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開示ルールの整理をしておきましょう

これまでnoteで何度となく紹介してきた、非財務情報の開示ルール。

ドラフトが公開され、パブコメが実施され、フィードバックを精査してファイナライズ、最終版のリリースという各ステージで取り扱ってきましたが、複数のルールが並行して走っているのに加え、クレジットやらSBTやら、GHGプロトコルやら、他のイニシアチブもあったりで、自分自身混乱していたりします。

ということで、ここで立ち止まって、整理しておこうと思います。

まずは、先月末、大々的にリリースし、エマニュエル・ファベール議長が、UKを皮切りに、各証券取引所でスピーチを行ったIFRS S1・S2を策定した、ISSB(International Sustainability Standard Board:国際サステナビリティ基準審議会)。

この変遷を確認しましょう。

IFRS財団が23年7月10日、ISSBが正式にTCFDの業務を引き継ぐことを発表したのは、皆さんもご存知のことでしょう。IFRSはSNSでも拡散し、S1・S2の公開と同じくらい界隈は賑わっていました。

このISSBの前身であるTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)は、金融安定理事会(FSB:Financial Stability Board)によって2015年に設立されたものです。8年間、お疲れ様でした。

ISSBは、2021年3月に設立された、財務・非財務の情報開示を所管する団体から校正されるWGで検討され、同年11月に発足しています。

IIRC(International Integrated Reporting Council:国際統合報告評議会)とSASB(Sustainability Accounting Standards Board:持続可能性会計基準審議会)が、2021年6月に合併してVRF(Value Reporting Foundation)となっていましたが、このVRFが2022年8月に合流して、現在のISSBとなっています。

こういう経緯があるので、S1・S2の内容は、SASBを基盤としており、S1・S2に該当する項目が無い場合は、SASBを参照することになっています。

これを踏まえて、これからを見ていきましょう。

パイプラインとしては、ボランタリーかコンプライアンスか、国内か海外(欧州)かで分かれます。もちろん、米国のSECもありますが、こちらは現段階で明確な動きがないので、取り扱いません。

国外って欧州や米国以外もあるよ、というご指摘もあろうかと思いますが、こと、環境に関わる開示においては、欧州がブリュッセル効果を利用してグローバルなビジネス環境を形作る規則を施行する戦略に長けているので、まずは、欧州をみておけば良いかなとの判断です。

さて、海外かつボランタリーは、前述のS1・S2です。
2024年1月1日以降に決算期を迎える企業から対象となります。
また、生物多様性・人的資本・人権に関する開示ルールの策定も既定路線で、S3〜S5となるかもしれませんね。

ただし、ファベール議長も繰り返し述べられていますが、S1・S2は各国、各地域(Jurisdiction)で利用可能とするために、大枠、フレームワークしか規定されていません。

ですので、具体的な開示内容や義務化の有無については、Jurisdictionの所轄官庁が判断するものとの立場です。

日本の「所轄官庁」は、SSBJ(Sustainable Standard Board Japan:サステナビリティ基準委員会)ですが、現在のところ、2023年度中(遅くとも2024年3月31日まで)にドラフトを公表、2024年度中(遅くとも2025年3月31日まで)に確定版を公表する、としています。

さて、非財務情報開示については、プライム上場企業にJPXが課している、コーポレートガバナンスコードもありますが、そちらは既に昨年から運用されていますので、今回は脇に置いておきます。なお、ボランタリーなので「罰則」はありませんが、上場廃止などのペナルティがありますので、同等以上カモですね。

最後にご案内するのが、欧州における「CSRD」という法律に基づいた開示です。法的拘束力を持つが故に、対象となる企業は「必ず」開示しなければなりません。

恐らく、日本企業にとっては、目下一番影響を受けるところだと思います。
というのも、それまでのNFRDはあくまでもボランタリーな開示だったからです。
加えて、対象企業範囲が大幅に拡げられました。

こちらでご案内していますので、参照ください。

ただ、大幅な変更であるが故に、事業規模別に、適用開始時期が異なっています。
現在NFRD対象企業で、既に開示をしている企業は来年度からすぐに適用を受けますが、その他の企業は、2025年、2026年、さらに2028年からと、移行期間を経た後に適用となります。

EU理事会プレスリリースより

なお、開示ではありませんが、法的拘束力を持つといえば、CBAM(Carbon Border Adjustment Mechanism:炭素国境調整措置)も、同じ枠組みで捉えていた方がよい法律です。

こちらも何度もご案内していますが、算定して開示する、その先の話です。
CSRDでも、開示しない場合は罰金が課せられるものの、排出量の多寡によって、金銭の支払いは発生しません。しかし、CBAMは違います。トン当たり、EU-ETSで取引されている排出権価格と同等の「税金」を支払う義務が発生します。

今年2023年10月1日から報告の義務が発生し、2026年1月1日からは、実際に、排出量(炭素含有量)に基づいて、CBAM証書を購入しなければならなくなります。

ということで、開示ルールの周りを、本当に簡単にですが整理してみました。
このように、基本的にはフローの情報を提供しつつ、時折立ち止まって、レビューする内容もお届けしようかと思います。

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