ハウツーは、裏を読まないと役に立たない
コミュニティや継続イベントを立ち上げる相談を受ける際によく感じるのは、「大して努力せずに、自分の取り組みが多くの人に知られ、集まってほしい人々がどんどん集まる、誰でもできるやり方」を教えて欲しがる人が多いことです。
もちろん、そんなことをストレートに考えている人はいませんが、掘り下げていくと、要はそういった「正解」がどこかに存在していて、誰か教えてくれるのではないかと、無意識で考えていることに気づきます。
現実には「誰にでも」「確実に効果がある」「具体的なHow to」などなく、以下のようなものだと考えています。
1)目的・リソース・制約により=人により最適解は異なる
2)大事なのは正しい考え方で、自分に合った最適解を導き出すこと
3)うまくいく確率の高いやり方はあるが、確実に効果が出る方法はない
4)確率を上げるには、実行を通じた仮説検証・改善・習熟の蓄積が必要
要は「うまくいくまで自分で考えて試せ」という、誰でも言える、言われなくても分かり切っている、月並みで夢がない話です。
伝え手の「割り切り」の裏を読む必要
「自分で考えたり試したりの努力をせずに、どこかに正解があり、誰かが教えてくれると思っているから上手くいかないんだよ」と言ったら身も蓋もないので、汎用化した考え方や枠組み、実践的なTipsや実例などを織り交ぜますが、それらは、読んでもらい、伝わるようにするために、「効果が出るかは状況による」という本音を割り切っているのです。
何のためにそれをやるのか、どういう本質に基づき、どう考えてそのやり方にしたのか、それが成立する前提は何なのかということを、自分なりに考えず機械的に真似しても、安定して成果は出ないでしょうし、より良くする工夫も思い浮かびません。
何より、機械的なことを無目的に続けられるほど人の精神力は強くないので、続けられないか、そもそも始められもしないというオチになりがちです。
そうならないために考えるべき「裏側」について書いてみます。
目的や理由を考える
例えば「会ったらすぐに御礼メールを送るべし」のような、なんとなく多くの場合当てはまりそうなことを言うことは簡単です。
しかし、目的や理由まで考えるとどうなるでしょうか。
・会ってすぐなら自分のことを覚えている可能性が高い
・覚えている人からの、会ってすぐの連絡は不自然ではない
(前に1度会っただけの人からの突然の連絡は不審)
・実は挨拶メールを送る人は少ないので、送ると印象に残る
・1度メール等のやりとりをしておくと、時間が空いても話しやすい
つまり、将来的にやりとりができる関係のベースがある人を増やすために、相手が覚えている内に挨拶メールを送る、ということになります。
本質を考える
だからと言って、合った人全員に同じ文面のメールを送ることは、必ずしもいい効果をもたらさないでしょう。会ったばかりのよく知りもしない人間から連絡されることを好む人ばかりではないからです。
相手が自然かつ前向きに連絡を受けてもらう可能性を高める方法として、相手にとってGiveとなる宿題を見出し、連絡の了解を取り付けておく、というものがあります。
1)話す段階での仕込み
・相手のやっていることや関心を把握する
・自分についても相手の関心に合わせて端的に伝える
・相手に役立てることの具体案を見出し、口頭で端的に提案する
→相手に役立つ「宿題」を作ることで、連絡する必然性を仕込む
・事後に挨拶の連絡を送ることまで了解をとっておく
2)文面の工夫
・話した内容に応じた、個別具体の内容
・相手への「おみやげ」まで入っている
例えば、スポーツテックで起業しようとしている、ということであれば、スポーツ専門メディアの関係者を知っているので、よければ紹介しますよくらい話しておき、そのメディア関係者に興味のほどをすぐに聞いた上で、事後に御礼メールで「スポーツテックの話応援します。メディアの方もぜひお話し伺いたいとのことで、よろしければ紹介させてください。」くらいの内容を入れるようなものです。
単にメールをやりとりする以上のアクションにまでつなげられれば、関係のベースより強くなります。「会ったらすぐお礼メールをする」と機械的に対応していると、そこまで考えが至らなくなります。
前提を考える
知名度や立場のある人や見目麗しい人は、「普通の人」より多く連絡をもらいます。ある上場企業の創業社長は、交流会で100枚名刺を交換するとほぼ全員から連絡が来るが、全てに返すこともできず申し訳ない、と言っていました。
その場合、連絡しても記憶に残らないかもしれないし、何かアクションを求めるような「重い」内容のものは、むしろ迷惑に思われることでしょう。相手が本気で頼むものでない限り「宿題」など作らない方が良いかもしれません。
相手によっては、初回は敢えてメールしない方が正解かもしれません。
動機を考える
やり方、考え方は分かったとして、自分がそれをやりたいか、何のためにやらねばならないかが無いと、結局は始められないか、続かない、というオチになります。
自分が心から成功させたい事業で起業した人なら、何十人に断られようが、投資家や応援者を探して動き続けられるでしょう。単にfacebookの「友達」を増やしたいだけの人では、そんな面倒なことは続けられないと思います。
ハウツーは「結果」でしかない
見てすぐ分かるTipsは、何かを実現しようと試行錯誤した結果を、分かりやすくキャッチーにしたものが多く、目的や前提、本質や全体観などを考えないと、状況に応じて、長期的に役立つ方法論として理解はできないものです。更に、理解するだけではなく、自分の状況に合わせて適用し、実践して、成果を出せなければ意味もありません。
伝えることで、伝わる表現が洗練される
人が導き出したハウツーの「結果」はヒントでしかなく、自分で考え、実践して、自分なりの「成果の出るやり方」を導き出すしかないと思います。
自分のイベントやコミュニティに来てほしいなら、必要以上に案内分などをPCでこねくり回しても意味はなく、リアルなターゲット層を直接口説くのが最も近道でしょう。
目の前のリアルな人に伝えようとすると真剣に考えます。真剣に提案すれば、真剣に返してくれる人も多く、本当の現状、課題、ニーズを吸い上げられます。
自分が本当に良いと思っていないものは人に勧められません。自分の本気度も試されます。
伝えることを続ければ、ターゲットに端的に伝わり、望む反応を引き出せる可能性の高い表現に洗練されていきます。自分が話しててしっくり来て気持ちが乗るようになるでしょう。
テキストで何度も推敲するより、何人にも何人にも伝え続けたことで、自然に伝わり共感でき、ターゲットがアクションを起こしてくれる表現が洗練されるというのはよくある話です。
真理は月並み
なんとも夢がない月並みな話ですが、気持ちが折れず長く活動を続けている人は例外なくその辺をきちんと踏まえているし、議論や情報交換をしていても、その前提が共通しているので、伝えたいことが正しく伝わる感じがします。
どこかにある正解を求め、自分の見たい世界を見せてくれる教祖を盲信することは楽しくラクですが、つまらなくて辛い道を敢えて選ばなければならないのではないかと思います。
ご紹介:場づくりの考え方を本にまとめてみました
上記のような考え方に基づき、方法論を書いてみました。「オンライン」としていますが、大事なことの8割はオンラインでもリアルでも変わりません。
「うまいやりかた」というハウツーぽいタイトルは出版社がつけたもので、これはビジネス的な割り切りです(笑)
それを変に真に受けず、自分で思考・試行してね、というのが本稿を書いた意図でもあります。
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