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算定と検証の実際

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躓きやすい算定ルールや検証の現場の話を紹介します。
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#算定

サステナ担当悩みどころ(1)

算定は毎年行って行きますので、否が応でもスキルは向上していきます。 なので、疑問質問といった悩みどころは減っていくかと思われるところ、実は逆に増えてしまう、といったことを経験している方も多いのでは? というのも、当初は言葉の意味すら分からず、算定ルールも分からず、使用するデータが何か、社内のどこにあるかも分からず、といった「何が分からないか分からない」状態から始まります。 以前からサステナ担当であれば、GHG排出量の算定に限って学んでいけばよいのですが、全くの他部署から配

算定のハードルを下げることから始めよう

このブログを執筆しているのは2023年12月上旬ですが、サス担当の皆様だけでなく、環境に関わる人にとって、とりあえずは「take note」しておかなければならない、第28回気候変動枠組条約締約国会議(COP28)が、UAEのドバイで開催されています。 同様に、ビックサイトで毎年開催される「エコプロ」は、今や一般消費者向けのお祭り、都内近隣の小中学生の環境教育の場となっていることもあり、個人的にはこの数年はご無沙汰しておりますが、COPについては、嫌がおうにも注目せざるを得

一次データと二次データ

「些細だけど重要なことを突っ込んで説明するシリーズ」第2弾をお届けします。 今回は、まさに算定の現場、担当者が直面するであろうテーマです。 ご案内しようと思ったきっかけは、「私たちが、適当に行った(最善を尽くしたけど、精度は必ずしもよくはない、という意味です)算定結果が、お客様のところでは、一次データになるんですよね」という何気ない質問でした。 皆さんも、思ったことがあるのでは? 逆も真なりで、「サプライヤーから入手したけど、結局、適当なのでは?」 「自分たちがいくら精

CBAM抜け道の指摘

先月のFTに、次のような記事が掲載されていました。 簡単に言うと、「現在のCBAMルールには抜け道があるから、目的・効果が達成できないばかりか、グリーンウォッシュも助長する」ということです。 記事では「溶解したものであれば、バージン・スクラップに関係なくゼロ排出とされることから、中国などの低コスト高排出の地域で生産されたアルミ製品が流入する可能性がある、と主張している」とあります。 「業界団体であるEuropean Aluminiumによると、EUの製錬所はアルミニウム

Jブルークレジットのスゝメ(1)

何度もご案内してきたブルーカーボンですが、お陰様でご関心を持って頂ける方もボチボチと現れ始め、技術的な内容を尋ねられる機会も出始めました。 ですので、ざっくりとその流れをご紹介したいと思います。 「興味がある」→「やってみる」のインセンティブになれば幸いです。 今回は、令和2年度から試行事業として実施されている、「Jブルークレジット」を創生することを前提に、説明していきます。 「Jブルークレジット®」制度は、パリ協定の発効に伴い、いわゆるブルーカーボン生態系のCO2吸収

第三者検証〜はじめの一歩(4)

温室効果ガス排出量算定結果の第三者検証を受審するに当たって、躓きやすいポイントをご案内していく「はじめの一歩」4回目。 3回目では、算定の「基本5原則」をご案内しました。 これを踏まえた算定を行っていることを前提に、受審企業と交わした「保証水準」の契約に基づき、以下の何れかの意見表明を行うのでした。 覚えていらっしゃいますか? 今回から、審査の流れに沿って、具体的にご案内していきたいと思います。 検証プロセスは、このように、事業者と検証内容についての合意することから始

第三者検証〜はじめの一歩(3)

温室効果ガス排出量算定結果の第三者検証を受審するに当たって、躓きやすいポイントをご案内していく「はじめの一歩」3回目。 2回目では、とにかく、覚えておいてもらいたい要諦をお伝えしました。 言葉にしてみると簡単で、当たり前のように思えますよね。 ただ「当たり前を当たり前に」がどれほど難しいか。 後になって気づくよりも、先に気づいておきましょう。 さて、3回目は、算定の「基本5原則」です。 検証業務は、「二重責任の原則」の下、事業者と検証機関の共同作業と、前回お伝えしまし

