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2023年11月の記事一覧

肋骨

肋骨の隙間を小鳥たちが渡る
気管支にとまり騒がしくさえずる
心音が輪郭をあたたかく縁取ると
やっと寄り添い静かになった
ようやく私も安心だ
胸が少しだけ痛いまま眠ろう
かれらの寝言を聞きながら
空を翔ぶ夢でも見よう

扨(さて)

さて其の儘で然もあさって
水汲み上げると
並び順番最初の椋鳥は尾羽抜き
私は死にましたと言った
炎立ち上り象徴燃え尽きると
本当は死んでませんと言った
頭が割れて鳥の芯が見える
たくさんの芯
真の様な者たち
深い息使い
一羽だけではなかったその鳥
取り鳥
空に自分を投げる
落ちてこない鳥だから鳥らしく
枯葉の様に浮かぶ青い空に

三毛猫2

座った目をした政治家が
前進せよと言っている

座った目をした坊さんが
信じなさいと言っている

座った目をした酔いどれが
俺は駄目だと言っている

座った目をした群衆が
吊るし上げろと言っている

潤んだ瞳で三毛猫が
静かに私を見上げている

行進

誰かが向こう側から硝子を叩く
私はその破片を浴びた
とてもきれいで血生臭い
水際をふらふらと彷徨う亡霊
その行進に私も加わっている

問うという意味

記憶を耕す
変える、ではない
掘り起こす
種を埋める
水をやる
時は本来構造的で静的で
流れ出すまでは存在について
問うという意味そのものがなかった
眠れた?
それは動いている
止めて。
それは意味のない号令
未来を見る?
それは動いている
知りたくない。
それは意味のない号令
非線形な時を開く

色々

空き地の先の空っぽな空に明かりが灯る
朝と夕方の間に挟まれた
突っ張り棒のような一日
始まるような終わるような
おどおどと行きつ戻りつ少し光るような雲は
洞窟天井のような
重鈍く塞がれた円蓋に描かれていたんです
宇宙が空間じゃなかった頃の観念が
未だに降らせる苦しみ、あれやこれや、色々

仄か

憂鬱の明るみ月明かり仄か
縮んだ心少し錆の味がする

おまじない

その小さな砂糖の塊を凝視していたら
中心あたりが輝いたような気がした
子猫を引き連れたこの子
これは右
これは左
何だかわからない破片を塊の脇に配置する
子が身を乗り出しておまじないを唱えようとしたら
もう光ってるよと子猫が言った
先に見てた人がいたんだねと子が言った
ごめんなさい、私だ