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重松清さんの小説『ロング・ロング・アゴー』

重松清さんの小説が好きで前に記事にしたことがある。

色んな作品があって1冊の本の中に短い話がいくつか入っているものも多い。

今日はその中から好きな物語を紹介。

重松さんの『ロング・ロング・アゴー』(新潮文庫)という本の最初の『いいものあげる』というお話。

日本の多くの会社には転勤がある。

大人は新しい職場に慣れようとしたり悩むことがあるかもしれない。

しかし一緒に新しい場所に移り住むことになった家族、特に子供も大変なのである。

この作品は主人公のお父さんが大型ショッピングセンターを手がける流通グループの本社の人で、9月に営業管理部から開発部に異動したところから話が始まる。

会社から「シンフォニー」という名前の商業施設を任される。

業務内容は新しい場所に出店して軌道に乗るまで戦略を立て「これで大丈夫」という感じになると後は現地の店長がその後も頑張り、本社の人間はまた別の場所で同じことをするので転勤が多い。

しかしそこにはすでに昔から営業しているお店がある。

主人公が転校した学校の新しいクラスで美智子ちゃんという子と出会う。

実は「ちどりや」という老舗デパートの社長令嬢。

彼女はよく友達たちに「いいものあげる」と言って文具などを自ら与えていた。

美智子ちゃんのクラスには「ちどりや」で親が働いていたり取引業者の子も多くいた。

だから子供たちにとって美智子ちゃんは女王様だった。

そして「シンフォニー」は経営が順調な一方で「ちどりや」はお客や昔から入っていた人気のテナントを取られて最後は倒産してしまう。

それに至るまで大人だけではなくクラスの子供同士の人間関係まで一変させてしまった。

美智子ちゃんはクラス内でどんな扱いを受けても女王様としての心を持ち続けた。

最後はもう彼女の家族はその地域にいられなくなった。

そして美智子ちゃんとお母さんが駅まで来た時、主人公は会いに向かった。

彼女は最後まで女王様で言った言葉は「いいものあげる」だった。

しかし、悲しくもあるがそれが最初で最後の「本当の友達」へあげたものだったのかなと俺は感じた。

これは考えられる小説だった。

では、また。

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