第三者検証〜はじめの一歩(1)

情報開示の道も一歩から。 気候変動で言うと、その一歩は算定でしょう。 ということで、これまで算定方法については、スコープ1・2からスコープ3、カテゴリ別にもご案内してきたところ。 また、実務をやり始めたからこそ気づく、更なるクエスチョンも、出題編と解答編に分けて、説明も行ったりしました。 算定を終えれば、いよいよ「公開」「開示」となる訳ですが、ここで「算定」の目的を考えてみましょう。 繰り返しお伝えしているのは、算定はまさに「はじめの一歩」であり、算定で「見える化」す

「生産者価格ベース」と「購入者価格ベース」

排出量の算定に当たって、まず最初にお世話になる、こちらのサイト。 ここにある「排出原単位データベース」を利用される方が多いと思います。 このDBにおいて、産連表の金額ベースの排出原単位には「生産者価格ベース」と「購入者価格ベース」の2種類があります。 「これってどんな違いがあるの?」って思う人はかなりの数いらっしゃるので、Q&Aにおいてちゃんとフォローされています。 なるほど、算定事業者が工場など、実際に使用する購入者であれば「購買者価格ベース」、工場などに納品する販売

CBAM in motion(4)

2023年10月より導入が事実上確定したEUの炭素国境調整措置(CBAM)について、EY新日本有限責任監査法人が開催したウェビナーの資料を用いながら、内容について見ています。 1回目では概略の説明をしまました。 2回目は、「輸出業務が変わる」ことをお伝えしました。 3回目は、「検証業務が変わる」ことについて考察しました。 4回目は、どのようなビジネスチャンスがあるか、考えて見たいと思います。 CBAM関連業務は、大きく分けて5つあると考えます。 1.CBAM対象品の特定

脱炭素に関わる人材育成の周辺

算定支援を行っていてつくづく思うこと。 「共通言語で話せる人材は必ず必要」 排出量の算定を行いたい、ということで、その作業を完全にアウトソーシングするとしても、少なくとも、当該業務に関して最低限の知識を持った担当者は必要です。 難しい話をしているわけではありません。 「温室効果ガスの排出量を算定します」と話を切り出して、「温室効果ガスって何ですか?」と訊ねられても困る、これくらいの話です。 加えて、データの所在を承知していて、それを収集する、あるいは当該部署に協力して

環境関係のISOシリーズ

以前、環境、特にCO2の算定やLCA、フットプリントに関するISOについて、ご案内したことがありました。 今回、対象範囲を拡げてアップデートしました。 前回ご案内していたのは、主に算定の方法や算定結果の評価など「要件」に関わるところでした。今回は、増やしたのは、LCAやNet-Zeroを実行に移すための「具体例」や、ESG投資に関する「要求事項」に関わるものです。 なお、ご紹介し損ねていました、ISO14064ファミリー規格の構造や、CFP算定・コミュニケー ションに関

引渡製品単位の排出量を改めて考える(2)

前回から、引渡製品単位の排出量の算定について説明をしています。 このnoteで、形は違えど、何度もお話ししているテーマではありますが、質問された際に、ふと「?」となることもあり、「やはり、ちゃんと理解できていないのかも」と考えたことがきっかけです。 ということで、今回は丁寧に、プロダクト基準を読み込みながら、必要な点に絞って説明していきたいと思ってます。 さて、前回は、GHGインベントリの算定の全体像を把握して、「さぁ、それでは、算定の実際を考えていこう」というところで

CFPの算定・検証に関する検討会(その2)

9月22日に実施された「サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルに向けたカーボンフットプリントの算定・検証に関する検討会」の内容について、前回から引き続きご案内していきます。 前回は、設立趣旨の説明で終わってしまっていました。 今回は、CFPのこれまでの経緯や、その算定ルールに関する課題についてお話ししていきたいと思います。 CFPについては、これまでも議論・検討はされてきていました。 政府主導の試行事業は2011年に終了し、2012年からは「民」である「産環協」