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アジアで勃興?!炭素市場

10月23日付の日経産業に、IETA(国際排出取引協会、International Emissions Trading Association)CEO、ダーク・フォリスター氏のインタビューが掲載されていました。

IETAは、国際的な排出取引の確立を目的とする国際的な協会です。ネットゼロ目標を達成するためには、高い信頼性を持つETSが必要という認識の下設立された非営利のビジネスグループであり、企業が気候行動に参加し、パリ協定の目的を進めるためのネットゼロの野心を追求することを強力にサポートしています。

ちなみに、カーボン・クレジットに関してはICROAという組織があります。

International Carbon Reduction and Offset Alliance(国際炭素削減およびオフセット連盟)の略であり、クレジットスキームオーナー向けの業界団体です。厳密な実施規則を策定しており、ICROAに承認してもらうことが、信頼できるクレジットスキームへの第一歩と言ってよいと思います。

元意、そのCEOが「日本をはじめとするアジアの炭素市場への関心はかつてなく高い」と述べたそうです。

これについては、私も全く同感です。
noteで、何度もご案内してきたのがその証拠でもあります。

2015年に開始した韓国ETSや、パイロット市場で知見を高めた後、満を持して2021年開始したCN-ETSは既に、昨年ご案内済み。

まぁ、この2国は周到な準備を重ねてきていたので、驚きはありませんでした。他山の石とされた、日本が周回遅れにされている状況は、当然かなという認識。

そんな中、CBAMが現実味を帯びてきたことを受け、EUへの鉄鋼の輸出が多いインドが、WTO提訴も辞さない態度を示す一方、ETSの制度設計を加速、2025年までには取引を開始したいと発表したときには、「やはりな」と思ったものでした。

ですので、JPXが市場開設日を発表した際は、「ようやくか」と安心したのも束の間、概要を見て「ダメだな」とガックリ。

こんな日本を尻目に、世界、特にアジアのETSではは急速に動き出していることを目の当たりにして、ますます不安を募らせました。

まずは台湾。こちらはETSではなく、JPXと同様の「カーボン・クレジット市場」
来年という話ですが、対中国という構図がありますし、リーダーシップを見ても、必要な法整備は速やかになされ、予定通りのスタートとなるのでは?

ご案内済みの中国では、パイロットETSの一つである広東省ETSが、更なる改革を実施。形だけでない、真の開かれたETSを目指していることが分かる内容で、驚きを持ってお伝えしました。

とはいえ、ようやく初日を迎えたJPXのマーケットも、想定内、というか想定以上にダメダメな状態で、前途多難の船出と相成りました。

東南アジアでは、インドネシアの動きが目立っており注目していましたが、こちらについては、ETSの目的をスポイルする内容で、ちょっと安心(?!)

しかし、新興国は「過ちては則ち改むるに憚ること勿れ」で、ブラッシュアップしてきますので、侮れません。

このように、アジアにおけるETSの注目度が高いことは否定しないのですが、このコメントには疑問を感じました。

アジアが一大市場になるには各国内で制度が定着するのに加え、国境を越えた取引が可能になるかが焦点になる。そのためには国毎の排出枠の一定の基準を満たし、互換性を持つことが重要になる。

これは、ETSではなく、ボランタリークレジットの活用による、地球全体での温暖化対策の推進、BVCMの文脈での話でしょう。

ETSは、キャップを儲け、政策的に漸減させていくことで、排出量を確実に減少させる政策です。これに、域外からの「クレジット」が流入してくれば、その分域内の排出量は増えるわけです。

EU-ETSで使用できるクレジットを厳しく制限しているのは、そのためです。

これは、クレジットを売買する「マーケット」と、排出量削減を目的とした政策である「ETS」を混同しているだけでしょう。

個人的には、ウォッシュではない、高品質で信頼性の高いクレジットは、これからますます重要になってくると確信しています。だからこそ、noteで繰り返しお伝えしているわけです。

とはいえ、そもそも「カーボン・クレジット」だけでなく、環境に関わる用語や仕組みは分かりにくいもの。それを、誰にでも理解できるような、平易な言葉でお伝えするのが、自分の役割だと認識しています。

これからも、皆さんの声に耳を傾けながら、難しい話を分かりやすくご案内していきたいと考えています。お付き合い、よろしくお願いします。

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