区分所有法 第28条(委任の規定の準用)

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条文

(委任の規定の準用)
第28条 この法律及び規約に定めるもののほか、管理者の権利義務は、委任に関する規定に従う。

解説

 委任とは、当事者の一方が法律行為を相手方に委託し、相手方が承諾することである(民法643条)。法律行為とは、売買や賃貸借、遺言などの法律効果が得られる行為であるが、管理者は、管理組合から法律行為ではなく「事務の委託」を受託する場合がほとんどであるので民法第656条の準委任と考えられる。準委任も委任の関係を準用する(民法656条)ので、管理組合と管理者の関係は委任の関係に従う。

 民法第644条にて、管理者は善良な管理者の注意義務(善管注意義務)を負う。

 管理者はその業務を復委任するには、管理組合の許諾が必要(民法第644条の2)。標準管理規約では、復委任は理事会決議が必要。

 管理者は年一回集会において事務報告しなければならない(第43条)。民法第645条では、いつでも委任事務の報告をしなければならないとされているが、この報告は、区分所有者1人からの要請ではなく、管理組合から要請された時はいつでも報告しなければならないと解されている。

 管理組合(法3条団体)は法人格を持たないため金銭の受領は出来ないが、第26条により管理者は共用部分の保険金の受領や損害賠償金、不当利得の受領ができるが、それらの金銭は管理組合に引き渡さないといけない(民法第646条)

 委任は原則無償なので、管理者の報酬は規約で定めないと受領できない(民法第648条の特約は管理者においては規約と解されている)

 管理者が管理事務を行なった時にかかった経費を管理組合は負担する(民法第649条、第650条)

 委任契約は双方いつでも解除できる(民法第651条)ので、管理者はいつでも辞任でき、管理組合はいつでも集会で解任決議(第25条第1項)ができ、各区分所有者は管理者に不正があるときなどは裁判所に解任の請求ができる(第25条第2項)。

 民法第653条により、下記に当てはまる場合は管理者はその職を解かれる。
一 管理者の死亡、管理組合の消滅
二 管理者の破産、管理組合の破産
三 管理者が後見の審判を受けた時

 民法第654条により、管理者は辞任したあとも次の管理者が決まるまではその責任を負う。ただし、委任自体が信頼関係をもとに成り立っているため、管理者が解任されたときは、その時点で職務は終了する。

参照条文等

民法 第643条(委任)
 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
民法 第644条(受任者の注意義務)
 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
民法 第644条の2(復受任者の選任等)
 受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。
2 代理権を付与する委任において、受任者が代理権を有する復受任者を選任したときは、復受任者は、委任者に対して、その権限の範囲内において、受任者と同一の権利を有し、義務を負う。
標準管理規約 第38条(理事長)
5 理事長は、理事会の承認を受けて、他の理事に、その職務の一部を委任することができる。
民法 第645条(受任者による報告)
 受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。
区分所有法 第43条(事務の報告)
 管理者は、集会において、毎年一回一定の時期に、その事務に関する報告をしなければならない。
民法 第646条 (受任者による受取物の引渡し等)
 受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡さなければならない。その収取した果実についても、同様とする。
2 受任者は、委任者のために自己の名で取得した権利を委任者に移転しなければならない。
区分所有法 第26条(権限)
2 管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第18条第4項(第21条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。
民法 第647条(受任者の金銭の消費についての責任)
 受任者は、委任者に引き渡すべき金額又はその利益のために用いるべき金額を自己のために消費したときは、その消費した日以後の利息を支払わなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。
民法 第648条(受任者の報酬)
 受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。
2 受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない。ただし、期間によって報酬を定めたときは、第624条第2項の規定を準用する。
3 受任者は、次に掲げる場合には、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
一 委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったとき。
二 委任が履行の中途で終了したとき。
民法 第624条(報酬の支払時期)
2 期間によって定めた報酬は、その期間を経過した後に、請求することができる。
民法 648条の2(成果等に対する報酬)
 委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合において、その成果が引渡しを要するときは、報酬は、その成果の引渡しと同時に、支払わなければならない。
2 第634条の規定は、委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合について準用する。
民法 第634条(注文者が受ける利益の割合に応じた報酬)
 次に掲げる場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなす。この場合において、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。
一 注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき。
二 請負が仕事の完成前に解除されたとき。
民法 第649条(受任者による費用の前払請求)
 委任事務を処理するについて費用を要するときは、委任者は、受任者の請求により、その前払をしなければならない。
民法 第650条(受任者による費用等の償還請求等)
 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。
2 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。この場合において、その債務が弁済期にないときは、委任者に対し、相当の担保を供させることができる。
3 受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる。
民法 第651条(委任の解除)
 委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
2 前項の規定により委任の解除をした者は、次に掲げる場合には、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
一 相手方に不利な時期に委任を解除したとき。
二 委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除したとき。
区分所有法 第25条(選任及び解任)
 区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によつて、管理者を選任し、又は解任することができる。
2 管理者に不正な行為その他その職務を行うに適しない事情があるときは、各区分所有者は、その解任を裁判所に請求することができる。
民法 第652条(委任の解除の効力)
 第620条の規定は、委任について準用する。
民法 第620条(賃貸借の解除の効力)
第620条 賃貸借の解除をした場合には、その解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。この場合においては、損害賠償の請求を妨げない。
民法 第653条(委任の終了事由)
 委任は、次に掲げる事由によって終了する。
一 委任者又は受任者の死亡
二 委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。
三 受任者が後見開始の審判を受けたこと。
民法 第654条(委任の終了後の処分)
 委任が終了した場合において、急迫の事情があるときは、受任者又はその相続人若しくは法定代理人は、委任者又はその相続人若しくは法定代理人が委任事務を処理することができるに至るまで、必要な処分をしなければならない。
民法 第655条(委任の終了の対抗要件)
 委任の終了事由は、これを相手方に通知したとき、又は相手方がこれを知っていたときでなければ、これをもってその相手方に対抗することができない。
民法 第656条(準委任)
 この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。

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