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高品質なカーボン・クレジットを求めて

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誤解されやすい、カーボン・クレジット。適切に使用すれば、1.5℃目標も夢じゃない!正しい理解をお手伝いします。
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#Jクレジット

追加性(Additionality)を理解しよう

皆さん、「追加性(Additionality)」という用語はご存知ですか? J-クレジットの実施規定において「プロジェクトが満たすべき要件」の一つとして挙げられていますので、クレジットに携わったことのある方なら、当たり前の概念ですよね。 何も国内に限ったものではなく、国際的な概念であり、ボランタリーなGHG排出削減プログラムを推進する非営利団体のICROA(International Carbon Reduction & offset Alliance)は、認証可能なクレ

稲作中干し期間延長クレジットについての考察

農業分野におけるJ-クレジットの新しい方法論である「AGー005 水稲栽培における中干し期間の延長」の誕生はご存知の方も多いでしょう。 メタンは嫌気性条件で、微生物の働きによって生成されるところ、水田はメタン生成に好適な条件が整っていると言えます。なので、水稲栽培において湛水しない期間(中干し期間)を延長することにより、メタン発生量が抑制されるため、その削減量をクレジットとして認めるというものです。 これを受けて、既に7つのプロジェクトが登録されています。 ちなみに、

クレジットの使い方の悩みどころ

2009年6月に初めてクレジットが発行された「国内クレジット」 2008年11月にローソンと東京大学が申請したものが、第1号として認証されたものですが、それから、もうすぐ14年。当時は全く無名、「クレジットってカードでしょ?」の時代。 そのような、創生期から携わってきた私にとって、今の状況は、遅すぎた春ではありますが、非常費喜ばしいと感じています。 ただ、普及するときに問題となるのが、初心者の急増。 パソコン然り、ネット然り、スマホ然り、SNS然り。 2009年に併せ

CORSIA適格クレジットへの道

以前、J-クレジットとJCMがCORSIA適格クレジット(CORSIA Eligible Emissions Units)申請をしたことをお伝えしました。 CORSIAというのは、Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation(国際民間航空のためのカーボン・オフセット及び削減スキーム)の略で、ICAO(International Civil Aviation Organization:国際民

J-クレジット動向アップデート

22年9月からは、JPXにおいて、試行的な取引が始まりました。 実証期間は、2023年1月までで、売買の対象は「J-クレジット」及び「GXリーグにおける企業由来の超過削減枠」ですが、実際に取引できるのは「J-クレジット」のみ。午前と午後に1回ずつ、約定を成立させます。 また、COP27を経て、NDCに利用できるクレジットの扱いが明確になったり、来年以降、高品質なクレジットの創生および利用、主張に当たっての統一的なルールが順次公開されることも予想されるところ。 取引は活況と

JクレとJCMがCORSIA申請(3)

前回は、「太陽光発電設備の導入」方法論によるクレジットを、先行的に申請しようとしている旨お伝えしましたが、実際既に申請済みです。 受理後、3月25日から4月24日までパブコメを受け付けていました。 既に締め切られており、TAB(Technical Advisory Body 技術諮問組織)にて、EUC(Eligible Unit Eligibility Criteria)を踏まえた審査がなされている段階と思われます。 この後、各申請主体へ③勧告がなされ、それに対する修正・

JクレとJCMがCORSIA申請(2)

J-クレジットがCORSIAという、国際民間航空機関(ICAO) が主管する排出量取引制度で使用できるクレジットに申請した、という話をしています。 J-クレジットが申請した理由は明快。J-クレジットの活性化です。 運営委員会でも「2050年カーボンニュートラル実現に資する」として、 活性化策について、検討が続けられています。 2009年の発足当時を知る人間として、このようなPR資料を委員会が作るというのは、つくづく、時代が変わったなぁと思わざるをえません。 確かに、ぎ

J-クレジットの生い立ち

はっきり言って、およそ殆どの方には関係のない、知ってても意味のないことかもしれませんが、もしかして、知っていたら「なるほどな」と思うことがあるかもしれない、そんなことを書き留めておきたいと思います。 もともとは、「国内クレジット」と「J-VER」という別々の制度でした。 全く同時期に創設され、目的は違えど、CO2量を算定して、それを売買できる制度ですので、混乱した人が多かったと思います。(そもそも、CO2って?という時代でした) 個人的には「また、経産省と環境省がやり合

クレジット価格の二極化

皆さん、RE100というイニシアチブはご存知ですか? 2014年に結成された、事業で使用する電力を100%再エネ電力にすることを目標とする企業連合で、日本企業は、2022年4月現在 66社です。 ですので、参加している企業は、太陽光発電や風力発電などの再エネの発電所を自社で所有したり、電力会社から調達したり、オンサイト/オフサイトPPAという仕組みで調達したりと、様々な手段を講じています。 しかしながら、国内では直接的に再エネ電力を調達する選択肢が海外ほど多くないため、間