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無料全文公開!『オンライン・セミナーのうまいやりかた』第1章

書籍の内容を多くの人に知ってもらうために第1章を無料公開します。内容は、これまで対面中心でやってきた人が、応急的にオンライン対応するために必要な一通りのTipsですので、ぜひご覧ください。積極的にシェアいただけると嬉しいです。

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コンテンツをオンライン対応させる

この章では、これまでオフライン(対面)でセミナーをやってきた人がオンラインに対応するプロセスを、実際に対応する順番にお話しします。

これを見て必要最低限のことに対応できるマニュアルとなるようにしておりますので、取り急ぎオンライン化に対応しなければならない方は、まずはこちらに目をお通しください。

また、オフラインのものを単純にオンラインに移行しても、参加者にとって価値のあるものになりません。そこで、移行初期に陥りがちな「単純オンライン化」の落とし穴と、それをどう「オンライン最適化」するかのエッセンスについても、併せてお伝えします。

オンラインでは、オフラインの場合と同じ資料を元に同じように話しても、参加者への伝わり方は異なるので、セミナーの構成から伝え方、資料まで、オンラインに最適化する必要があります。それに合わせてツールや設備を選び、予行演習で確認することで、必要最低限のオンライン対応ができます。そのステップは、大きく次の5つになります。

①セミナー自体の構成を変える

オンラインセミナーに参加したことがあれば感覚的にもわかると思いますが、オンラインだとなかなか集中力が続かず、疲れます。よって、30分〜45分ごとに質疑応答の時間を入れたり、チャットで随時コメントや質問できるようして双方向のコミュニケーションを心がけるなど、ただ一方的に聞く時間を極力抑えるようにします。

②ファシリテーションを見直す

オフラインならいちいち手を挙げて質問することは憚られますが、オンラインはチャットを使って随時気軽にコメントできる利点があります。しかし、よほどオンラインイベント慣れしている参加者でない限り、講師から働きかけをしなければ、自発的にチャットにコメントしてくれることはないでしょう。

よって、アイスブレイクとして、チャットでコメントする練習を入れる、中間の質疑応答の時に再度チャットでの質問を促す、話しながら余裕があれば時折チャットのコメントや質問を拾うなど、参加者が自らチャットを送りたくなるような働きかけを意識的にします。

Zoomであれば、ブレイクアウトルームという機能を使い、参加者を3〜4人ほどのグループに分けて自己紹介をしてもらい、少し雰囲気を和ませることもできます。

③資料を再構成する

セミナー全体の構成に合わせて、資料もつくり直します。オンラインでのファシリテーションがしやすいように、指示は口頭で行うのではなく、資料に記載し、流れの中で必要に応じて複数回表示するようにします。

たとえば「質問やコメントは随時チャットにお願いします」といったことは、冒頭だけでなく、中間質疑の後にも再度表示して、より確実に伝わるようにする、といったことです。なぜかというと、遅れて参加して最初の指示を見ていない人もいるからです。ハッシュタグをつけてSNSに投稿してもらいたいなら、スライドマスターに入れて、全ページの右上などに常に表示されるようにしてもいいくらいです。

また、オフラインの場合、1枚のスライドに多くの情報を盛り込んでしまう人がたまにいますが、オンラインは参加者側の集中力が落ちている可能性を見越して「1スライド1メッセージ」というプレゼンテーション資料の基本をより忠実に守り、文字も26ポイント以上を目安にして、シンプルな文章と図表で、一目でメッセージが伝わるものにすることが望ましいです。

なお、私のひと工夫としては、Zoomの場合、全画面表示にすると、参加者の顔やチャットのウィンドウの置き場が必要で、スライドの全てに文字や図表を入れてしまうと、それらのウィンドウが被って見えなくなることがあるので、右端にウィンドウを置けるくらいのスペースを用意する、ということをします。

ただし、マイクロソフトのTeamsなど別のツールには、そのようなウィンドウが出ないこともあり、事前に確認するといいでしょう。
フォーマットは、URLで共有ができ、誰でも同じように見え、同時編集もできるGoogleのスライドやドキュメントがおすすめです。スライドはパワーポイントなどと比べ、機能が限られてはいますが、あまり込み入った機能は使わないのであれば問題ありませんし、資料を差し替えても、事前に配布したURLを変える必要がありません。

④ツールと設備の選定

オンライン化の最初の段階で、あまり特別なツールや複雑な機能を使うことはおすすめしません。それ以前に、プレゼンテーションやファシリテーションなど、単純なオンラインへの適応に労力を割いた方がいいからです。

基本設定で直感的にできる、必要最低限のことにとどめるのがいいでしょう。今であれば、セキュリティの関係でZoomが使えない、人数が数百人になるなど、やむを得ない事情がない限り、最も多くの人が使い慣れているであろうZoomの基本機能でできる範囲のことにとどめます。

設備はノートPCが一台あれば必要最低限のことはできますが、マイク、カメラ、ディスプレイ、ライトからスイッチャーやグリーンバックまで、凝り始めるとキリがありません。オンラインセミナーでまず重要なのは「音」と言われています。

映像に少しくらいノイズが入っても気にはなりませんが、雑音が入ったり音が途切れたりすると不快に思う人が多いようです。PCのマイクはタイピング音、PC内部の音や、周りの雑音を拾ったりするので、イヤホンマイクがあるだけでも雑音が入るリスクを回避できます。

