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2021年7月の記事一覧

ホコリ

風が雪崩れてタンポポの種のような微細な粒子が生まれた。それぞれが勝手にくるりとまわって特異点に落下した。ひとりで生きているつもりの、他人を許せないだけの、風が再び巻き上げてくれてはじめて後悔の涙を流す、それは私のようなホコリのようなものだった。

書き留める

透明なわたしは書き留める。
そうすることで体験は現実にかわる。

ノートを閉じればわたしは透明に戻るから、
すかさずまたノートを開く。

透明なわたしは、また書き留める。
そうすることでわたしは現実にかわる。

奇妙な身体

グミを前歯で噛み切って舌でその跡のなめらかさを確認する。
当たり障りの無い感触が返って危機感を煽る。

わたしの耳は生えている。
奇妙な身体、
やがて恐怖が苦しみの中に投げ出され腐り始める。
朽ち果てたあとに残るものは何だ?

ぼそぼそ

わたしのきょうはへんな感じ
そんな感じもあるでしょう
そんな感じもわかるでしょう
そんな感じがわからない
そんなあなたは感じわるい
ぺたぺたきこえるあしおとが
からすの黒と共鳴したり
ぼそぼそと
しゃべる

バウムクーヘンは甘い
シマシマの濃いところが旨い
そんな気分もあるでしょう
そんな気分もわかるでしょう
そんな気分がわからない
そんなあなたは気分わるい
ぱたぱたきこえるかけあしが
ゆうひの赤

もっとみる

しばらく我慢で読みすすめるか
このまま閉じて忘れるか
小さな日々の折り目が飛び立つ
ページの隙間に
電球色の空に

琥珀

哺乳類の愛情が腰掛けて窪んだ草むらの中でかけらを太陽の光にかざすと閉じ込められていた空洞が過去へと崩れ落ちた

樹液 の
中 に閉じ込められた 小虫=
『比「喩」が』 息と息と の
間へ降りて行く 。結果/
それ を、きれい だ
と、言っている誰 かだった

、硬く断 片な 琥珀
、琥珀色。

追い風

温泉町は蒸気を激しく吹き上げながら
観光道路を通行止めにした
嵐が西の空から湯船に手を突っ込んで
反時計回りに掻きまわしたせいだ
これから嵐に向かいます
嵐はくうきを吸い込んで
つまり必ず追い風だ
そのまま西へ向かいます
嵐の空のその先の
やさしくしずかな夕日にあいたい

木漏れ日

こみちのわずかな傾きを
じっとにらんでいる子供
木漏れ日を浴びて
少し冷たい風に吹かれて

ペンネームあわくってまんぷく

ペンネームあわくってまんぷくさんからの投稿です。

おつぼねつつぬけつつもたせ
からぶりからぶきからまわり

ひどいです。

立体

知れば知るほど離れていく
思えば思うほどすれちがう
それでもいつかうつろって
ふとしたはずみで次元をのぼる
線の中に、面の中に、
わたしの心臓の立体の中に

だれかのことば

だれかのことばを貼り付けるたびに
わたしの世界が狭くなる
こんなはずじゃなかった
いつでも世界はもう少しだけ広い

ネグセ

復誦してみる
朝のわたしの頭に生える
ネグセのクセをひととおり

連結器

吊革が揺れる度
、顔が夜空にへばりつく。
列車の窓の硝子が割れて
、雨水が青い糸をひく。
三日月だ。
刀のような
、三日月だ。
最終列車の最後尾。
闇に連なる白い残像。
、連結器。
、連結器。
、連結器。

凪ぎ

荒波にガラス板を沈めたら
凪ぎがあらわれ月を映した
平らの上で眠りたい
只々平らなこの世の上で