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企業アルムナイのつくり方-1.目的とゴールを定める

最近、企業でアルムナイ(卒業生コミュニティ)を立ち上げる動きが盛んで、メディア記事もよく見るようになりました。

しかし、コミュニティは会社組織とは性質が異なるため、見様見真似で立ち上げようとしても、失敗する可能性が高いでしょう。

そこで、17年にわたって複数のコミュニティを立ち上げ、運営してきた実践家で、ソニーの有志アルムナイの発起人でもある私が、これからアルムナイを立ち上げる企業の担当者のために、方法論をお伝えします。

主催者の目的や求める成果を明らかにする

企業にとってアルムナイは、あくまで目的達成の手段です。活動を通じてどんな成果を得たいのかを明確にしなければ、投じる工数や予算が成果に見合うか判断できません。まずは、主催する立場での目的やゴールを整理します。

以下を簡単に整理しておくといいでしょう。
例えば採用が目的ならば、以下のようなイメージです。

  • 目的:優秀な人材を採用して事業を成長させるため

  • 課題:エンジニア採用市場では需要が過多で、紹介会社や広告などの既存ルートでの採用効率が低下している

  • 成果:カムバック採用3件
    ←達成したかどうか客観的に判断できる成果を定義

  • 価値:人材紹介手数料 1,000万相当

  • 解決策の比較

    • 取り得る選択肢:ヘッドハンター、人材紹介、採用広告、イベント出展、リファラル、等

    • どんな軸でどんな優劣があるか

    • 補完やすみ分けも評価

成果については、実現までのステップを分解すると、より解像度が上がります。

あと、注意点を2つほど挙げておきます。

何でもアルムナイで解決しようとしない

「ドリルを持つと、何でも穴を開けたくなる」というように、アルムナイという手段を知ると、何でもそれを適用したくなるのが人情です。しかし、一般的な事務職や、それほど複雑ではない製品の営業などは、普通の採用広告で十分です。むしろスピードやコストの観点から、既存の方法の方が効果的ですらあります。解決策は選択肢を比較の上で、それでもアルムナイが効果的か判断すべきでしょう。

「やることが目的化」に気をつける

時々、同業他社が次々と始めているから、みたいな理由で、何のためかが曖昧なまま、やること自体が目的になっていることがあります。何を目指すか曖昧なままアルムナイを立ち上げて、交流会や情報発信などをしても、成果は得られないでしょう。そうこうしている内に、誰か偉い人が「こんなに手間やお金掛けて何になったのだ?」と言い出して、お取りつぶしになるのがオチです。

ROIや、工数・予算を見積もる

会社としての取り組みであれば、人の工数や予算を使うことになります。それがどれくらいなのか金額換算してみれば、どれくらいの投資に対して、どれくらいのリターンが見込めるか、投資に見合うのか、見えてきます。目標ROIから逆算する場合もあるでしょう。こうして、大まかな人員・工数や予算の間隔を掴んでおきます。

もちろん、やってみないとどうなるかは分かりません。効果や投資を過剰に見積もっても過少に見積もっても、判断を誤ります。とはいえ、評価可能な要素を分解しておいた方が、間違えるリスクは減らせるので、簡単に見積もっておくことは有用です。

制約や前提も洗い出しておく

個別の会社には個別の事情や特徴があります。例えば、ITエンジニアやデジタルマーケターなど、汎用性と流動性の高い人材を取りたいのか、プラントエンジニアのような希少な専門職を採りたいのか、また、卒業生の数は多いのか、会社に対する愛着は強いのかなど、固有の事情によっても、やり様は異なるはずです。会社によっては活動の制約もあるでしょう。

そのような、方向性に関わる重要な制約や前提も洗い出しておきましょう。

次回:参加者価値を設計する

アルムナイはコミュニティであり、コミュニティの主体は参加者です。参加する人々が価値を感じ、主体的に活動しなければ、コミュニティの価値は創出されず、結果として、自社の目標も達成できません。

よって、そのアルムナイがどんな場なのか、どんな人々のどのようなニーズをどう満たすのか、そのような価値を、具体的にどんなコンテンツでどのように提供するのか、といったことを明確にし、それが、自分たちの目指す成果に至るプロセスと整合させる必要があります。

次回は、場のコンセプトを明確にし、参加者価値を明確にして、コンテンツを具体化することについて記します。

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