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インドETS、念願なるか?

排出量の多い製品の輸出入に対する措置として、EUがCBAM、USがCCAという制度を導入、綱引きの様相を呈している旨を、前回お届けしました。


EUのCBAMであれば、EU域内では排出枠を購入しなければならないので、域外で製造して輸入しようという事業者に対し、「出ていってもいいけど、輸入するときにはCBAM証書を購入する必要があるからね」というもの。

いわゆる「リーケージ」を防ぐ手段です。

代わりに、今まで「出ていかないでね。その代わり、無償で排出枠を割り当てるから」というEU-ETSの無償割当が廃止されます。

そっちがやるならこっちも、ではないでしょうが、同じように課税措置をとるのがUSのCCA及びIRA。

このような「綱引き」に巻き込まれるのはまっぴらごめんということで、中国やインドなどは、WTOに対し、議論するよう提案したり、であれば提訴するとのポジションを取ったりしています。

世界を、世論を味方につけるということで、一般的な戦略ですね。

他方でインドはEUに対し、自国の排出量取引制度(CCTS:Carbon Credut Trading Scheme)を「recognise」してくれと要請しています。様々なオプションを使って、回避する道を模索しているのですね。

というのも、CBAMの対象品目は以下の6品目ですが、そのうち、インドは鉄鋼のEUへの輸出においては、トルコに次いで第2位なのです。(生産量においては、首位の中国の1/10強に過ぎないにもかかわらず)

・セメント
・電力
・水素
・肥料
・鉄、鉄鋼
・アルミニウム

なので、その影響は大きく、業界団体のロビーイングも熾烈なのでしょう。

インドは、ETSの詳細を今年(23年)6月にも公表し、25年までには取引を開始したいとしています。明らかに、26年からCBAM証書の購入が義務づけられる動きを意識した動きと言えます。

果たして間に合うか否か、それよりも、CCTSが「EU-ETSと同等の規制」と認められた上でCBAM対象外と認定されるか否か、全くもって不明ですね。

世界には、既に実施中のETSが28、試行中が8及び検討中が20存在します。(2022年現在)

このなかで、CBAMの運用に対して影響を及ぼすことができるETSとしては、中国のCN-ETSではないでしょうか。

世界のETS(ICAP Emissions Trading Worldwide 2023 Status Reportより)

歴史は圧倒的にEU-ETSですが、規模においては、遙かに凌駕しています。
キャップを見てみると、前者が15億2,900万トンに対し、後者は45億トン。
やはり、否が応でもその動きに注目しておく必要がありそうです。

CN-ETSについては、以前ご紹介しておりますので、参照ください。

もちろん、我が日本のGX-ETSもどう認識されるかは気になるところです。
当面はレポーティング義務が発生する23年10月を睨みながら、ウォッチングしていこうと思っています。

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