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オンライン・コミュニティの実験場をつくる構想(7)〜負荷を下げる文化と仕掛け

良い形で回っている組織には必ず独自の戦略を裏打ちする思想があり、それが組織の基本行動として徹底されるような文化と仕掛けがあり、それらは互いに、文化が仕掛けを回し、仕掛けが文化を生むような関係になっています。

文化は組織の思想、ひいてはトップの価値観やキャラクターに依存するので、施策だけ入れれば自動的に作れるという訳ではありません。

とはいえ「誰でも使える化」できるものはそのようにして、他にコミュニティを立ち上げる人が活用できるようにしたいと思います。

本項では、運営に携わる人の心理的・物理的負荷を下げる幾つかの仕掛けのアイデアについて述べましょう。

締め切りをルール化

忙しい時に優先順位の低いことの調整をしなければならないのは煩わしいことです。つい後回しにしがちですが、後回しにすると心の中に澱のように「ああ、あれやらなきゃ」が溜まります。

また、依頼する側もボランタリーであるがゆえにいつまでにと言いにくいので、ついつい期限を切らず、催促もできず、そうしてお互いに不満やも申し訳なさが溜まって、物事も進まないという悪循環が回ります。

そういった事態を予防するために、いつまでにやるかを考えなくて済むようにするのが、締め切りを24時間以内に標準化する「24時間ルール」です。簡単なことは基本即レスでいいのですが、少し考えなければならないものにこのルールを適用します。

日程調整や書面決議のようなものは、このルールで自動で決めて、未回答なら合意とみなすという運用ができますし、ルールで決まった期日なので、催促する人にとっては他人のせいにしてPushしやすいという、心理的負荷を下げる効果もあるでしょう。

なお、厳密に24時間とするより、対応事項が発生した翌日の23時59分などの方が覚えやすいと思います。

資料作成のようなもう少し時間がかかるものは、週明けや1週間という一定期日か一定期間に定めればいいでしょう。

脱退は機械的に

人は嫌なことをあまりやりたくないものです。運営チームでありがちな問題は、メンバーにはなったものの、何も反応も稼働もしない人です。いる以上何かの役割を与えなければならないと考え、割り振るもののやはり動かず、ということもよくあります。

前のめりで一生懸命やってくれるメンバーもおり、そういう人にとっては、それは公平ではない感じもするでしょう。最悪のケースは、そういった貢献をしてくれている人の士気が下がることです。

かといって、手を上げてくれた、あるいは、お願いしてなってもらった手前、辞めさせるというのも嫌な気がするものです。

この場合、一定の基準を予め決めて合意しておき、基準に達しなければ自動的に一旦運営グループを抜けるようにするのも一つの解決策であると考えます。

ただし、そのハードルはあまり高いものであってはならないでしょう。返答が必要なものには反応する、月に1回は自分からポストする(そのための仕掛けも用意し、極力心理的負荷をかけない)、半月に1つは何かしらの企画運営に関わる、といった、どんなに忙しくてもそれくらいは最低限できるというレベルに留めます。

結果責任は主催者にある

気をつけなければならないのは、会社と社員の関係のように「働かない人を罰する」ことと混同しないことです。主催者と運営メンバーは対等で、上下関係はありません。運営メンバーの活動基準を保つことの目的はメンバー間の公平性と士気を保つことであり、公平性を保つために必要最低限のルールを設けるというスタンスです。

主催者はメンバーに対し、興味を持てるような機会や、動きやすい環境(一歩踏み出しやすいきっかけ、何をどうすればいいか・どれだけの負荷がありそうかの予想可能性など)を提供する責務があります。よって、人がうまく動かないのは主催者にまずは責任があると考えるべきです。

基準に抵触してチームを抜けることは悪いことでも恥ずかしいことでもないという認識も大事です。そういう考えがあると抜けることにネガティブな感情を持ち、せっかく一度運営に入ってくれたのに、二度と戻ってもらえなくなります。あくまで今このタイミングでは都合や気持ちの問題で動くことができなかったが、別途巡り合わせがかみ合えば高い貢献をしてくれるかもしれず、その機会を潰すことになります。

