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情報開示基準の大本営なるか?

23年8月2日、国際監査・保証基準審議会(IAASB)が、国際サステナビリティ保証基準(ISSA)5000「サステナビリティ保証業務に関する一般要求事項」を提案しました。

IAASB(International Auditing and Assurance Standards Board)は、国際的に認知された高品質の監査、保証、その他の関連するサービスに関する基準を設定するための独立した標準設定団体。

IAASBの基準は、世界中の公認会計士が監査とその他の保証サービスを提供する際のガイドラインとして広く使用されている現実に鑑みると、ISSA5000が承認されれば、世界中のすべての実務者が利用できる最も包括的なサステナビリティ保証基準となりそう。

トム・サイデンシュタイン委員長のこの自信に満ちたコメントも、宜なるかな。

私たちが提案するISSA 5000は、持続可能性報告に対する信頼と信用を高めるための重要なステップです。この提案は、証券監督者国際機構(International Organization of Securities Commissions)の勧告に直接対応するものであり、国際会計士倫理基準委員会(International Ethics Standards Board for Accountants)を含む他の基準設定機関の活動を補完するものです。企業報告は、財務報告であれサステナビリティ報告であれ、公共の利益のために独自に開発されたグローバルに認められた基準に基づいて、外部からの独立した保証を受けることで、より信頼されるものとなる。

「IAASBは、あらゆる適切な報告フレームワークの下で作成されたサステナビリティ情報に対応するために、この基準を起草した」と言うだけあって、各国の規制当局はもとより、IOSCO、FSB、GRI、ISSB、ISOといった国際機関、イニシアチブとも密接に連携し、フィードバックを受けながら、ドラフトの作成を行ったとか。

個人的に着目したのは、ジョセフィン・ジャクソン副委員長のこのコメント。

これは、持続可能性事項が企業に与える影響、企業が持続可能性に与える影響、またはその両方に関連するかどうかにかかわらず、持続可能性事項全体にわたって報告される情報に関する限定的保証と合理的保証の両方に適している。

つまり、マテリアリティは、シングルだろうがダブルだろうが、関係ないと言っているんですねぇ。本当でしょうか?

確かに、EFRAG・欧州委員会とISSBは、ダブルマテリアリティに基づくESRSとシングルマテリアリティに基づくS1・S2の「相互運用性(Interoperability)」を向上させるプロジェクトを共同で行っています。

高度な整合性・複雑性の軽減・重複の削減に成功したことで、ISSB基準とESRSの双方を適用しようとする企業は、重複を最小限に抑えながら、 両方の気候変動関連基準を効率的に適用することが可能となった、とPRしています。

今後、相互運用性をさらに促進する手段として、開示のデジタルタグ付けに焦点を当てるそうです。具体的には、開示内容・分類(Taxonomy)を統一させて、情報開示のデジタル化を促進するものです。

なお、先月末、ESRSが採択されましたが、それを受けた、エマニュエル・ファベールISSB議長の言葉が微妙に気になっています。

我々は、EFRAGが独自の作業に関する表案を公表したことを歓迎するが、これについてはまだレビューしていない。我々は、最終的なESRSの分析を完了し、欧州委員会およびEFRAGと緊密に協力し、適切な相互運用ガイダンス資料を作成し、できるだけ早く市場に明確性を提供する予定です。

つまり、ESRS及びS1・S2において「一方の基準のみが要求する開示項目が何であるかを理解するための相互運用性ガイダンス資料」を作成するだけで、お茶を濁すだけではないかと。

まぁ、勝手な憶測ではありますが、IAASBが本気で、マテリアリティに左右させる、全ての情報開示ルールを包括する基準として「ISSA5000」を開発する意欲があるのか、じっくりウォッチングしていきたいと思います。

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