや』---本の中の障害者06

          題名:はせがわくんきらいや 著者:長谷川集平 出版:復刊ドットコム ISBN:978-4835440583 白黒で,版画のような強烈な画風.感情とも思考とも区別が付かない何かが湧き上がる.誰かと「はせがわくんきらいや論」を語り合いたくなる.著者の長谷川集平はミュージシャンでもあるので,「日常を描くフォークであり,理不尽を嘆くブルースであり,想いを叫ぶロックであり,天まで響く讃美歌である」そんな作品と評したい.76年第3回創作えほん新人賞受賞作. 「長谷川くん」は「ぼく」の

          『はせがわくんきらいや』---本の中の障害者06

          教師の本懐

          普段から,人類において教育とはどういう行為か?学校とは?授業とは?という課題について考えている.絡み合っていて他人に上手く説明できずに困っていたのだが,夢現の中で一本の筋になったのでここに書き留めることにする. 有限な存在である我々は自身の能力の限界を謙虚に受け止めねばならない. 我々には未来を決定することなど不可能で,希望をもち,祈ることしかできない.「明日天気にな〜れ」「豊作でありますように」「この子が健康に育ちますように」などと. 我々にできることは「今,ここ」を大切

          教師の本懐

          教科書が参考書化している…

          検定教科書が,内容は丁寧に,見た目は派手になって行く… その教科に興味を持たない生徒の注意を引くようにという工夫. 網羅的に書かれた事典タイプの参考書のように見える. 一見すると分かりやすそうなのだが,教科書の側から大量の情報が一方的に送られてくる.まるでテレビのように. 本当は?実体験が学ぶ必要性をプッシュし,学生自身が能動的に教科書にプル・リクエストを送らねば「主体感」を持った学習は成り立たないと思うのだが? 微妙に分かり難い教科書の方が「なんで?」って疑問を誘発でき

          教科書が参考書化している…

          『ガラクタ学級の奇跡』---本の中の障害者05

          題名:『がらくた学級の奇跡』 原題:"The Junkyard Wonders" 作者:パトリシア・ポラッコ 作,入江真佐子 訳 発行:小峰書店(2016年) ISBN:978-4-338-23515-0 パトリシア・ポラッコの自伝絵本三部作のうちの一つ. トリシャの両親は離婚しており,普段は母方のカリフォルニアで学校に通い,長期休暇は父方のミシガンで生活をしていた.ある年,「字が読めず特別学級にいた事を知る人が居ない」はずのミシガンの学校に通うことにした. ところが配

          『ガラクタ学級の奇跡』---本の中の障害者05

          僕の物理の授業プリントを!

          新型コロナウィルスの騒動で始業が遅れていて,遠隔授業だのなんだのというのが流行っています.僕が直ぐできそうなこととして,釧路高専1年生の物理の授業(高校レベルの力学)で使っている演習プリントを公開しようと思い立ちました. GitHubに置こうかとも思ったのですが,説明も必要だと思いましたので,noteの記事として公開します. 僕の1年生の授業は『学び合い』という形式で行われます. ・僕からの最低限の説明を元に「演習プリントを解け!」が基本 ・教科書(『初歩から学ぶ基礎物理

          僕の物理の授業プリントを!

          WW2以後の福祉と教育の年表

          他のファイルを探していて出てきた… 5年も前に整理したものだけれど,戦後の貧困救済の福祉から,人権という視点へのあゆみ. 「特別支援教育」は人権問題だということを,今更だけれども語り直す必要があるのかしら???

          WW2以後の福祉と教育の年表

          女仕事からガンディー までの連想ゲーム

          数千年前の生活の話から →男仕事・女仕事ってあるよね? →日本で「機織」,西洋で「糸紡ぎ」ってどうして? 『ガイドブック 日本の民話』(日本民話の会,講談社)と『ガイドブック 世界の民話』(日本民話の会,講談社)の索引を調べると,日本では「機織」,世界では「糸紡ぎ」がキーワードとなっていて解説がある. →日本では紡ぐ必要がなかった?「綿」「羊」っていつ日本にきた? →・日本の昔話に「羊」は出てこない.献上品としては入っているが,産業としては明治期に軍需目的で北海道・

          女仕事からガンディー までの連想ゲーム

          ああ,オザケンかぁ

          Macの音楽をランダム再生していたら,小沢健二の「ドアをノックするのは誰だ?」が聞こえてきた.エルビス・プレスリー,ビートルズ,ポール・アンカ,サイモン&ガーファンクル…50-60年代洋楽中心のラインナップの中で,ちょっと異色. 小沢健二の父親は小澤俊夫.ドイツ語学者だが,グリム童話を発端として昔話に関しては世界的な研究者.昔話に関する基本的な知識は彼のラジオ番組,書籍を通して学ばせてもらった.そこで得た知識は民俗学や文化人類学の書籍を読み解く際に役に立っている. 母親は

          ああ,オザケンかぁ

          メディアの歴史メモ(庶民の語彙の共通化)

          貴族はサロンで,ブルジョアはコーヒーショップで1650年 世界初の日刊紙(ドイツ) 庶民は,各々の生活の中で,必要な語彙を獲得していたのではないでしょうか? 通信技術の進歩,メディアの大衆化1868年 輪転機による大衆新聞(イギリス) 1876年 電話の特許(ベル,アメリカ) 1895年 世界初の映画館(リュミエール兄弟,フランス) 1901年 大西洋横断通信(マルコーニ,イタリア) 1920年 民間商業ラジオ放送(アメリカ) 1929年 テレビ実験放送開始(BBC,イギ

          メディアの歴史メモ(庶民の語彙の共通化)

          疾病・障害と怪しげなサプリに関して

          故あって,「起立性調節障害」について調べる機会がありました. いつもの事ですが,ネット上には怪しい情報が沢山ありますよね.試しに「起立性調節障害 サプリ」で検索してみましょう.すると,「不登校向けサプリ」「起立性調節障害だった私が」「起立性調節は治ります」「学校に行く時間に起きれない」「朝が辛いお子様へ…」「学校を休まなくなりました(個人の感想)」など,サプリ通販サイトがたくさん出てきます.それで困っている人を食い物にするかのようなサイトがね… さて,怪しいことが沢山起き

          疾病・障害と怪しげなサプリに関して

          『ありがとう、フォルカー先生』---本の中の障害者04

          題名:『ありがとう、フォルカーせんせい』 原題:"Thank you Mr. Falker" 作者:パトリシア・ポラッコ 作・絵,香咲弥須子 訳 発行:岩崎書店(2001年) ISBN:978-4-265-06806-7 ある人に,「つまり,あなたの仕事はフォルカー先生みたいなものですね」と言われ,後日,『ありがとう、フォルカーせんせい』を開いてみた.そこには,ディスレクシアの生徒と彼女に寄り添う教師の姿が描かれていた.僕はこれをきっかけに絵本を読み漁るようになった.個人的

          『ありがとう、フォルカー先生』---本の中の障害者04

          『わたしのそばできいていて』---本の中の障害者03

          題名:『わたしのそばできいていて』  原題:"Madeline Finn and the Library Dog" リサ・パップ 作,菊田まりこ 訳 WAVE出版 ISBN:978-4-87290-947-0 まずは絵本としての魅力を紹介.とにかく,リサ・パップさんの画風が柔らかく,優しく,可愛らしい.翻訳は『いつでも会える』(学研プラス)の菊田真理子さん.子ども視点の言葉づかいが可愛らしい.主人公が持ち歩いているウサギのぬいぐるみの表情にも注目. 文字を読むのが苦手な女

          『わたしのそばできいていて』---本の中の障害者03