結果は仕組みで担保する

結果は仕組みと責任者で担保することを言動で示し、予定したことができない場合は早めに「できない」旨チームに公表してもらい、対応できる誰かを割り当て、バックアップします。

ボランタリーな活動である以上、「できる範囲でやる」というのが大前提だからです。会社のように業務時間が決まっている訳ではありませんし、1時間稼働できる人、10時間稼働できる人、それぞれその人なりにこなすだけです。結果責任は主催者やリーダーが仕組みで担保するだけで、個人のスキルや時間の制約や優先順位の中でやれるだけのことをやってもらうというのが現実的な対応でしょう。

割り当てられた業務をこなすスキルがあるから採用されたのではなく、むしろチャレンジしている場合もあります。できないことや人に手伝ってもらうことを申し訳ないと思わせてはなりませんし、プレッシャーを感じさせるのもよくありません。

ボランタリーな組織の場合歪みが出るので、意識してこれを避けた方がいいと考えます。

本音を選択肢化する

ボランタリーなコミュニティとは言え、運営に参加する動機が100%の無私の奉仕ということはあり得ません。皆何かしらのベネフィットを求め、目的や価値観に応じたスタンスを取るはずです。

経験なのか、実績や知名度なのか、人のつながりなのか、本業など他の活動に繋がる話なのかといった「得たいもの」や、具体的に実行や実現をしたいことも併せて把握します。主催側としてもそれがコミュニティの一般参加者との相互利益が成り立ち、場のポリシーと整合していれば、積極的に認めるべきでしょう。

運営スタンスも、自発的にチャレンジするスタンスもあれば、自分の目的の範囲内でやる人、必要最低限のことしかやらないスタンスの人まで、人によって様々でしょう。

これらは基本的に当人からは言いづらく、主催者によってははっきり聞かない人もいて、うやむやなまま互いにモヤモヤしがちです。これをいい出しやすいように選択肢化して、参画する段階や定期的な1 on 1などで双方確認し、誰でも分かるようにしておけば、お互い相手の意向に合わせたタスクや責任の振り方ができます。

定例化で調整を無くす

オンライン・コミュニティとはいえ、直接話す機会は重要です。しかし個別に調整するのは、スケジュール自体も大変なら、それをやることや理由を決めるのもそれなりに心理的な負荷になります。そこで開催ルールを決めて定例化するという手があります。

実施日程を予め2つ3つ決めておけば、全て合わないというほど忙しい人はあまりいないでしょうし、仮に合わなくてもその期間内に調整するとルール化すれば良いでしょう。それをしない人にはその意思がないと行動でわかることになります。

また、イベントを企画するなど、そこそこ物理的・心理的負荷のかかることもあります。これもつい後回しにしがちですが、定例の「もくもく会」などの強制的に作業をする仕組みを作り、締め切り効果や「一緒にやる人がいる」というピア・プレッシャーなど、やる必然性を外部に作るのもいいでしょう。

これも日程を調整するのは面倒なので、予め開催ルールを「毎月○日」「毎月第n○曜」など決め、幹事を持ち回りにするなどして、運営自体も標準化をすれば、誰でも気軽にできると思います。

標準に合わせることを支援する

情報共有のツールなど、システムやプロセスを皆で同じものにすることも大事です。人によって違うと見落としや合わせるコストなど発生するからです。とはいえ、例えばSlackで運営チームのやり取りをすると決めたとして、人によっては全く使ったことがなく、どう使っていいかわからないという人もいるでしょう。そんな人のために、簡易なマニュアルを作ったり、使う練習の会を設けたり、本筋から外れた使い方をしている人には分かりやすく理由とどうすべきかを教え合うことを、基本行動として徹底すると良いでしょう。

参考:完全オンライン・コミュニティの実験場

コミュニティをオンラインで立ち上げ、オンラインで運営する取り組みをしています。今後よりアウトプットにシフトしていくので、ご興味あればご登録ください。

参考:オンラインセミナーの方法論

基本的な考え方から具体的ノウハウまで記したので、ご興味あればご覧ください。


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