イヤホンなどの周辺機器とPCの接続やインターネット接続は、BluetoothやWi-Fiのような無線より、有線の方が安定するので、可能な限り有線にしましょう。

さらに外付けディスプレイがあると操作性が大幅に上がります。プレゼンをしながら、Zoomのチャット、運営メンバー間のメッセンジャー、参加者の映ったウィンドウ、メモ書き用のドキュメントなど、複数のツールを同時並行で確認・操作することがありますが、PCのディスプレイ1つだけだと、ウィンドウの切り替えに手間取り、つい説明が止まるという事態に陥りがちです。必要なウィンドウを探し出して切り替えなくて済むように、外付けウィンドウに一覧できるように表示しておくと、何かあっても落ち着いて対応ができます。

⑤予行演習

オンラインの場合、オフライン以上に事前の練習が重要です。資料やプレゼンテーションのブラッシュアップに加え、ツールのオペレーションが必要だからです。

特にオンラインの場合、プレゼンテーションやオペレーションをする側からは、参加者がどう見えているか、聞こえているかがわかりません。なので、実際誰かにオンラインツール経由で参加してもらい、フィードバックをもらわなければ、改善すべき点に気づきにくいのです。

ツールの操作をしてくれるオペレーターがいる場合は、どのタイミングでどんな操作をするか、役割分担、流れや合図を確認すると、本番でも慌てずスムーズに進行することができます。

特に使い慣れないツールを初めて使う際には、事前練習は欠かせません。私は普段自分のZoomで登壇、オペレーションすることが多いですが、時々外部のイベントに登壇し、別のツールを使うことがあります。

操作画面や動きが違い、思いの外戸惑うことがあるので、相手方と練習しておくことで、本番で普段と違うことが発生しても、落ち着いて対応ができるのです。


オペレーションをオンラインに対応させる

コンテンツを的確に届けるには、オペレーションも重要です。また、中身が良くても、運営の対応がイマイチだと、参加者の不満につながることがあります。オンラインはオフラインと参加者導線や要員配置が異なるので、重要な違いを中心に、対応すべき事項を説明します。

①「入れない問題」を未然に対処する

オンラインセミナーに初めて参加した時のことを思い出してみてください。どこからどうやって「会場」に入るのか、リンクをクリックすると出てくるダイアログにどう答えれば良いのか、今から思えば些細なことでも、初心者にとっては一つひとつが戸惑い、不安になることではなかったでしょうか。

オンラインセミナーでよく発生するのは参加者が「オンラインルームのリンクが分からない」「入り方が分からない」「入れない」という問題です。大抵は慣れないツールを使うことが原因なので、Zoomのような使い慣れている人が多いツールを選ぶのが無難です。

もう一つは説明が不十分、あるいは参加者に届いていない、ということです。イベント管理サービス「Peatix」であれば、購入したチケットからZoomのオンラインルームに入ることができるため、事前に案内する手間がかかりません。

しかしPeatixを使ったことのない人が、どこから入ればいいか分からない場合があります。その場合は、イベントページの備考の中に「申し込んだチケットを開くと“イベントに参加”という緑のボタンがあります。当日そのボタンをクリックしてオンライン会場にお入りください」といった手順を明記しておくと、迷う人が減るでしょう。そのような機能がないツールで対応する場合、事前のリマインドメールでリンクを案内します。

リンクがいつ送られてくるか分からないと不安になる人がいるので、「Zoomのリンクは開催当日の午前中を目処にお送り致します」といった記載を入れておくと、気の早い人からの問い合わせを未然に防げますし、仮に見ていない人からの問い合わせがあっても備考を見るように伝えるだけで済みます。

予定しているツールを使ったことがない人が多く参加する可能性がある場合は、イベントページにセットアップの仕方や簡易な操作手順やよくある質問を書いておくといいでしょう。メジャーなツールであれば、よくできた解説ページが検索すればいくつも出てくるので、そちらへのリンクも併せてつけておくとさらにいいでしょう。

最も丁寧にやるならば、誰かに協力してもらうか、自分が複数のデバイスと別アカ ウントを使って、新規ユーザーとして入る体験をし、それに合わせて手順を逐次記録していくことです。新規登録してだいぶ経つ、使い慣れているツールだと、登録にどんな手順が必要か知らず、新規の参加者がどこでつまずくか分からない、というケースがあるためです。

イベント実施時、会場に入れない時の連絡先を明示しておくことも大事です。指定しなければ、Peatixのメッセージだけでなく、知っている担当者のメールから、下手をすれば問い合わせフォームなど、様々なものに分散して連絡がきて、気づかない恐れもあります。

私の場合、通常はPeatixのメッセージを指定しています。これも連絡があった場合にポップアップで通知が来るものではないので、開始後自分のスマートフォンで時々見るか、サポートスタッフがチェックできるようにする必要があるので、完全無欠な選択肢という訳ではありません。

ただ、現実問題としても、対応できる可能性は、工数的にも、技術的にも、難しいと言わざるを得ません。

よって備考に「ツールの操作など、主催者側でサポートは致しかねますので、各自にてご対応ください」と入れるのが、現実的な対応にならざるを得ないと思います。

もちろん、高額なセミナーや、重要顧客向けなど、体制を強化してでも対応すべき、という場合もありますので、それは重要性と投入できるリソースのバランスから、適宜判断となります。

