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【経営課題】30代社員が会社を見捨てるとき

「なんでこんな風になっちゃったんだろう」

ある老舗専門商社の幹部が漏らした言葉である。
この3年で10人いたチームメンバーのうち、5人が離職してしまったらしい。
全て30代前半で、在職3年以内というプロフィールである。

筆者はこの後、離職した5人から離職理由を聞き出すことに成功した。
様々な発言があったが本質的な理由は1つであった。

「YESマン幹部達の存在」

これが本質的な理由である。

幹部が全てYESマンで固められる悲劇

この会社は典型的なオーナー企業であり、トップであるお爺ちゃん社長が昔からキレキレで、もう何十年も社長に君臨している。その為、そのお爺ちゃんの意思を反映する為の組織が形成されている。
つまり、幹部は誰もお爺ちゃん社長に逆らうことができず、全てYESマンで固められている。社長が独裁的な組織と言ってしまえばそれまでであるが、逆に幹部は意思決定を全て社長に任せてしまっている組織とも言うことができる。

この幹部達は確信犯であり、ある種の心地よさを享受している。
そしてこのYESマン達には何の力もない
従って、下からの改善要望やその他の意見も100%揉み消される。
揉み消すしかないのだ。自分には何の力もなく、どうすることもできないのだから。
そして、それが続くと「嗚呼、この組織ダメだ」となる。30代退職者達から伺った具体的な理由は以下の通りである。

①YESマンの集まり×定性評価の悲劇

この組織は、数字で競い合うとギスギスするので、という理由で基本的に
定性評価が基本となる評価制度を敷いていた。
そうなると当然、この人が良い、悪いはなんとなくの印象の様なものになる。

何の力もない幹部たちがどう思おうが、詰まるところ社長がどう思うかだけである。役職が下の人間は社長と関わることがあまり無いので、何がどう評価されれば昇進ができるのかは全くわからない。
更に幹部たちが自分たちを押しのけて部下を推薦すること等無い。
それは既得権益が脅かされるということで想像に難くないだろう。

②YESマンの集まり×社長の高齢化の悲劇

全責任を負って意思決定をしているお爺ちゃん社長が高齢化して、昔ほどの冴えが無くなってきたとき

「もう引退してください」

と進言する幹部が誰もいなかったらどうだろう。
お爺ちゃん社長がボケてきて、魔訶不思議な経営戦略を立てたらどうなるだろう。当然、幹部には何の力もないので、意味不明な施策を一生懸命実行するしかない。

このヤバさが分かるだろうか。
一般社員はバカではない。幹部たちのように既得権益があればそれでもいいが、若手の社員には何の得もない。こんな意味不明なことに加担しているんだ・・・とモチベーションも何もあったものではない。さっさとまともな組織で頑張ろうと思うのが普通である。

③YESマンの集まり×社長の施策が外れまくる悲劇

②と内容は似通っているが、結局お爺ちゃん社長が何を思いつくかによって動きが大きく決まる。
どこかで本を読んできて「あーこれ使える」と思えばすぐに形にせざるを得ない。経営戦略も何も、社長の思い付きだけかよ・・・となる。
そして、それが当たっていれば(儲かっていたり、人の為になっていたりすれば)まだ問題が少ないが、何のためにこんなことをやっているんだろうとなれば、それまでである。

まとめ

トップが天才という組織は少なくない。大手ではソフトバンクやユニクロ等もその類だろう。
だが、トップのパフォーマンスが落ちた時何かが起きる。
立教大学の中原教授とパーソル総研の研究によると、30歳前後と40歳前後で
モヤモヤを感じる方が増えることが示されている。そして同研究によると
離職は1つの理由では起こらない、スイスチーズであると紹介されていたが、幹部がYESマンという現象は、このチーズの穴を一気に貫いてしまうほどのインパクトがあるのかもしれない。

御社ではいかがであろうか。


カトキチ@インフラ企業の人事

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