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カオスマップの作り方記事まとめ

世にあるカオスマップを調べ尽くす中で、作り方の参考になる記事が幾つかあったので、マップを作る際はこれだけ見れば十分なようにまとめてみました。

作成を検討する方の参考になれば幸いです。

作り方

作った人が考え方や全体の流れや手順を書いた記事。

1)スポーツテックカオスマップを作った夏井さんのnote

年明けに、きちんと調べ作られたマップのVer.2も出した起業家。

最初に作る時の手順や苦労が分かります。

2)バイトテックのカオスマップを作った方のnote

「カオスマップ 作り方」で検索すると一番に出てくる記事。スタートアップの若手広報の方のようで、分かりやすく書かれています。

作ることばかりに目が行くと案外疎かになる「作成・公表を通じて何の目標を達成するか」が押さえられていて、参考になります。

3)不動産テックのマップを作った私のnote

一応、世にある中では最も詳しく方法論を書いていると自負しております(笑)

今回調べて分かったのは、私が最初に作った不動産テックのカオスマップは国内トップクラスにみられているようで、一応それを企画・制作・拡散させた者として、説得力はあるかと思います。

⚫︎作る前段の企画の話

⚫︎全体の流れ

⚫︎調査のテクニカルな詳細

⚫︎拡散させるために考え、実行したこと

⚫︎「ロゴって勝手に使っていいんだっけ」などの法的な話

4)BNPLカオスマップを作った人のnote

途中の過程が書かれています。

5)介護ICTマップを作った方のblog

PR目的ではなく市場理解という、本来あるべき目的で作られ、エンジニアが書いていて実直な感じ。

選別や分類の考え方、分かったことなどが簡潔に書かれていて、参考になるでしょう。

6)SaaS業界レポートの裏側

最も本気度の高い部類に入るマップ&レポート作りの裏側が垣間見えます。

普通の会社はここまで手数はかけないでしょうが、やるとここまで出来るという参考に。

7)既存マップのバージョンアップ

日本で最大のマップの1つである、アンダーワークスのマーケティングテクノロジーカオスマップの改訂作業を、担当した新人が書いたもの。バージョンアップのイメージが分かります。

最新版では1,000以上のサービスが掲載されており、もはやマップではなくリストだと個人的には思っていますが、メディア露出は最も多く、PR目的としては成功といってもいいでしょう。

・最初のVer.は社長自ら作り、思い入れやビジョンがある
・スコープやカテゴリが固まれば、新人でもメンテできる(いいお勉強)
・メンテは、既存掲載サービスの現状確認→新規サービス洗い出し
・検討はリモートで実施し、使用したツール類も掲載

8)しっかりとしたリサーチの事例

プロのコンサルタントが本気で調べるとこれくらいのことをやるという例。

因みにこのマップ、不幸な巡り合わせでちょっと炎上してしまいました。

このnoteを読むとそれなりにきちんと調べ考えて作っていることがわかりますが、粗悪なマップの氾濫に悪感情を持つ人が増えた中、安易に作ったと見做されると炎上リスクがあるという例です。

番外編)社内ツールカオスマップ

こういう用途もあるという例。

感想的な記事

作成の具体的内容までは分からないけれど、こんなことを感じるんだ、というものがわかるもの。

1)3年間作った人の工夫

3年間、誠実に考えて作っていると、構造を見やすくしたり、レポートで補足説明したりという工夫を自ずとするという例です。

これまでのカオスマップではどんなサービスがあるかは網羅的にわかるものの、『困ったときに必要なサービスを選ぶときの参考になる』ような資料にはなっていない(中略)と感じていました。
この点を改善し、よりRPA担当者の方に役に立つ資料にできないものかと考え取り組んだのがプロセス別のマッピング方法になります。
(中略)
新たな取り組みとして、カオスマップの内容を説明したガイドブックの作成を行いました。
ガイドブック作成の背景としては、①カオスマップ内で気になったサービスの詳細を知れるようにする、②RPA担当者さんが各サービスを選ぶ際に留意するポイントがわかる、これらをガイドブック内に入れることでより役立つ資料になると考えたからです。
このサービスを使ってみたい、問い合わせたいとカオスマップを読んで気になった方がすぐ問合せることができるよう、サービスURLを網羅したページも作成しました。

マップを作ることを目的化せず、「誰の、なんの役に立つのか」「自社として達成したいこと」を毎回考え抜いて、マップもその手段として、必要なものを補強するなどの改善をしているところが良いと思います。

2)マーケティングテクノロジーカオスマップの裏側

日本で最大のマップのバージョンアップを手伝った若手による感想。

効果や注意点

1)市場分析などの学び

本来は市場の全体像を先入観なく把握する、あるいは、自社のビジネスが「すでに誰かがやっていないか」の確認をするためのリサーチが主で、その副産物としてマップがあると考えるのが妥当、という話です。

2)PR

・見るに値するものを作る
・必要な人に届け、ビジネスにつなげるようにする
という点で、私と完全に同じ認識です。

この逆が、見境なく多くの人に見てもらうために、小手先で作ったマップを拡散させようとすることになります。

◆メリット
・カオスマップは記事になりやすい傾向
アーリーアダプターに認知・拡散される
プレゼン資料に引用されて広まる
・毎年出せば「カオスマップの会社」として認知させる