②受付と出欠管理をどうするか

オフラインのイベントであれば、会場の入口に受付を設けられますが、オンラインの場合そうはいきません。オンラインでオフラインと同じく「実際に入ってきた人を申し込みリストと突き合わせてチェックしよう」と考えると、これが案外大変です。

オフラインなら目の前にいる本人に名前を聞いて確認できますが、Zoomなどのビデオ会議ツールの場合、待機室のような承認機能を有効にしない限り自動で入れてしまいますし、承認機能を有効にしても、ツールで表示される名前と申し込みの名前が必ずしも同じではありません。

私もZoomの表示名は本名の「高橋龍征」ではなく「Ryu Takahashi」になっています。会社の共有アカウントなら会社名が表示されるでしょう。

Zoomなどのツールに参加登録機能もありますが、外部の申し込みリストと突き合わせてくれる訳ではなく、事後の確認にならざるを得ませんし、参加者にとっても手間です。この時大事なのは「目的」と「割り切り」です。新規顧客獲得のためにコンタクト可能な連絡先を取ることが目的なら、申し込みのフォームに必要情報を入れてもらいさえすれば、実際に参加したかどうかの確認までは必要ないものです。

より詳しい話を聞きたい人を個別の商談にまで持っていくのが目的なら、事後のアンケートで個別商談の希望を取ればいいでしょう。そう考えると、参加時に出欠や本人確認をとる必要もないかもしれません。

本人の参加確認が必要なのは、社内研修や学校の授業など、限られたものでしょう。有償のセミナーでも3 0 0 0円以下の安価なものなら、管理の手間やコストと、お金を払わずに人が入ってくるリスクを比べたら、「リンクを知っているということは、申し込みをして入ってきた」と見越して、ノーチェックにした方が合理的という気がします。

わざわざ有料セミナーのリンクを拡散したり、他の人から手に入れて入ろうとする人などほとんどいないと考える方が現実的だと思います。

③サポートスタッフをアサインし、役割分担を決める

オンラインセミナーを一人で運営するのは大変です。Zoomなどのツールのオペレーション、ツールに入れないなどの問い合わせの確認、資料やアンケートなどのリンクを参加者にチャット等で配るなどのオペレーションを、自分が登壇者としてプレゼンテーションをしながらやるのは難しいものです。

どうしてもオペレーションに気を取られ、気もそぞろに話してしまうことになります。

また、チャットなどを通じた参加者とリアルタイムで双方向のやりとりをするには、ラジオのアシスタントのような、コメントを拾ってくれる人がいることが望ましいです。

よって、そのような人をアサインしましょう。その際に、どのような役割分担をするか、どのタイミングで何をしてもらうかを明確にしておくことが大事です。人によって、スキルレベルも異なるので、それらを鑑みて、相手にどの程度任せるかを決めます。

たとえば、Zoomなどのツールの込み入った操作までは任せられなければ、コメントを拾ったり、アンケートなどのリンクを配布してもらうまでに留めます。

初回の前は予行演習をして、実際の画面や操作を確認したり、どのタイミングで何を合図にバトンタッチをするかなど、シミュレーションをしておくといいでしょう。それでも想定外のことは起こりますが、事前にやっておいたことに関しては、焦らず対応できるので、パニックになる度合いを低くすることができます。

④資料や動画の配布の目的と方法を決める

オンラインの利点のひとつに動画を録画しやすいということがあります。やむを得ず参加できず、どうしても聞きたいという人には、動画のリンクを送って見てもらうこともできます。使用したプレゼン資料もデータで配布できます。

一つ注意したいのが、明確な目的なくやらないことです。案件獲得が目的のセミナーなら、短期間で複数回実施してそちらにきてもらう方がいいかもしれませんし、個別相談で対応する方が、案件化につながる確率は上がるかもしれません。

有償セミナーの欠席対応なら、あらかじめ「欠席者にはセミナー動画と資料を事後に配布します」としておけば、行けなくなって参加費を無駄にするリスクが減ると考え、早めに申し込みをするインセンティブになります。

ただし、外部講師によるセミナーなら、講師の承認が必要で、一般的には自身の知財であるコンテンツを無条件にデジタルで配布することは好みません。「事前申し込みをした欠席者で、希望した人にのみ送付」「開催日から1週間以内のみ閲覧可能」など、対象や期間を限定することも、交渉条件として視野に入れるといいでしょう。

⑤事後アクションの受け皿を用意しておく

案件獲得が目的のセミナーなら、実施して終わりではなく、その後参加者に期待するアクションがあるはずです。たとえば、連絡先などの顧客情報を登録してもらう、個別の面談の日程調整に入る、などです。せっかくオンラインセミナーを実施しても、それら次のアクションにつながる受け皿がなければ、労力が無駄になってしまいます。

オンラインセミナー終了時までに、アンケートのリンクを参加者に送り、その中に、メーリングリストの登録に必要な情報を入れてもらう、次回の商談希望のチェック欄を設けるなどしておくといいでしょう。

アンケートはGoogleフォームのような無料のツールで簡単につくれます。初期の段階で高度な分析をすることはないでしょうから、直感的につくれ、ユーザー側も使い慣れている可能性の高いツールを使うのが無難です。


