【朗読】雑詩草子（動画版） 第一集
雑詩草子（動画版）第一集
声：VOICEVOX:冥鳴ひまり
詩・写真・編集：こんちくけ
九つの自作詩を合成音声で朗読し写真を組み合わせながらひとつづきの動画にまとめました。
味方だ 0:12
まだ泳げるかな 1:00
私は毎日死んでいる 1:39
寄生虫 2:28
乾燥ナメクジ 3:22
もう夕方の空に 4:12
毒苺 5:25
この草は 6:04
空 6:37
＜収録詩参照＞
「味方だ」
夕日に向かって鉄塔が
架線を引き千切り
引き摺り
歩いて行く
もううんざりだったのだろう
台地に残した引っ掻き傷を
しきりに振り返り確かめながら
国境よりも太い境界線を越えて行く
川は味方で
海も味方で
山も空も味方だ
「まだ泳げるかな」
もう何年も泳いでいない
浮かんでみたり
沈んでみたり
水飛沫はあまりたてずに
そのひと搔きの向こう側
まだ泳げるかな
忘れていたい事もあるかな
思い出したい事もあるよね
浮かんで気付いた水の匂い
沈んで見上げた空の色
「私は毎日死んでいる」
私は毎日死んでいる
肺の中で
指のはざまで
小さな単位の配列の上で
私は毎日生まれている
灰の中で
夢のはざまで
些細な事象のもつれの上で
鼻の頭で陽を感じ
掌の皺であなたを感じ
そうして私は死ぬだろう
そうして私は生きるだろう
私のかけらは
毎日の
永遠の中にあるだろう
「寄生虫」
曼珠沙華の球根が透けて
しとしと滴る堰に寄生虫
人人人
選ばれぬ虫は落胆し
歪な貯水池に溜まる
日々に皹、けれど決壊しない
闇夜に漣が立つ
約束は響かない
寄生虫が次の宿主を探し始める
人人人
「乾燥ナメクジ」
目薬を差せば差すほど
目ヤニが硬い結晶に変わる
日差しも受け取り瞼から
細かいカケラがキラキラ落ちる
気を付けて、
擦ると傷つくよ、
角膜。
洗ったほうがいいよね、と思い
洗面所へ歩く
私のうしろに
乾燥ナメクジが通った跡の様な
琥珀色の道ができる
子供達が辿ってくる
なんだか、遠い
「もう夕方の空に」
母さん 父さんの所 行くから と 昼下がり
みいちゃん と はあちゃん 連れて
早く歩きなさい と 言う 母さん
だって ジョンが ジョンが と みいちゃん
紐を 引っ張り 引っ張り するが
犬のジョンは 片足けんけんで 引っ張られ 引っ張られ
ジョンが ジョンが おしっこ してるから
かわいそう かわいそう と みいちゃん と はあちゃん
わかったから 母さん お花買うから 先に行くからね と
はあちゃんは ちょっと 待ってと
母さんの スカート 引っ張り 引っ張り
はあちゃんも おしっこ と
どうして 出てくるときに してこなかったの と 母さん
だって だって と はあちゃん
もう お花やさんで おトイレ 借りるから と 母さん
はあちゃん 連れて この お花ください
早く はあちゃん おトイレ 行ってらっしゃい
でも 誰か 入ってる と はあちゃん 泣いて
だったら だったら
ジョンと 一緒に してらっしゃい と 母さん 叫ぶ
もう 夕方の空に。
「毒苺」
白黒遮断機がおりる
紅白遮断機があがる
苺うまい、毒かな
なびくの？なびかないよ
毒苺食べて春
何も知らないふりの春
線路の隙間に嵌らないよう
輪郭を震わせながら渡った
「この草は」
其処はカと
其処はコと
決めつけるでもなく其の道と
野との境で滲む草
草は陽炎のようにたちのぼる
たちのぼる
たちのぼる
何処に向かうでもなく
この草は
「空」
思いわずらい手足は出さない
しずくが落ちる、鼻の頭に
そして乾燥、蚊がとまる
綺麗なことを願っても
からっぽな私
他にはなんにもしていない
してない頭が蒼天に吹かれ
してない心がわずかに揺れた
私をおおらか包むもの
私に投げかけ開くもの
空は
夢の中より現実の方が綺麗
たぶんあってる
https://note.com/conchiqueke/n/na7454ed9427a
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