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CDPの次の一手は

毎年アップデートを行い、情報開示のデファクトプラットフォームとしての地位を確かなものにしているCDP。私のnoteに来て頂ける読者の方にとって、非常に関心が高いところかと思っていますので、繰り返し採り上げてきました。

来年については、こんな感じかな〜と思って、記事にしたのがこちら。

その中で、こちらの記述を元に色々と妄想しており…..

CDP will begin scoring all companies against scientific benchmarks reflecting their historic, current and projected impacts; product portfolios; and investment and transition plans.

CDPメルマガより

CDPは、過去・現在・未来の影響、製品ポートフォリオ、投資および移行計画を反映した科学的ベンチマークに照らして、すべての企業の採点を開始する予定です。(筆者訳)

これにより、「企業の野心と目標に対する達成度を明確に評価することができるようになる」としていることから、「スコアリング基準がそれに併せてアップデートされるのでは」と考えておりました。

そこに発表されたのが、CDPプロダクトディベロップメント責任者 ニコ・フェッテス氏の分析結果。

CDP/WWF気温上昇スコア手法とSBTを用いて、世界における大規模排出企業166社の気候変動目標を評価したものです。

タイトルは「大規模排出企業の削減目標はどの程度有効なのか?
読まずして、内容は推して知るべし。「有効じゃない」といういことです。
はっきり言って、ダメ出しされているような内容です。

現在、スコープ 3 排出量の 36%しか質の高い目標の対象となっていません

これだと、2.2℃の気温上昇に相当するとのこと。この水準では、削減の「野心度」は低すぎますよね。

じゃぁ、スコープ1・2はどうかというと、それでも1.9℃。2℃目標に整合しているとは言えるものの、SBTiは1.5℃目標でないと新規の申請及び計画の更新は受け付けないとしています。ダメダメと言われているようなものです。

企業の目標設定範囲と気温上昇との整合性の概要(CDP)

大規模排出企業は、総じて 2.7℃の気温上昇に整合する目標にとどまっています。

大規模排出企業の実際の排出量の傾向を分析すると、将来見込まれる排出量は平均して2.7℃の気温上昇経路に整合したものとなっていたとのこと。これじゃあ、パリ協定の目標はおろか、これまでの目標も達成できない状況であると言えますね。

より良い目標と削減の実現が必要です

「世界の主要な排出企業が、それぞれの事業に即したより意欲的で質の高い温室効果ガスの削減目標を設定しなければ、パリ協定を達成することはできない。」と断言しています。

逆に言うと「意欲的で質の高い削減目標を設定すれば」まだ可能性があると言うことです。大規模排出企業は、先頭に立ってバリューチェーン全体に高い意欲を波及させる責任を負っていると言えるでしょう。

ところで、SBTiは、金融セクターの役割に注目している旨、以前にお伝えしておりました。SBTi初代CEOとなったLUIZ AMARAL 氏が、就任演説で言及しておりました。

ニコ・フェッテス氏も、同じような見解を示しています。

金融機関は重要な役割を担っています。金融機関は、例えば 2022 年の CDP の SBT 協働エンゲージメン ト(CDP SBT Campaign)に参加するなどして、排出量の多い企業に対して質の高い目標を設定するよう直接要請し、信頼できる移行計画を策定するよう促すべきでしょう。

これらを踏まえて「企業の野心と目標に対する達成度を明確に評価する」を読み解くと、以下の変更が予想されるのではないでしょうか。

1.大規模排出企業におけるスコープ3排出量カバー率の更なる引き上げ
2.金融セクターに対する貢献度目標の引き上げ
3.これらを適切に評価するスコアリング基準の改定

もちろん、気候変動から生物多様性、海洋・土地利用変化等々へその対象範囲の拡大も、既定路線でしょう。

気候変動、サスティナビリティ、生物多様性、ダイバーシティ、人的資本など、様々な開示基準が次々と設定される中、それぞれにおいて深掘りされていく。どこから手をつけていいのか状態ですねぇ。

地道にやれるところから着実にせざるを得ないです。それでいて「野心度は高く」仕方ないですね。一緒に頑張っていきましょう。


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