◆注意点
・テレビなどで「多くの人に見てもらうより、業界紙に取り上げられ必要な人に届く方が重要
「これはよくまとめたな!」というしっかりした内容でないと逆効果
・発信者とマップの内容に関連性がないと信憑性が弱くなる

あと下記も私が実体験として感じたこと。

実際、立ち上げたばかりで売り上げもプロダクトもない企業なのに、業界大手、メディア、VCなど、相手の方から連絡が来て、取材・登壇の機会を得たり、結果として億単位の出資につながったり(もちろんマップだけが理由ではないでしょうが)、なぜか業界団体設立をリードして代表に収まっていたりします。

「弊社がマップに載りました」と嬉しそうに公表する会社や(繰り返しますが、売り上げもプロダクトもない会社の作ったマップです)、「うちの会社も入れてください!」と連絡する会社もあったり。

3)使われ方の実態

ツールを使った分析結果に対する考察。以下、私も同意です。

ユーザーの目的
①興味関心
②新しいビジネスチャンスの発掘
③職探し
④競合調査

注目されるマップ
・話題性のある成長市場
・細分化により新たなビジネスモデルが生み出せる期待感がある市場

4)カオスマップへの過剰期待

「ポジショニングを示せないか」
「バリューチェーンで整理できないか」
「売り上げ比を示せないか」

のような、マップでは出来ないことまでマップでやろうとしたり、

「カテゴリ分けが厳密ではない」
「カテゴリがMECEやApple to Appleではない」
「網羅性は自己満足では」

等の指摘が的外れなことを指摘しながら、マップの機能や制約を明示しました。

マップは所詮、要素としては「タイトル(範囲)」「カテゴリ」「ロゴ(プロダクト」しかなく、複雑なことや厳密なことは示せません。

バリューチェーン、ビジネスモデルキャンパスなど、他のフレームワークで表すべきことを、無理矢理マップで実現しようとすることも無駄です。

そんな前提を踏まえ、端的に情報が伝わるような割り切りと工夫も必要です。

これも実際作ると分かるのですが、プロダクト=企業とは限らないし、1プロダクト(ブランド)が複数カテゴリにまたがることもあるのを、分かりやすさのためにどこかで割り切らなければなりません。

実際作るとそんな個別判断が次から次と出てきます。それら1つ1つに「なぜそうしたか」の理由を聞かれたら説明できるよう、基準を明確にし、きちんと調べ、根拠を持って判断する必要があります。

批判的な議論

カオスマップは2018年頃からリリースが増え、検索数も上がっています。

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◆PR Timesリリース数
・2016年:3件
・2017年:11件
・2018年:25件
・2019年:63件
・2020年:91件

先行者が「手軽に作れそうなマップで、楽して注目を集めている」ように見え、2匹目のドジョウを狙うのでしょうか。

安易なマップが粗製濫造され、どんなマップでもありがたがる「マップ喜び組」が拡散し、質の悪いマップが目に余ると、批判的な人が増えます。

世界で最初の"カオスマップ "を日本にローカライズした人でも下記のように発言しています(因みに「カオスマップ」は和製英語で、海外ではLandscapeと言います)。

私もよく「それマップじゃねえだろ」と思える"マップ"に遭遇することもあります。

ダメなマップの類型
・カテゴリが素人的
・カテゴリすら無い
・マップ化するまでもないスカスカさ
・数多過ぎでほぼリスト
・抜け漏れが明らか
・無駄な軸や枠の重なりで複雑
・綺麗だが中身がない
・デザインが劣悪
・範囲が恣意的
・市場定義が意味不明
・露骨な自社ひいき
・目的が不明

上記は、安易なマップに辟易している人と、元の趣旨を踏まえてしっかり作った人との絡みで、今を象徴するようなやりとりだと思っています。

(因みに私は、起業に際して市場調査をしてできたデータを、折角だから何か使い途がないかと人に聞いたところ「カオスマップにしたら」と言われて副産物的に作り、出来たからには広めようとしただけで、作ることもPRも目的ではありませんでした。)

いいものを作れば、いいことがある

今全てのカオスマップを調べ尽くしていますが、良いマップを作っている会社にはそれなりの「良いこと」がある印象です。

いいものを出したから良いご縁があったのかもしれませんし、いいものを作れるような経営者の見識、マネジメント能力、調査・分析・発信能力がある結果かもしれませんが、いずれにせよ、成長はしている感じです。

実際作った何社かの経営者とは直接接点がありますが、明確な目的のもと、経営者がコミットして作っています。

これから作る人は、批判的な見方があることを覚悟の上で、健全な目的で、しっかりとしたものを作ればいいと思います。

もちろん、効果がある企業、そこまででもない企業は、フェーズなどの要因で異なります。自社のリソースをかけるに値するかも見極めた上で判断すれば良いでしょう。

ご参考:カオスマップのコミュニティとコンテンツ化企画

マップを共有し、作る人を応援するグループを作ってみたので、ご興味あればご参加ください。

カオスマップ作りは書籍にもしようと企んでいます。

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