営業のためのオンラインセミナー

案件獲得が目的のオンラインセミナー成功例

2020年4月末から3週連続で「Instagramマーケティング“即効”実践講座」を実施しました。こちらは当初受講者30名程度の想定でしたが、最終的には 400 名からの申し込みがあり、10件以上の商談につながりました。

本件は、Instagramの分析ツールを提供する会社の営業リード獲得を目的とした企画でした。よって、最終的に売り上げにつながる可能性のある参加者がどれだけ来て、次のアクションとしての商談にどれくらいつながるかが、セミナーの成否を測る基準となります。本来のターゲットではない人も多くいたものの、個別の商談に複数つなげられたので、成功と捉えていいと考えます。

無料とはいえ、全3回で平日の16時〜17時という業務時間内の開催という比較的参加のハードルが高い中でこれだけ人が来たのは、テーマがタイムリーであったことと、講師の信憑性が高かったこと、内容が詳細に書かれていたことがその理由であると考えられます。

一方で改善すべき点としては、本来のターゲットではない個人や個人事業主が混じってしまったことです。バックエンドの分析ツールは年間数十万円する企業向けのもので、個人や個人事業主が契約するものではありません。案内文の中に企業のInstagram運用担当者向けであると明記はしたものの、Instagramという個人でも使えるツールの特性上、個人や個人事業主の方が多く入ってしまったようです。

※セミナー案内文
https://www.Facebook.com/event/671644703613412

参加者数は必ずしも多ければいいという訳ではありません。商談数が目標であれば、「参加者数×コンバージョン率」に分けられます。商談につながらない、本来のターゲットではない人々が入って人数が増えるより、本来のターゲットのみが参加し、関心に合った濃いディスカッションができた方が、最終的な商談数が上がる可能性が高いからです。

今回の場合も、申し込み400名の内、本来のターゲットである企業のマーケティング担当が100名だったとして、400名のままであれば、質疑応答の内容が、幅広いターゲットに合わせて拡散するところを、同じ課題を持つ100名に絞っていれば、質問がより個別具体になり、濃い議論の結果として、商談につながる数が10よりも伸びたかもしれません。

その辺を上手にやっているのがTwitter Japan社の「Twitterビジネス活用セミナー」です。こちらは法人としてTwitterのアカウントを持っていることなど、参加資格を明確に定義し、合致しない人はチケットをキャンセルすると明記しています。

※Peatix:Twitterビジネス活用セミナー(Twitter Japan)
このInstagramセミナーの場合も、案内文の表記をよりビジネスユーザー向けであることを明記した上、条件に合致しない人は運営側判断でキャンセルするなど、参加者の「純度」を高める仕掛けを用意しておいても良かったと思います。

また、1000円くらいの安い金額でいいので、有償化することも「冷やかし」の参加者をスクリーニングする有効な手段です。切実な課題を持った人であれば、それくらいのお金はなんの迷いもなく払いますが、ちょっと面白そうな話だから聞いておこうという程度の人であれば、わざわざお金を払おうとは思わないものだからです。


商品としてのオンラインセミナー

単体収益が目的のオンラインセミナー成功例

オンラインセミナー単体で収益を上げるのは、結構ハードルが高いです。なぜかというと、かなりの割合のイベントが無料か1000円以下の極めて安価な金額で提供されているためです。

収益を「参加人数×単価」に分解すると、比較的安価で人数を大量にする方向と、人数は絞って高付加価値なものを提供する2つの方向に分けられます。私の旧知の知人で、オフラインのワイン交流会やビジネス英会話スクールを提供していたLIFE DESIGN LABの戸田輝氏が、いずれもうまくやられているので、その事例を紹介したいと思います。

彼は、交流会やスクールなど、オフラインのビジネスが中心であったため、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言後、売り上げがゼロになったそうです。しかしそこから、マーケティングの基本に基づき、戦略的にオンラインビジネスを立ち上げ、ほぼ個人で、3ヶ月で1000万円の売り上げをあげました。その中から特徴的な事例を紹介します。

「大人数×低単価」のパターン

「コロナ影響下でオンラインビジネスで700万円売り上げた話」と題するオンラインセミナーを、参加費3300円で実施し、170名の申し込みがあり、約50万円の売り上げをあげたといいます

Facebookで「こんなセミナーやったら聞きたいですか?」という内容のポストをし、反応が大きかったので1時間程度でイベントページを立て、2週間ほどで実施したとのことで、1人で対応し、実働5時間とすれば、時給10万円です。

ここにはいくつかの重要なヒントが入っています。一般的にオンラインセミナーは著名な人の話を無料で聞けるものが、どうしても目立ちます。しかしそれらは認知やリストの獲得が目的であり、このような有償の単体収益目的のものと性質が異なります。

戸田さんは、伊藤忠商事勤務後、UCLAにてMBAを取得し、BCG(ボストンコンサルティンググループ)のコンサルタントやGLOBISを経て起業された優秀な方ではありますが、必ずしも多くのビジネスパーソンが知る著名な人というわけではありません。

