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CDPはどこに向かうのか?

異論があるかもしれませんが、個人的には、気候変動開示周りのルールにおいて、「デファクト」的なポジションにあるのは、以下のように考えています。

算定方法:GHGプロトコル
目標設定:SBTi
情報開示プラットフォーム:CDP

CDPは、2000年設立当初は「カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト」という名称でしたが、2009年には「水(Water)」、2011年には「森(Forest)」「都市(City)」等に調査対象を拡大したことから、2013年、正式名称を「CDP」に変更したのは、皆さんもご承知のことだと思います。

ですので、その心は「気候変動だけでなく、サステナビリティ関連情報を網羅する開示プラットフォーム」だと思っています。

つまり、ステークホルダーからすると、CDPのサイトを訪れれば、ワンストップで必要な情報を得ることができる。回答企業からすると、質問書に回答していれば、TCFD(ISSB)やSBTiなどが要求する「適切な開示」を行っている言い訳になる、ということでしょう。

なので、noteでも、そのようなご案内をしてきました。

ただ、ここにきて、サステナビリティ情報開示が、ボランタリーなもの(任意開示)からコンパルソリーなもの(法定開示)になりつつあります。

欧州のサステナビリティ情報開示においては、ボランタリーなNFRDから、法的拘束力を有するCSRDに引き継がれ、対象企業が大幅に増加します。

TCFDを引き継いだIFRS S1・S2も、ボランタリーではありますが、ISSBはこれをベースに各国の規制当局が開示規則を策定することを推奨しています。つまり、国内法において、開示が義務化されることを意味しています。

日本は、SSBJ(Sustainability Standard Board Japan:サステナビリティ基準委員会)がドラフトを作成していますし、シンガポールやオーストラリア、英国、カナダにおいても、既に対応が進められています。

ここから先は、全く私の妄想ですが、サステナビリティ情報が義務化されるのであれば、例えば、有価証券報告書や決算説明資料、統合報告書などに記載されるでしょうし、株主総会でも説明がなされたりするでしょう。

開示内容についても、統合化が進んでいますし、監査基準についても、国際監査・保証基準審議会(IAASB)が、国際サステナビリティ保証基準(ISSA)5000「サステナビリティ保証業務に関する一般要求事項」を提案しました。

なので、企業は「義務的」に開示しなければならない文書を提出し、必要な場面で説明をすれば、法的な要求は満足できます。他方、ステークホルダーは、これまでのワークフローの中で、必要とされる信頼性の高い、サステナビリティ情報を得ることができます。

必ずしも投資対象の企業が回答しているか分からない、CDPのサイトを訪れる必要性は、低下していくのでは無いでしょうか。とすると、CDPのデフォルトの「情報開示プラットフォーム」の地位も危うくなるのではと、考えました。

と思っていたので、TNFDのフレームワークが公開された直後に、準拠を打ち出したことは「なるほどな」と感じたところ。CDPは、「様々な開示要請に対し、迅速に対応しますよ」と。

これでは「弱い」と思ったわけでもないでしょうが、続いて出てきたこちらのリリース。「なるほど、使い続ける理由があるな」と思わせる効果があるのではないでしょうか?

GHG排出量を算定する目的は、現在の排出量を把握し、ホットスポットを特定、優先順位をつけて削減活動を実施し、2050年ネットゼロを達成することです。

しかしながら、スコープ3まで含めた算定や、排出削減目標の設定は、実際やってみると分かりますが、困難を極めます。アクセスが可能で、質が高く、比較可能な気候データが圧倒的に不足しているからです。

この課題に対処するため、マクロン仏大統領とマイケル・R・ブルームバーグ国連事務総長特使が「気候データ運営委員会(CDSC)」を立ち上げ、オープンで無償の気候変動関連データ一元管理機関としてNZDPU(Net-Zero Data Public Utility)を設立したのですが、この機関とCDPがコラボするというのです。

具体的には、NZDPUに、CDPを通じて情報開示を行っている約400の影響力の大きい企業のコアデータを提供するそうです。(もちろん、匿名かつ独立した方法で開示するとのことですが)

詳細は明らかにされていませんが、CDP回答企業は、NZDPUへ自由にアクセスできるといった、メリットを享受できたりするのでは無いでしょうか。であれば、チャーン防止としては、かなりの威力かと思います。

まぁ、あくまでも私の勝手な想像ではありますが、「CDPも盤石ではいられなくなった」と感じていたところなので、関心を持ってリリースを見ておりました。

必ずしも安くは無い費用を払っているのですから、それに見合うようなベネフィットがないと、継続する意味がありませんよね。

皆さんは、どう思われたでしょうか。
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