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2021年5月の記事一覧

咳払い

絡まりついた慣習の束
それに纏わる感情の切り口
取り出せば意味を失い
並べればただ乾き切り

霞のような青みを抱く
その奥深くで
誰にも気付かれないような小さな咳払いをした

うぶ毛

怠惰で急進的な団体の一群が、うぶ毛を剃って行進している。切り捨てられたうぶ毛は足下できらきらと光りながらそよ風に吹かれ、やがてかれらを追い越して行った。無知なかれらの心は脈を打ち、今でも遅延の原因を探っている 。

五つの原則

<五つの原則>
 1、七五三拍子(漸次的変化過程の場合を除く)。
 2、位相変異のない反復過程は奇数回。
 3、自由な断面、或いはCode。
 4、響を重視したContext。
 5、晴耕雨読、逃足迅速。

桂馬ステップ

ぐらりときてるが構わず跳ぼう 
次の一歩は桂馬ステップ

蒼い水

深く傷付いた蝙蝠傘の
剣先が撫でる。
マンホールの蓋、暗い溝。
埃が溜まって、
石ころが嵌って、
今は波紋で満ちている。
冷たい水、蒼い水。

面倒臭いな生霊

とぼとぼとついてくる
横飛びしてもついてくる
面倒臭いな生霊

とぼとぼとついていく
大きく開けた世界が怖くて
追い越す勇気がない
面倒臭いな私の生霊

板チョコサーファー

甘くて苦い 板チョコサーファー 
塩辛い波 軽々と 

何かにしがみつくためだけに飛び跳ねる蚤。あと先の事は考慮にいれずひどい姿勢で着地する。そんなに高く飛べるなら他の役にも立つものを。

何かにすがりつくたびに払いのけられる蚤。宙を舞っている間にだけ見えたきれいな光。光を見るためだけに跳んではみないか。

子猫が可愛く鳴くのだが
闇に紛れて見つからない
水飴のように
漆のように
考え深げで
綺麗な艶で
子猫が優しく鳴くのだが
そこには熱があるばかり

ナマモノ

ぼくはナマモノ生きるもの
すぐに腐るし鼻につく

時だけ載せてゆるゆると

乗り込もうと走り寄った目の前で、
扉は溜息混じりに何かを呟きながら、
閉じて、
たくさんの言い訳と私を、置き残したまま、
動き出した。
列車が、
時だけ載せてゆるゆると。

失いたくないものは悲しみ

苦しみを背負っていたら
悲しみを置き忘れてきてしまった
かわりに誰かが泣いていた

心があれば寄り添ってくれる
失いたくないものは悲しみ

気持ち

この子の中を流れる
あの子の気持ち
気持ちの中を気持ちは流れる

冷やし中華とローストチキン

二玉茹でて 一人で食べた
インスタントの 冷し中華そば
何も具が無い 今年の夏に
水を浴びせて 冷まして食らえ 

チョコレートを包んでいた銀紙で
あなたがつくった折り鶴は
今もここで並んでいます

都市がつくった夏や冬や
洗面器が吸い込む水の音なんかと一緒に
あの窓辺の本棚の上で並んでいます

両足買って 一人で食べた
コンビニ製の ローストチキン
かなり寂しい 今年の冬に
すこし長めに チンし

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