それでもこれだけの人が申し込んだ最大の要因は、話をする内容が参加者の切実な課題に刺さったからでしょう。

4月の時点で既にオフラインのスクールを開催している人やセミナーの講師をしている人々は、既存事業での売り上げが一気に消滅し、元に戻る目処の立たない状況でした。

そういった人々にとって、自分たちと同じオフラインの売り上げがゼロになった状況から、一気に700万円の売り上げをつくり出した考え方と方法は、お金を出してでも知りたいものだったからです。

これはオンラインならではのモデルです。オフラインであれば、会場の手配があるため、企画してイベントを立てるまで数日はかかりますし、公開から実施までの集客期間は1ヶ月以上取ることが一般的です。

しかしオンラインなら、会場はZoomのリンクを設定するだけなので1分とかからずできますし、オンラインイベントだと、参加しやすさもあるためか、2週間程度でも十分集客できるのです。

また、物理的な会場の制約がないため、人数上限を柔軟に拡大できることもオンラインの利点です。現実的に170名の会場を借りるとなると、相当な固定費がかかりますが、Zoomであれば100名までならプロアカウントで月2000円で対応できますし、それ以上増えるなら、若干の追加費用を払ってアカウントのグレードを上げるか、YouTubeやFacebookなどのライブ配信で対応することができます。

運営スタッフも、オンラインの場合10人でも300人でも対応に必要な人数は変わりませんが、オフラインなら人数に応じて会場が広くなり、その分スタッフの追加が必要になります。オンラインは人数が増えても固定費はほとんど上がりませんが、オフラインは人数に比例して上がる、ということです。

また、イベント当日に参加できない人も、オンラインセミナーの動画と資料を提供する形式だったため、開催日時には参加できなくても申し込むこともできますし、事後にも申し込めるようにしていました。

オフラインのセミナーであれば、参加できない人が、動画と資料を同じ参加費で購入する人はかなり限られるでしょうが、元々がオンラインなら、あまり価値の劣化を感じず、それが価値あるものなら喜んで対価を支払う、ということのようです。このような販売形態が成立するのもオンラインならではだと思います。

「少人数×高単価」のパターン

戸田さんが実際にオンラインで売り上げを大きく上げたコンテンツが、ビジネス英語や個人起業のゼミです。人数は10〜20名程度ですが、単価が数十万円ほど、期間は3ヶ月程度で、毎週のゼミに加え、Facebookグループを活用したオンライン上のコミュニティで、参加者同士のディスカッションができるようになっています。1人30万円で10人としても300万円の売り上げになります。

このセミナーがなぜ成立するかというと、やはり「自分で起業する」「ビジネスの実戦で使える英語をマスターして、グローバルで活躍できるようになる」といった、「自分の人生を変えるための投資」になるものだからです。

起業については、戸田さん自身が個人で人を雇わず複数の事業を回している実績がありますし、ビジネス英語も、単なる英語のできる人が講師になるのではなく、実際に総合商社やグローバル企業でビジネスパーソンとして活躍していた人々が、ビジネスの現場で使える英語を教えてくれます。

単価の高い連続したセミナーの場合、オンラインの方が有利なことも多いです。

1回当たりの単価が高い分、参加者にとって参加できないことは大きな損失になりますが、オンラインであれば、仕事が開始時間直前まであったとしても、移動なく参加できるので、欠席リスクが下がります。

単価の高いものはどうしてもターゲットの母数が減ってしまいますが、オンラインならどこからでも参加できるため、地方や海外から参加者を獲得することができます。運営側からしても、固定費のかかる会場を抑える必要はありませんし、自身も自宅など好きな場所からゼミを運営できます。

また、少人数で連続して開催する場合、オンラインのデメリットも打ち消せます。オンラインの主なデメリットとして、講師や他の参加者との関係構築が対面より時間がかかること、それによりディスカッションやワークの効率が落ちること、などがあります。

しかし、少人数で複数回一緒に議論やワークを重ねていけば、対面よりは時間がかかるとは言え、オンラインでも十分な学びを得ることができるのです。

「中規模×中価格」のパターン

逆に、オフラインだと効率がよかったものの、オンラインだと成立が難しいのが5000円くらいの単発セミナーです。オフラインでは、参加費3000円のセミナーは比較的カジュアルなもので、引きの強い内容なら5000円で40人くらい来ることはざらにありました。

しかし、オンラインでは平均単価が低いため、5000円で集客しても、なかなか人が集まりません。また、その金額で40人程度となると受付を厳密に行い、きちんと参加費を払った人かどうかの確認をした方がいいのですが、これが前述の通りなかなか手間がかかります。

また、高い単価を払う分、参加者の期待値も上がります。その場合、「Zoomに入れない」などの問い合わせは、いかに参加者側の問題であっても、サポートする必要があります。

そのための要員手配などを考えると、安い金額にして期待値を下げるか、高い金額にして人数を絞り、サポートもできるようにするか、いずれかがいいでしょう。「売上=参加費×人数」であり、その総面積の最大化の観点で比較すると、1000円や3000円で100人以上の大人数を集める方が効率的と考えられます。

このように、オンラインとオフラインでは、適合するコンテンツやビジネスにおける経済合理性が若干異なるため、それに適応する必要があります。


ビジネスとしてのオンラインセミナー

営業・マーケティングのためのオンラインセミナーは、「認知」・「顕在顧客化」・「クロージング」という目的によって3段階に分けられます。なお、公開セミナーや研修のような学びを目的にしたものは後述します。本書はビジネス目的のオンラインセミナーを対象としているので、趣味やエンターテイメントに関するものは対象外とします。

