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日本のETSはどこへ行く?

今年23年8月、台湾が、台湾証券取引所と台湾当局系ファンドの国家発展基金が共同で、台湾初のカーボン・クレジット市場「台湾炭権交易所」を設立、関連する法整備などを行った後、2024年前半にも取引をスタートさせることを公表したことは、皆さんご承知かもしれません。

アジア(東・東南・南)では、中国(全中国・パイロット)、韓国、カザフスタン、東京、埼玉が本格稼働していますが、この「コンプライアンス」市場に、台湾が来年から加わるわけです。

世界のETSの状況(ICAP Emissions Trading Worldwide 2023 Status Reportより)

Japanの「Under consideration」はGX-ETSのことを指していますが、こちらは、政府が全力でバックアップしているとはいえ、あくまでも民間主導で参加が任意である「ボランタリー市場」

「先を越されたなぁ」と思っていたところ、インドネシアが、今月9月26日から正式にETSを開始することが判明。「お前もか」ではありませんが、あっという間に周回遅れになりそうです。

石炭火力発電所を対象としたETSは2月に開始していましたが、取引市場の整備がようやく整い、約半年遅れて取引が開始されたようです。

政府の当初の計画では、炭素集約型産業ごとに汚染割当量を設定し、カーボンオフセットなしで上限を超えて排出した企業に課税するというものだったそうです。

しかし、経済成長への影響を懸念し、この課税計画は棚上げされたとのことですから、代わりにETSを導入することになったのですね。

世界のETSは、発電セクターから始めるのが通常なので、インドネシアもセオリー通り。対象セクターの拡大については、どのようなロードマップを描いているのでしょうか。

セクターカバー率(ICAP Emissions Trading Worldwide 2023 Status Reportより)

なお、オペレーションは、証券取引所である「PT Bursa Efek Indonesia (BEI)」、預託・決済機関の「Kustodian Sentral Efek Indonesia (KSEI)」、およびクリアリング・保証機関の「PT Kliring Penjaminan Efek Indonesia (KPEI)」が共同で出資した「PT Pendanaan Efek Indonesia (PEI)」が行うとしています。。

インドネシアは、世界のGHG排出量のトップ10に入る国ですが、2060年までにカーボンニュートラルを達成することを約束し、気候変動対策に資金を供給する方法として、ETSの収益を見込んでいるとのこと。

思えば、日本は、2008年10月21日に、「排出量取引の国内統合市場」という市場メカニズムを試行的に実施すると発表。官邸・省庁・企業など「オールジャパン」で大々的に「試行」を開始しました。

GX-ETSと同じように「自主的」であり、取引されるクレジットも、国内クレジット(現 J-クレジット)や京都クレジットなどで同じ。キャップは、GX-ETSがNDC相当であるのに対し、「試行的実施」は経団連の自主行動計画という違いはありますが。

このように、ETSは「いつか来た道」であることは官僚の皆様もよくご存知なので、GX-ETSでは、政府主導ではなく、「GXリーグ」という民主導という形を取っているものと考えています。

「皆さんご自身が考えて決めたことなので、しっかり守って下さいね」

ETSはキャップを定め、段階的に減らすことにより、確実な排出量削減を達成する「政治的手段」です。「決断」しない「経営者」は「経営者」ではないでしょう。

欧州や米国が「炭素国境調整」で綱引きをする中、日本はどうあるべきか。
私としては、どのような状況になっても事業が継続できるよう、皆さんに役立つ「Foresight」をお届けしていけたらと思っています。

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