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コミュニティにおける営利/非営利の塩梅(主催者編)

プライベートコミュニティの運営は非営利が基本ですが、厳密に考えるとその線引きはなかなか難しいです。

直接・短期の営利行為は論外ですが、かと言って何のリターンも無い自己犠牲では、やがて心が折れるでしょう。見返りを求めないGIVEが妥当ですが、人によって営利との線引きが異なります。どんな塩梅が妥当なのか、考えてみようと思います。

主催者が赤字負担しては持続可能にならない

活動で費用がかかるのに参加費無料だと、主催者が自腹を切ることになります。持ち出しが続けば続ける気が折れるでしょう。

最低限、原価分は回収しなければなりません。赤字が発生しないよう収支には少し余裕が必要ですし、赤字が発生した場合補填する予備費もあった方が望ましいでしょう。

ただし、主催者としては、バッファを積んで参加者の負担が上げる前に、赤字にならない仕組みを作る努力をすべきでしょう。因みに私は600回ほどのイベントを実施してきましたが、工夫を徹底したため、赤字になったことは1度もありません。

価値に応じた対価は得るべき

価値あるものにはしかるべき対価を貰い受ける必要があります。自身が立ち上げたコミュニティとはいえ、自身以外がコンテンツを提供することがあるからです。

コンテンツの価値をどう設定するかは、コンテンツ提供者によって異なります。価値あるコンテンツには相応の対価を支払うという共通認識がないと、安いコンテンツしかない安い場になります。

主催者にもインセンティブは必要

主催者として場を運営することは精神的にも工数的にも大変なことです。何かしら見合わないと、続けることは難しいでしょう。とはいえそれが直接・短期的な営利では、コミュニティの参加者は離れます。主催者に都合いい食い物になりたいと思う人はいないからです。

学びや仲間など、実利以外の精神的満足でもいいですが、長期的に返ってくる実利もあり得ます。私が運営に携わっていたベンチャー経営者の大学OB会でも、運営はボランティアでしたが、その中で信用を得て、資金調達に成功した起業家もいます。

とはいえ、最初からそのような目的を前面に出していた訳ではなく、結果として信頼を得て、自身も出資に見合うものであったのであり、その順序が前後していたら、そうはならなかったでしょう。

相互に「Giver」である場にする

GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代』の中の「Giver」として、見返りを求めず先行して人の成功に寄与するGIVEを継続していれば、いずれ自分に返ってくるというくらいが妥当でしょう。

コミュニティマーケティングの話にはなりますが、国内第一人者の元AWSの小島さんは、コミュニティの成員に直接何かを売りつけて利益を上げるのではなく、その人たちが自社プロダクトを布教してくれようにする「Sell through the community」が大事と唱えています。直接営利を狙うと場の価値を毀損するという点では共通しています。

実際、健全に継続しているコミュニティを見ていると、長期的に結果として自分に返るものがあると信じて、まずは場の価値向上に直接の見返りを求めずにGIVEすることが、行動規範となっている点が共通している印象です。

ガイドラインと事例の蓄積で塩梅を示す

分かりやすい営利は排除したとしても、長期的なリターンを見据えての活動、営利目的ではない剰余金、付加価値に応じた対価設定と営利の境界は、人により判断が異なる可能性があります。

それを包括するルールで定めることも難しいと思います。具体的な事例を細かく羅列しても誰も見ないでしょう。基本的な考え方やガイドラインを定め、良し悪しの判断が割れる事案があれば、判断の根拠を明文で残し、判例を積み重ねるようにガイドラインを更新するするのが、現実的な対応だと思います。

説明責任は現実的な範囲で果たす

リスク負担や汗かき賃など、どのような名目・水準なら妥当なのか、根拠をもって決めて、説明可能にしておく方がいいでしょう。人によって妥当と考える名目や水準は異なるからです。

説明と合意形成を疎かにすれば、参加者が運営に対して疑念や不満を持つことにつながります。収支を管理、牽制、開示して私的利益の追求を防ぐ仕組みを作り、適正に運用されていると、参加者が納得できるようにしておくことも重要です。

とは言え、全員を納得させることは現実的ではありません。収支がバランスしつつ参加費が最小になるように、収支構造の設計とマネジメントを徹底し、銀座の客単価8,000円のレストランで立食+2ドリンクを提供して参加費3,000円当日払いの交流会をやっていたとき、主催者自身では一切剰余金を触らないなど、最新の努力と配慮をするまでしても「結構儲かっているんじゃないですか」という無礼なことを言う人はいました。

管理や公開にコストもかかるので、そんな人間を含めた全員に理解・納得させる完全な仕組み作ることも現実的ではないでしょう。ボランタリー運営の人員、予算の範囲内で、所属する大半の人が妥当と考える、負荷のないレベルで十分と考えます。

なお、それがどの程度かは、場の趣旨、予算規模、参加者の属性に依存するので、一概には言えず、自分で判断し、参加者に納得しもらうしかありません。

ご参考:コミュニティ、方法論

当方が運営するオンラインコミュニティ。

オンラインセミナーの方法論を書いた著書。

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