1つ目は「認知」を目的としたもの、2つ目は「潜在顧客の顕在化」を目的としたもの、3つ目は「クロージング」を目的としたものです。それぞれ目的と対象が違い、オンラインセミナーの形式も異なります。マーケティングファネルに沿うとわかりやすいかもしれません。

①認知

認知を目的としたものは、とにかく多くの人に知ってもらうことがゴールです。よって、オンラインセミナーの形式も、そこそこ知名度がある人が登壇し、数百人が参加するものになります。より多くの人の目に触れ、興味を持ってもらい、拡散してもらうことが目的なので、自社の商材のターゲットではない人々が来てもいい内容になっています。

私たちがよくSNSで目にするものはこのタイプのセミナーです。来た人の一部が、「認知」から「興味・関心」の段階に移行すれば、目的が達成されたと言えます。

②潜在顧客の顕在化

次に、潜在層の顕在顧客化を目的としたものです。マーケティングファネルで言えば、「興味・関心」の段階から「比較・検討」の段階に移行させることを目指します。

この目的を達成するオンラインセミナーのターゲットは、認知目的の場合とは異なり、自社の顧客になる層になり、内容も絞られたターゲットの課題を解決するものとなります。

前述のInstagramセミナーでたとえれば、認知目的のセミナーであれば、著名なインスタグラマーや企業のSNSマーケティング担当者が登壇し、一般的な話をしてもらうのに対し、顕在化を目的とするならば、登壇者はあくまで自社のビジネスやサービスを理解している社内講師が望ましいでしょう。

ただし、必ずしも自社の商材を今買おうとしているわけではないので、自社商材の話ばかりをしてしまうと、参加者に「セミナーという名目で望まない商品を売り込まれた」と感じられてしまいます。

この段階の参加者には、「記事広告」のように、参加者にとって役立つ情報や学びがありつつも、最終的には自社の商材に興味を持ってもらうようなコンテンツの構成にすることです。

③クロージング

最後に、クロージングを目的としたものです。これは、ファネルの「比較・検討」段階から「購入」に至らしめるものです。

この段階では前段と異なり、参加者はすでに商材を買う気でいるので、最終的な決断を下すための判断材料を確認したり、不安材料を潰してもらうことを求めています。要は説明会や相談会です。

よって、顕在化目的のオンラインセミナーのような学びの部分があると「一般論はいいから、商材の詳細を聞かせてくれ」となるでしょう。

「顕在顧客化」は外注が難しく、企画の難易度も高い

3つを比較してお気づきの通り、これらは目的、ターゲット、ゴールが異なり、形式や内容も異なります。セミナー企画経験の浅い人が陥りがちなのは、顕在化目的のものを認知目的のように企画してしまうことです。

多くの人は認知目的の、著名人が登壇し、たくさん人が集まる、賑やかなオンラインセミナーを目にしているので、そのようなものを企画しようとしてしまいます。 私は仕事でセミナーの企画支援をしておりますが、よく聞かれるのが「どうすれば たくさん集客ができますか?」「誰に登壇してもらえば、人がたくさん来るでしょう?」という質問です。

そんな時、私が必ず聞き返すのは「何のために、どんな人を、どれくらい集めて、どう次につなげたいのですか?」という質問です。そのようなことを聞いてくる人は、必ずと言っていいほどこの質問に答えられません。

自社商材の購買が最終ゴールなら、逆算して、どんな課題を持ったどういう人が参加すべきターゲットかを考えます。

そして、ターゲットの課題認識にどのような価値を訴えてセミナーに参加する判断をしてもらうのか、セミナーの中でどのようなコンテンツを提供して、課題を解決してもらうとともに、次のアクションにどうつなげるのか、そういった目的と顧客化へのシナリオを明確にすることが大切です。根拠もなく「たくさんの人を集めたい」とは言えません。

この3つの中では「顕在化」のセミナーが最も難しいです。

認知目的なら、有名人に相応の謝礼を払い、宣伝広告を大量に行う物量作戦をすれば、多くの人の目に触れ、顧客になる可能性の低い人々も含め、多くの人が参加するでしょう。

ですが、クロージングまでの期間も長いため、お金や工数もふんだんにかけられ、成果が出るまで時間がかかっても大丈夫な企業でない限り、認知目的のセミナーをやろうとしない方がいいでしょう。

クロージング目的のものは単に自社商材の説明をして相談に乗ればいいのです。顕在顧客化のためのオンラインセミナーはそうはいきません。自社商材を買う可能性のある層だけがくることが理想なので、狙った層だけが反応することを目指します。

とはいえ、まだ明確に自社の商材を購入する意思があるわけではないので、入り口としてはあくまでターゲットの課題に対する解決策を提示し、実際に提供するコンテンツもそのような部分がなければなりません。

単にお勉強で終わっては意味がないので、きちんと自社の商材の購買検討につながるようにリードしなければなりません。なお、これは無理矢理に誘導するのではなく、そもそも自社の商材が課題解決になるような層を集めるということで、参加者にとってもベネフィットがある、相互利益の状態を目指すということです。

