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評価者の皆様へ 人事評価のきほんのき

人事評価の目的は査定と人材育成

人事評価は「目標設定をして、1on1等の期中面談をし、振り返り面談、フィードバック面談をする」等々のタスクが発生し、とても手間がかかる事は事実です。しかし、会社として、その様な手間をかけてでも達成したい事があるはずです。それは何でしょうか。

 まず「頑張った人にしっかりと報いたい」です。正しく評価をする事により、頑張った方に対して適切な処遇ができるようになります(評価制度((厳密には等級、報酬を含む人事制度))が無い場合、「やってもやらなくても同じ」「どうすれば処遇が良くなるかわからない」といった不満や不安が出てきます)。

 そしてもう一つが「人材育成」です。評価を厳密に行う事によって、次に何に取り組めば良いか、方向性とTODOを明確にすることができます。

目標設定のポイント

目標設定は

①等級定義を参考にしながら
②SMARTに
③部下発信でしっかり面談をし
④部下全員の目標が達成された場合、部門目標も達成され
⑤部下が納得しており、努力次第で達成できると部下が捉えている

そんな目標が望ましいとされています。

期中目標修正のポイント

「期中に目標を修正して良いの?」という質問をたまに頂きますが、
「修正しなければならない目標」と「修正してはいけない目標」の2つが存在します。まず、「修正しなければならない目標」は前提が揺らいだ目標です。例えば2020年における「新型コロナウイルスの影響」という外部環境の変化は目標の前提が揺らいでしまっている為、修正の必要がありました。
前提の揺らいだ目標は、目標として意味を成さなくなってしまいますので、現状に合わせた修正が必要です。
しかし、ただ単に「達成が困難になったから」という理由だけでの修正は避けなければなりません。「どうすれば達成できるか?」を部下と一緒に考えたり、𠮟咤激励する等、状況に合わせてサポートをしてあげてください。

期中面談のポイント

1on1※¹を含む期中面談ではポイントが2つあります。
1つ目は「情報伝達」です。部下の目標に対する現在地をしっかりと通知し、理解してもらうことが必要です。「目標に対して現状をどう捉えてる?」等とまずは部下の意見を聞き、評価者である皆さまとのズレを確認します。その後、評価者の皆様から見た現在地とのすり合わせを行っていきます。

そして2つ目は「立て直し」です。例えば「このままでは目標に少し届かない」と共通認識ができた場合、「どうすれば目標達成できるか」を話し合う事になります。評価者の皆様には豊富な知識。技術があり、それに基づいて「こうすれば良い!」と言いたくなることがたくさんあると思います。しかし、その前に部下の話を聞いてみましょう。「どうすれば良いと思う?」等と質問してあげる事で、部下は自ら達成への道を考える様になっていきます※²。

フィードバック面談のポイント

企業によっては振り返り面談とフィードバック面談を分けているところがあり、定義がまちまちなので、フィードバック面談を「評価結果を伝え、次に向けて話し合う場」と仮に定義しておきたいと思います。
フィードバック面談も目的は「評価結果を伝える事」は勿論ですが、「成長の為の課題を明確にし、次期どの様に取り組んでいくか」を話し合う事の方が重要です。その為のポイントは主に2つあります。

1.部下に話してもらいやすい「場」をつくる

「フィードバック面談」と聞くと、部下は「評価結果とダメ出しをされる場」であると感じてしまう事が多いようです。一度身構えてしまうと、部下からの発言が出づらくなってしまい、上司からの一方的な発言で終わってしまう事が多くなってしまいがちです。そうなると、部下から「どう考えているか」「どうしていきたいか」等のディスカッションがしにくくなってしまいます。少し難しい言葉で「心理的安全性」なんて言葉がありますが、「雑談などアイスブレイクをする」「まず部下の話したい話を聴く」等、話してもらいやすい「場」をしっかりと作る事をお勧めします。

2.SBI

部下へのフィードバックの仕方は無数にありますが、あまり慣れていない方は、拠り所となる型を持っておかれると良いと思います。例えばSituation,Behavior,Impactの頭文字をとって「フィードバックのSBI」
なんてものがあります。

Aさんの、〇〇の時(場面)、〇〇の行動や発言なんだけど(Situation)、〇〇の様に私には見えたんだよね
(Behavior)。〇〇の結果になっている様に見えるけど(Impuct)、それについてはどう思う?

