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ここではないどこかに憧れて、自分ではない誰かになりたがっていた代償

若い頃に平気だったこと。

自分の大切な人を置いていくこと。


自分の夢のためなら、

明日にでも大事な人から離れて、

どこか遠いところへ行けた。


自分が今いる場所では、

望むものが手に入らないと思っていたからだ。


夢が叶えば

幸せになれると思い、


今を犠牲にして

将来のためになることだけを

しようとしていた。



夢を追いかけるために

しなくてはいけない「さよなら」を重ねる度に、

心が痛んでも、

これは名誉の傷だと思っていた。


大事な人を置いてきた代わりに、

それなりの成功を引っさげて

故郷に錦を飾る。

なんて子供じみた熱に冒されていた。



しかし、

どんなにカッコつけて出て行っても、

結局は

何もつかめず、成し遂げられなかった。


故郷に錦を飾るどころか、

大見栄きって出ていった分、

恥ずかしくて地元に向けられる顔が無くなった。


私のことを本気で応援し、

別れを惜しんでくれる人もいた。


別れを深刻にし過ぎないように、

「さよなら、元気でね。」の言葉の代わりに、

「帽子が良く似合うね…」

と何気ない会話に変えて、

涙ぐみながら最後の声がけをしてくれた人。


餞別にと

お寿司を食べに連れて行ってくれた人。


私が乗った夜行バスを、

見えなくなるまで見送ってくれた人。


その、

本当にありがたいものを、

私は平気で置いてくることができた。


夢を追うことが何よりも尊いのだ、

という主張のもとに。


いつも、

ここではないどこかに憧れて、

自分ではない誰かになりたがっていた。


おかげで

本当に大切なものを

置いてきた。


貴重な時間を失ってきた。


今になってやっとわかる。

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