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スターバックスコーヒーに学ぶフォロワーシップ

2010年,米国TEDにてDerek Sivers(以下Sivers氏)がプレゼンテーションを行った。その時の動画は以下のとおりである。

動画を観ると,すぐに一人の裸踊りをしている若者が登場する。
Sivers氏はその若者について「孤独な馬鹿者」と表現した。しかし,すぐにこの「孤独な馬鹿者」に続いて,一緒に踊り出す人が出てきことで,Sivers氏は「孤独な馬鹿者が,後に続いて踊るフォロワーを得て,リーダーになった」と表現し直した。この動画を見た梅本龍夫(SBCジャパン創業者)は「これが自分が体験してきたスターバックスコーヒー(以下SBC)の話であり,SBCが成功した理由である」と述べている。

 1971年, スターバックスコーヒー(以下SBC)は小さなコーヒー豆ショップとしてスタートした。そして今日では世界80か国,合計30,000以上の店舗を展開するに至っている。そんなSBCの成長の中心人物は,元ゼロックスの営業パーソンであるHoward Schultz(以下Schultz)であった。マーケティングの天才と言われたSchultzであったが,リーダーになったのは,1989年にHoward Behar(以下Behar)がフォロワーになった時であったと言われている。Beharは店舗運営のプロであり,当時40数店舗であったSBCの店舗数を500店舗にまで拡大する等、その手腕を発揮している。

その時「SBCはコーヒーショップではなく,我々はピープルビジネスをしている」が生まれ,心のある店舗管理がされていった。確かに,現在のSBCの店舗に行った際,スタッフ一人一人がマニュアル通りに,機械的に仕事をしている様子は無い。それぞれのスタッフがSchultzの気持ちになって,目の前のお客様に1杯のコーヒーを提供する,そしてそれに喜びを得るというソフトの部分はBeharによって作られたものである。当時Schultzには「ピープルビジネスをする」というビジョンは無く,最初のフォロワーであるBeharによって真のビジョンがもたらされた事になる。

そして,セカンドフォロワーはリーダーではなく,ファーストフォロワーに付くという特徴がある。SBCであればSchultzではなく,ファーストフォロワーであるBeharに付いたOrin Smith(以下Smith)を指す。仕組化に強いSmithがセカンドフォロワーになり,H2Oという3人体制(マーケティングの天才×店舗の守護神×メカニズムを作るプロのデザイナー)が確立し大躍進を遂げる事となる。

 改めて,フォロワーシップとは何か。Uhl-Bien(2014)によると「フォロワーシップとはリーダーとの関係におけるその特徴であり,行動であり,個人的行為のプロセスである。それは一般的な従業員の行動ではない。フォロワーは従業員と同じではない」と定義づけている。更に金井(2005)は「真のリーダーシップとは,リーダーたる人物に対して,フォロワーがただ従うだけでなく,むしろ“喜んで”ついていくときに生まれるものである。」と述べており,リーダーシップの成立要件としてのフォロワーについて言及している。

上記より,フォロワーには3つの特徴を見出す事ができる。1つ目は,フォロワーはリーダーを選ぶ存在であり,強制される関係ではない。ということである。2つ目は,人がある人について行く事を決めた瞬間にリーダーとフォロワーが生まれるのであり,どちらかが先にある様な物ではないということである。3つ目は,リーダーとフォロワーは内発的動機付けでつながっている自由な関係であり,上下関係ではないということである。

 様々なコンテキストで様々な使われ方をするフォロワーとリーダーという用語であるが、本来どうあるべきものなのか,原点に立ちかえってみるのも良いのではないだろうか。


カトキチ@人材・組織開発コンサルタント

(参考文献)
※金井 壽宏(2005)『リーダーシップ入門』
※中原 淳 他4名(2006)『企業内人材育成入門』
※Brian Wayne Rook(2018)『FOLLOWERSHIP: A STUDY EXPLORING THE VARIABLES OF EXEMPLARY FOLLOWERSHIP』

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