の様なイメージです。フィードバック面談の時に有効な型だと思いますので、是非参考にしてみてください。

公正な評価の為に抑えておくべきポイント

「評価は公正であるべきだ」とよく聞きますが、そもそも「公正な評価」とは何でしょうか?広辞苑をひいてみると

「公平で偏っていないこと。また、そのさま。」

とあります。では、人は何を持って公正であると感じるのでしょうか。少し難しい話にはなりますが、重要なところですのでお付き合い頂ければと思います。公正さについてはおさえておくべきポイントが2つあります。

1:評価結果の公正さ

皆様が部下につけた評価は公正な評価であると言えるでしょうか。会社組織では、社員が「仕事(時間や労力)」を提供し、組織がそれに対する「評価、報酬、昇進等」を提供するという交換関係が成り立っています。その時、同僚や同期と比べて、交換比率が「合っている」と感じれば満足を、
「割が悪い」或いは「割が良すぎる」と感じれば不満と感じる(割が良すぎる場合でも、罪悪感などの形で不満と感じる)という考え方があります。ここで言う「割り」とは、実際がどうであるかではなく、本人がどう感じるかという極めて主観的なものであり、評価結果や労働時間以外にも、褒められることや努力を認められる等の心理的なものも含まれます。結果の公正さの話をすると「他の人の評価結果を本人に見せなければいいんでしょ」と
おっしゃる方もたまにいるのですが、若手程情報共有をよくしていることや、昇進昇格という形で判明してしまいますので、しっかりと考えておいた方が良いと思います。

2:評価プロセスの公正さ

例え、自分にとって公正ではないと感じる評価結果であったとしても、評価に至るプロセスの中で評価内容について評価者である皆さまに話を聴いてもらえたり、自分の主張をする機会が与えられたりすることで、評価内容を不服とは思わなくなるという実験結果もあります(実際に実験は裁判の内容でした)。皆様に置き換えますと、評価前に「評価期間の事実の擦り合わせ」の様なものをやっておかれると良いかもしれません。この評価プロセスの公正さを感じてもらうためには

1:一貫性→上司が変わっても、評価基準が変わらないこと
2:偏見の抑制→自己利益や個人的偏見を持ち込まないこと
3:情報の正確さ→正確な情報と合理性をもって評価すること
4:相互の利害→評価者、被評価者の利害が考えられていること
5:倫理性→脅したりすることなく、倫理的に手続きが進んでいること
6:内容次第では評価が覆る余地を残しておくこと

この様なことが担保されていることが、被評価者が評価に対して公正だと感じる事に繋がります。

おわりに

最後までお読みいただきありがとうございます。評価者の方々向けに、よく評価者研修で話をしていることを一部書かせて頂きました。少しでもお役立て頂ければ嬉しく思います。
評価というと、筆者が小学生の頃に「あゆみ」という通信簿があり、その結果次第で小遣いの額が変わったことを今でも覚えています。企業における評価はそれと似たところもあると思いますが、学校同様「人材育成」に重きが置かれているべきです。評価を正確に、正しく行う事で、個々の強みと弱みが際立ち、次に何に取り組めば良いか明確になることが評価を行う最大の目的であると思いますが、貴社はいかがでしょうか。

※¹:1on1を評価とは切り離して行っているところも多くあります
※²:部下がもうある程度自立しており、自ら考える事ができる場合は逆効果になることもあります。場合によって使い分けてみてください。


カトキチ@人材・組織開発コンサルタント

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