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【こども論】こどもの教育〜デジタルとアナログ、どちらがいいの?〜

以前、こんな議論をしたことがある。

「こどものこれからの教育に、デジタルとアナログ、どちらがいいのか?」

というものである。
というのも、ipadなどのデジタル端末と、感触や嗅覚などを刺激できるであろう本やつみきといった、アナログと言われるようになったものとでは、どちらが教育に適しているのか、疑問に感じられたからである。  

これに関しては、さまざまな文献がある。
以下、香川大学教育学部 坂井聡氏による資料である。  


視覚障害について
視覚障害教育について考えてみる。視覚障害は、「情報の障害」とも言われる。一般的に人間が獲得する情報の約80%は視覚からもたらされていると考えられるからである。ICTは様々な情報を加工することが可能なので、視覚情報を補う可能性をもっている。例えば、紙に書かれたアナログ情報を電子データに変換し、コンピュータや携帯端末で加工すれば、それらの情報をピンディスプレイ等の触知盤で、触りやすいように、見やすいように表示させることができるなどである。また、視覚障害のある児童生徒が苦手としていた調べ学習(情報検索)も容易に行えるようになる可能性がある。  

聴覚障害について
聴覚障害教育における ICT 活用の可能性については『教育の情報化に関する手引』に示されておるとおりである。そこには、「視覚からの情報が豊富である特性から、聴覚障害者である児童生徒が自らの生活を充実していく上で有用な機器であり、障害による困難を補完して情報を得たり、コミュニケーションのためのツールとして活用したりすることは大いに意義のあることといえる。」と述べられている。ICTの活用の中でも特に期待されるのは電子黒板の活用である。授業では教科書、ノート、板書、教員の手元や口元を視線移動する必要がある。教員の手話や口元から視線がそれると内容が理解できなくなるからである。しかし、大型 ディスプレイや電子黒板を活用すると、同じ視野の中に教師も入りやすくなるために、情報は得やすくなる。  

知的障害について
知的障害は、認知的、言語的、運動的そして社会的能力の障害であり、知的能力と社会適応は時間によって変化する。それゆえ、知的障害による困難とその程度は、個人とそれを取り巻く環境要因によって大きく異なる。学習環境や生活環境に直接 影響を与えるICTは、それをメガネと同じように使えるようになれば知的障害によるさまざまな生活上や学習上の困難を支援することができると考えられる。しかし、そのためには、直感的な操作、視線移動の軽減、操作の簡素化等が必要である。また、インターネット等を用いた不正、犯罪に 巻き込まれないための情報教育の必要性もある。

肢体不自由のある児童について
肢体不自由のある児童生徒に対するICTを活用した指導においては、その、経験不足や人とのかかわりを補ううえで有効である。しかし、その機能の障害に応じて、適切なATの適用と、きめ細かなフィッティングが必要となる。体調の変化などに応じて、絶えず細かい適用と調整が必要だからである。そこでは、自立活動専任の教員などの協力が大切で、必要に応じて専門の医師及びその他の専門家の指導助言を求めたりする必要もある。ICT を有効に活用することで、これまでできなかった活動、特に表現活動などの主体的な学習を可能にしたり、多くの人々と接点をもたせたりすることができる。また、社会参加 に向けてのスキルを大きく伸ばしたりしていく指導も可能となる。  

病気のあるこどもについて
病気のある子ども、特に病院に入院している子どもについては、子どもの病状に応じた感染症予防の対策等が必要であり、ベッドサイド学習あるいは病院内教室での指導に際しては、教員の持ち込む教材を消毒する等の必要も生じる。無菌室への訪問については、特に念入りな滅菌等が必要になる。一般的に、消毒に用いられる医薬品は液体である場合が多く、紙媒体の教材については、消毒が困難な場合もあるため、ある程度の耐水性をもったICTの活用ができれば、教材として大変有用であると考えられる。

発達障害のあるこどもについて
発達障害のある子どもは、認知面での偏りや不器用さ等があるため、様々な学びにくさをもっている。その学びにくさの障壁をICT活用によって低くできる可能性がある。
 学習障害(LD)があり文字の読みが困難な場合、教科書の文字や行間の拡大、分かち書きに表示するなどがICT活用で可能となる。書くことに困難がある場合、キーボードから文字選択し、再生できなくても再認できれば文字を書くことが可能になる。  

注意欠陥多動性障害(ADHD)のあるこどもについて
注意欠陥多動性障害(ADHD)があり、注意力が持続しない、集中することが苦手などの困難さがある場合、ICT活用は、興味関心や意欲の高まりにつながる可能性がある。一つの活動時間を短く設定できたり、正誤をはっきりさせたりすることが可能なので、集中して学習活動に取り組むことを可能にする。  

自閉症のこどもについて
自閉症があり、抽象的な意味理解や物事の因果関係をつかむことに困難さがある場合、動画や写真、文字や記号による視覚的手がかりを与えることが容易にできるICT活用は、学習活動を円滑にする可能性がある。また、言語によるコミュニケーションが困難な場合、代替手段として用いることも可能である。子どもによっては代替手段を活用することにより、言語の習得や意思の表現の可能性が広がる場合もある。選択性緘黙等を併せもつ児童生徒にとっても有効である。  


しかし、果たして、「デジタル」だけに頼った教育でいいのだろうか、
という疑問が湧いてくる。  

これに対して、
日本知育玩具協会認定講師の中村桃子氏の意見を参考にしたい。  


大切なのは “体験遊びを存分にさせてから” ということ

「リアル(=現実)」と「バーチャルリアリティ(=仮想現実)」という言葉があります。本来ならば、幼児期~学童期は、現実で体験したことをたくさん積み重ねていく時期。バーチャルの世界に入っていくのはその後です。デジタルがだめ、ネットゲームがだめというよりも、この順番を守ることが大切なのです。
インターネットやデジタル機器は、使いこなすことができれば有用なツールであり、現代社会を生きるうえでも絶対に欠かすことのできない存在となっています。しかしながら、これらを使いこなすための器が育っていなければ、かえってそれらツールに振り回されることになってしまうのです。
そして、その器は、デジタルやインターネットそのものでは育てることができません。だからこそ、幼児期や学童期に、ボタンひとつでリセットできない “リアル” な遊びをたっぷり経験させ、その器を育ててあげる必要があるのです。  


つまり、2つの文献を参考にした上でまとめると、こうなる。
幼児期〜学童期は、いわゆる「アナログ」での、「体験型」教育が好ましい。
が、障害のある場合は、初等中等教育においても、「デジタル」を導入した教育が、何かを手助けしてくれるかもしれない、ということなのではないだろうか。  

今までは、どちらかに偏った考えを持つことしか頭になかったが、それぞれの良い部分を生かして、これから「オリジナルな」教育をもたらしていくことこそが、これからのこどもたちに、求められているのではないだろうか。  


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参考文献:
文部科学省
資料5:障害のある子どものデジタル教材等について(坂井委員提出資料)

こどもまなびラボ  
「リアルな遊び」を体験させよう。子どもを “デジタルゲーム依存” から守るために大切なこと

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