基本要素を整理する 〜自分の講座を企画する全思考過程(2)
年間200件の社会人講座を実現するプロデューサーが、企画の方法論を詳説します。
一般的なビジネスパーソンが、自らの知見を、セミナー等の学びのコンテンツに、全く白紙の状態から完成させるまでの全プロセスを、考え方も含めてお伝えします。
今回は、核となる要素の整理です。
※この連載は3/23~26実施「自分の講座を企画する!オンラインゼミ」の内容を記事化したものです
実際の企画プロセス
今回から具体的なプロセスに入ります。
現実には、順序が前後したり、抜かしたり、個別の対応を加えることもあるので、この通りではないことも多々あります。
しかし、基本的な要素を、標準的な順序に構成したので、自身の考えをまとめるベースになるでしょう。
情熱の源泉を探る
コンテンツの精度を高めるには継続的な改善が重要で、自ら続ける原動力が必要となります。
「Ikigai(生きがい)」という世界的に有名な図があります。
その起点は「好き」であり、やり続けて「得意」にまでなると、「情熱(Passion)」となります。
他者から必要とされることて「使命」に、対価を支払われるくらいのものにできれば「生きがい」になる、ということを、この図では表しています。
「好きで得意」は、自らの中にヒントがある
とはいえ、問われて即座に「好きで得意なもの」を答えられる人は、案外多くないものです。サラリーマンなら尚更です。
その場合は、自分の中にヒントがあると考え、以下のような、色々な切り口から考えてみましょう。
自分のビジネス経験のみならず、業務外の活動も含め、整理してみるといいでしょう。
得意
・人より優れたパフォーマンスをあげられること
・頼まれもしないのに、極める・方法論化するなどしていること
・人から頼られ、感謝される
好き
・長く続けていること
・やっていると楽しいこと
より多面的に見るために、未来や過去を掘り下げてみてもいいかもしれません。
未来
・今後チャレンジしたいこと
・実現したい世界
・人に貢献したいこと(誰に、どのように)
過去
・やってみたら意外と向いていたこと
・心踊ったこと
・専攻や会社など、重要な意思決定
目的とビジョンを言葉にしてみる
ここでいう「目的」とは、単に講座を実施した後に得たいことに限らず、その先のに達成したい最終成果までを含みます。
ビジネス的な目的で構いません。
また、それを通じてどのような世界を実現したいのかまで繋げられると、より強く長く続く「動機」のベースとなるでしょう。
私の講座なら、良い講師を発掘し、私の仕事の講座に登壇してくれることが最終成果であり、それにより良い知見が必要な人に届くことが目指す世界です。
このように、全てが整合していることが求められます。
目的からターゲットを具体化する
コンテンツからターゲットを考えると、色々な対象があり得るので「誰向け」が定まりにくいですが、講座の先にある目的から考えると、的が絞りやすくなります。
例えば、ビジネスxデザインの講座で言えば、大手企業の事業開発や人材開発、スタートアップの経営者、デザイナー、コンサルタントなど、コンテンツの内容に興味を示す層は様々あります。
しかし、その先の目的が法人向けトレーニング案件獲得であれば、大手企業の事業開発や人材開発の、意思決定や企画の権限を持つ人に絞られます。
そのように、単に伝えるだけではなく、講座を通じて実現したいことがあるなら、そのターゲットから考えると、絞り込みがしやすくなるかもしれません。
ゴールがビジネスでなくても考え方は同じです。
伝えるものを言葉にしてみる
端的にいえば「コンテンツ」のベースです。
多くの人は人に教えるために仕事をしている訳ではないですし、「弁護士」「会計士」のように、自身の「専門」が誰でも知っているものになっているとは限りません。
しかし、講座はターゲットにとっての課題解決なので、相手視点で「自分のどんな課題を解決してくれるのか」が伝わる必要があります。
いくつかの観点を例示してみます。
抽象化
多くの人は自身の専門を狭く捉えがちです。
例えば、「小学生向け教材編集」とすると、ターゲットは同じ仕事をしている人に限られますが、「情報を誰にでも伝わるように構成する技術」とすれば、より多くの人が必要とするかもしれません。