顕在化目的のセミナーが難しいのは、企画部分をアウトソースしにくいからです。認知目的であれば、賑やかしになる人を登壇者としてアサインして、綺麗にまとまったお勉強になる資料をつくり、派手に宣伝すれば、頭数を集めるという目的は達成できます。クリエイターがいる広告代理店や、「集客保証」をしてくれるメディアのセミナー事業部などは、そのような目的を達成するのには丁度いいでしょう。

しかし、顕在化目的のオンラインセミナーであれば、ターゲットはピンポイントで自社の潜在顧客であり、購買につながらない層が来てもあまり意味がありません。ターゲットとコンテンツを深く理解してるのは自社の人間に他ならないので、企画を丸投げすることは難しいのです。私はそのようなセミナーの企画を支援することが多いのですが、目的、ターゲット、コンテンツが整合するように、参加者視点に立ってアドバイスし、コンテンツの中身や企画の詳細はお客様に考えてもらっています。

本でたとえるなら、著者(クライアント企業)に対する編集者のようなものです。なかなか自社だけでは参加者視点に立てず、企画やコンテンツをまとめるのが難しいのです。

細かいことを知りすぎているがゆえに、枝葉を思い切って削ぎ落とせずわかりにくいコンテンツや案内文になってしまったり、自社商材に誘導したい欲が出て、こじつけがましい内容になりがちだからです。

顕在化目的のオンラインセミナーが有効な商材

説明しなくても売れるものならセミナーより広告の方がいいですし、単価が安いものは見合わないでしょう。そう考えると、オンラインセミナーで販売する商品は次の4点を満たすものとなります。

◉ 相手の要望に合わせた提案やインテグレーションが必要
◉ カタログ売りできないサービス
◉ 購入単価やLTV(Life Time Value) が高い
◉ スイッチングコストが高い商材

たとえば、前述のような企業向けのツールで、複雑な機能を持ち、相手に合わせた設定やインテグレーションが必要なものは、相手の要件をヒアリングして、疑問に答え、設定や組み合わせをしなければなりません。

当然単価は高いでしょう。コンサルティングや研修は、講師によって力量が異なるので、高い委託費を払う前に、まずは自分の目でどれだけ深い知識や経験があるか見極めたいと思う人も少なくないでしょう。

顕在化目的のオンラインセミナーは、今後ニーズが高まっていく

これまでも営業は課題解決だと言われ、マーケティング・オートメーションやインサイド・セールスなど様々なツールや手法が出てきて、たしかに一部はそれらによって、既存の対面営業が代替されてはきました。

しかし、依然として対面で信頼関係を構築し、クロージングなどの重要部分はやはり「顔を突き合わせて」相手を見極めるというのが、営業だけでなく、発注する顧客側の心情でもありました。
コロナによって対面の営業行為は大幅に制約され、展示会も当面は成立が難しそうです。開催されてもコロナ前のように気軽に行くものではなくなるでしょう。

認知はCMやデジタル広告で取ることができます。興味関心レベルから比較検討の入り口まではオウンドメディアなどの記事などでカバーできるかもしれません。

ただ、その先の具体案件化まで持っていくのにハードルがあります。ここの部分に

「顕在化」のセミナーがはまるのです。対面営業や展示会が過去のようにできないなら、そのようなオンラインセミナーのニーズは益々高まっていくでしょう。

「目的」「ゴール」「ターゲット」

実は、オンラインであろうがオフラインであろうが、セミナーをやる時に押さえな ければならないポイントはほぼ同じです。「目的」「ゴール」「ターゲット」を明確にし、ターゲットの課題解決になるコンテンツを提供するという基本ができていなければ、いかにオンラインのツールを使いこなそうと、効果は出ないでしょう。

また、ターゲットやゴールが具体化しなければツールも選べません。

参加者のスキルレベル、どんなアクションにつなげるためにどんなコミュニケーションをするかを決めることで最適なツールが選べるのであり、要件なくしてツールの比較サイトをいくら見ても意味はありません。

他のオンラインセミナーから学ぶ

もしまだオンラインセミナーに参加したことがなければ、近々で参加できるものにいくつか申し込んでみましょう。百聞は一見にしかずで、参加者になれば色々なことが見えます。

参加したことのある方でも、自分がやるならどうやるか、という目で見ると、より多くのことが見えてきます。参加までの手順は明確か、どこでどう迷うのか、オフラインで参加するのと比べどう感じ方が異なるかなど、「自分がもし提供側になるとしたらここを取り入れよう、ここをこう改善しよう」といった気づきを記録していきます。

あえて異なる主催者や形式のものにいくつか参加してもいいと思います。主催者の習熟度によって、やり方やわかりやすさも異なりますし、1人が話す、対談、パネルディスカッションなどの形式、音声での質疑やディスカッション、ワークの有無などにより、感じることも異なるでしょう。

見つけ方は簡単です。FacebookやTwitterのようなSNSや、PeatixやEventRegistのようなイベント管理ツール上でたくさん見つけることができます。

「オフラインでやっていたことをオンラインでやる」だけでは、単なる劣化版になってしまいます。オンラインの特性や機能に合わせて、コンテンツを最適化する必要があります。

たとえば、オンラインの方が集中力を保つのが難しいので、20〜30分くらいの間隔でこまめに質疑の時間を入れるとか、オンラインならチャットでリアルタイムに質問ができるので、そのように最初に気軽に質問を引き出すファシリテーションをする、といったことです。

