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答えはきっと、それぞれのなかに。『PLAN75』

「お誕生日おめでとうございます! 今日からあなたは合法的に死ぬことができるようになりました」
ある日突然、そう告げられたら(それも満面の笑みで)、あなたはどうしますか?
『PLAN75』はそんな作品。

深刻化の一途をたどる日本の少子高齢化。2025年には4人に1人が75歳の後期高齢者になり、2030年には全人口の約3割が65歳以上になるといわれている。(2025年、2030年問題)

倍賞千恵子さんが素敵だった。ちなみに81歳だそうです

「プラン75」とは、75歳以上の後期高齢者が自ら死を選ぶ権利を保障・支援する制度。死を選んだ人には「好きなことに使ってください」と10万円が給付され、一定期間、コールセンタースタッフによるサポート(15分間のおしゃべり)を経て、施設で眠るように亡くなる。プランにはおそらく、前日まで暮らしていた部屋の後処理から、死亡届の提出など、死亡後に必要な手続きの一切を請け負うことが含まれているのだろうと思う。

倍賞千恵子さん演じる角谷ミチは、夫を亡くし、ひとりで暮らす女性。
高齢を理由に仕事を失い、友人の孤独死を目の当たりにし、住む場所も失いそうになった結果、「プラン75」に参加することを決める。

一方、磯村勇斗さんが演じるヒロムは、「プラン75」の申請窓口で働くスタッフ。それまでキャンペーンを打ち出し、ポジティブな選択肢として参加者を集めていたけれど、ある日、20年ぶりに会った叔父が「プラン75」の申請したことをきっかけに揺れ動き始める…。

人生における“満開”の時期はいつなんだろう。

もしも本当に「プラン75」が制度化されたら、どうするだろう。
いろいろな意見があると思うのだけれど、正直なところ、わたしは“あり”ではないか、と思う部分がある。

現在、安楽死(自殺ほう助)が法制化されている国はスイスやオランダ、ベルギー、アメリカの一部の州など11か国。もちろん日本では認められていない。
安楽死を認めている国の多くにも厳格なルールがあって、基本的には治らない病を抱えていると認められた人のみ。以前、ALSの女性の依頼を受けた医師が薬物を投与し、自殺ほう助の罪で逮捕された事件があったが、同様に難病などを抱えた方がスイスに渡り、安楽死を選ぶケースもある。(スイスには自殺ほう助を支援する団体もある)

治る見込みのない病にかかり、それも自分の意思で体を自由に動かすことができない状態に置かれたら、わたしも同じことを望むんじゃないだろうか。
生き続けることに対して本当に苦しんでいる人に対して「それでもなんとか生きてほしい」なんて、わたしは言えないと思うのだ。

人生にも「引き際」があるのかな。

ところでわたしは現在ひとり暮らしで、いまのところ再婚する予定もない。
周りにも、似たり寄ったりの環境のひとがまぁまぁいる。
こんなわたしたちもいつか、ミチのように“独居老人”になるのかもしれない。
そのとき、何を考えるだろう。このまま衰え、だれかに迷惑をかけたくないから、と「プラン75」に申請しちゃうかもな。

一方で、例えば自分より年上の大事な友人が「プラン75」への参加を表明したら、泣きながら止めるかもしれない。
「まだまだ、元気じゃない!」とかなんとか言って。

わたしたちに「死ぬ権利」はあるのだろうか。
この映画を観てから随分いろんなことを考えたけれど、ずっとまとまらない。

きっと正解はないし、わたしのなかの答えも変わるんだろう。
とりあえず、今日をちゃんと生きよう。
いまはただ、そう思う。

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