但し、副作用もあります。
層の広さとコンバージョン率は相反するのです。
表現が個別具体であれば、ターゲット層は絞られるものの、反応する率は高まるでしょう。
ターゲット層の人々にとっては、自分にとって必要であることが明白だからです。
しかし、抽象度を高めると、ターゲットの層は広がりますが、曖昧に感じられ、刺さりにくくなります。
異なる属性の参加者が交じることで、満足度が下がる可能性もあります。
要素分解
例えば画像処理エンジニアであれば、アルゴリズム化やプログラミングといった要素にまで分けてみると、それを必要とする人は増えるでしょう。
具体化
単に「経理」とだけにすると幅広くなってしまいますが、新経理システム導入のプロジェクトを担当していて、システム-データ-プロセス-ビジネスを連動して最適化できる、などとすれば、業務改善を学びたい人や付加価値をつけたい経理の人が関心を示すかもしれません。
違いを見出す
広報・PRは、そこそこ大きな企業であれば必ず専門スタッフを抱えていますが、それをあえて「スタートアップの」と限定すると、他との違いが際立ちます。
業界やビジネスの性質(B2C/B2Bなど)、企業ステージが変われば、同じ職種でも専門性が異なることもあるので、どんな違いがあるか考えてみるといいでしょう。
ズラす
単に「ITセキュリティ」とするとエンジニア向けになり、そうすると高いレベルの技術・実績が求められます。
しかし「(非エンジニアの)スタートアップ経営者向け」にすれば、そこまでの高い水準よりむしろ、経営者の観点で現実的に必要な施策を、非エンジニアでも理解でき、実行可能なように提案してくれる方が求められるでしょう。
そのように、ターゲットや目的・用途を今の自分の仕事の相手から少しずらしてみることによって、新しいコンテンツの可能性が見えてきます。
その最重要なのは、相手の課題を理解していることです。
「価値」を言葉にして、ターゲットを具体化する
自身のもつ知見を色々な観点で具体化したら、それが、どんな課題をどう解決するか、言葉にしてみるといいでしょう。
コンテンツの本来的なターゲットを明らかにするためです。
次に、その課題を持つ属性の人を考えてみます。
例えば「伝わる文章の書き方」でも、営業、広報、エンジニアなど、属性が異なれば、目的や現状の課題感も異なります。
まずは列挙して、共通すること、違うことを明らかにしておくといいでしょう。
目的・コンテンツ・ターゲットを整合させる
自身の目的から導き出されたターゲットと、自身の知見が本来的にもつターゲットを具体化できたら、あとは両者を付き合わせ、最終的なターゲットの候補を絞り込みます。
なお、この時点ではコンテンツや企画の軸を定めるための仮置き程度なので、一応の整合性があればよく、時間をかけ過ぎずサッと作ります。
また、目的は大小複数あり得るので、それによっていくつかのオプションができることもあります。
ターゲット層を広げるか、狭めるか
しかし、抽象化をすれば、ターゲット層は広まるものの、具体性は薄まるので、反応率は一般的には低くなるでしょう。
現実的には、来てほしいターゲット層、目標人数を勘案して調整することになるでしょう。
また、課題によっては「汎用だが切実」なものもあります。
編集も「人に伝わる文章術」などにすれば、強い課題感を維持したまま、層を広げられるでしょう。
時代に関係なく一定の需要のある本は参考になります。
文章術、コミュニケーション、語学、勉強法など、昔からあるが、常に新しい本が出ているテーマは、それだけ幅広い人にとって切実な需要がある、ということです。
但し、当然競争は激しく、コンテンツの魅力、企画力や、講師のバックグラウンドの説得力が求められるので、どの程度にするかは判断となります。
次回は、プロフィールの作り方について。
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参考記事:筆者について
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