大事なのは「実際にやってみる」ことです。以上のようなコツは、探せばいくらでも出てくるし、記憶の片隅に残っているでしょう。
しかし、ビデオ会議ツールで一度でも登壇してみると、次々と戸惑うことに直面します。参加者の顔が映ったウィンドウでプレゼンテーションの一部が隠れてしまう、参加者のリアクションがわからないなど、オフラインの場では起きない様々なことが起きます。

その都度リアルタイムで対処しなければならないので、頭で理解している、思い出せばできる、というレベルでは、セミナーが数分間中断する羽目になり、参加者満足度を著しく下げてしまうかもしれません。

これらは、あらかじめ正しいやり方を理解し、できるようにして、問題の発生を未然に防ぎ、発生しても素早く的確に対処できるようにすることで解決できます。そうなるためにはやはり正しく場数を踏むしかないのです。

ツールをバージョンアップする

試行錯誤しかないとはいえ、基本的な機能や使い方は押さえてやる方がいいでしょう。私も最初はビデオ会議ツールとライブ配信ツールの違いも分かっていなかったので、最初は技術に詳しい人に教えてもらいました。

「必要は発明の母」で、常に新しいツールが出てきますし、機能も常にアップデートされていきます。それはそれでいいことではあるのですが、情報収集という点では難しくなります。

ある時点で網羅的で役に立つサイトであっても、2〜3ヶ月も経てば陳腐化するだけでなく、間違った情報になってしまうことも珍しくはありません。

私の場合、情報や人が集まる仕組みをつくりました。Facebookで「オンラインイベント&リモートワークの知見・情報をゆるり共有」というグループを立ち上げ、最新の情報をシェアし合い、参加者から上がった質問にわかる人が答えるという、知見共有の場をつくりました。

オンラインツールの特徴として、ホストは参加者の画面を見ることができないので、ツールを試すときは参加者役になってくれる協力者が必要となります。

私も当初そのような協力者が必要だったので、前述のFacebookグループで、のブレイクアウト機能を一通り試したい人を集めて「合同自主練」を開催するなど、互いに実践しフィードバックしあう機会を多くつくるようにしました。

「正解」は人により異なるし、運動と同じで頭で理解するだけでなく、体で覚えなければならないので、自分なりに考え試行錯誤を重ねるしかない、ということです。


今こそオンラインシフトのチャンス

なぜ今オンラインへの取り組みを始めるべきかというと、今はまだほぼ全員が横一線のスタートラインだからです。日本においてはほとんどの人がオンラインセミナー初心者と言っていいでしょう。

よって、早く移行を始め、短期間でより多くの試行錯誤を効果的に繰り返した人が優位に立てます。自らが実践者になれば、関係や情報も集まってきます。特にこのような新しいニーズが立ち上がった初期は、新しいツールが次々と出てきます。

たとえば、対面でのイベントができなくなりZoom飲み会が普及し始めた時、ツールの限界で「居酒屋やパーティー会場での交流のように、話し相手を自分で自由に変えることがしにくい」といった課題がありました。

そういったニーズに応えるように、Remoやspatial.chatという固定席や会場を自分で自由に移動できるような海外発のインターフェースのオンライン交流ツールが注目されました。初期にオンラインの取り組みを始めた人には S N S などを通じて情報が入り、「Remoを試す会」のようなイベントを、様々な人が次々開催し、人によっては実際に使ってみて気づいたことをnoteなどにまとめて発信していました。

まだ取り組んでいる人が少ない段階なら、実践して気づいたことをまとめるだけでも価値があります。私も何本か記事を出しましたが、早い段階なら簡単なものでも結構読まれますが、ある程度記事が出てきた段階になると、詳細な記事でもそれほど見られなくなります。

時間が経つほど、新しいツールやテクニックが開発され、経験の蓄積がある人と無い人では、キャッチアップにかかる労力が異なります。2020年3月くらいからオンラインセミナーを始める人が増えましたが、まだまだキャッチアップできないほどの差はついていないので、今から始めても遅くはないでしょう。


『オンライン・セミナーのうまいやりかた』ご購入

もし上記内容ご興味お持ち頂けたら、ご購入検討賜れれば幸いです。

【著者略歴】 高橋龍征(たかはし・たつゆき)

WASEDA NEO プロデューサー
conecuri 合同会社 代表社員
情報経営イノベーショ ン専門職大学 客員教授

早稲田大学第一文学部哲学科卒業、(株)CSK(現SCSK)で営業、経営企画に従事後、 早稲田大学大学院にてMBA 取得。ソニーやサムスン電子での事業開発マネジャー等を 経て独立。デジタルハリウッドのアクセラレータやFintech ラボ立ち上げ等に従事後、 テック企業の共同創業・経営(取締役COO)を経て現職。

早稲田大学の社会人教育事 業WASEDA NEO 開校に伴いプロデューサーに就任。ベンチャーやファイナンスの早 稲田大学OB 会(稲門会)事務局や地方創生NPO 理事など、複数の場の運営に携わり、 年間200 件以上の企画を実施する「場づくり」の実践家として活躍。

直近ではオンラ インシフトに関する知見共有のオンラインコミュニティを立ち上げ、4 ヶ月で3,000 人規模に拡大し、様々なオンライン化の試行をしている。

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