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【社員の副業対策】プラットフォームエコノミーで働く就労者の保護

筆者の支援先企業で、ウーバーイーツの副業を始めた社員がいて、怪我をしてきたと相談があった。「緊急事態宣言下で月収100万円」ウーバーイーツ配達員がその様な見出しでマスコミに取り上げられる等、プラットフォームエコノミーは活況である。本人が頑張ったら頑張った分だけ稼げることや、雇われの身ではない働き方ができる等の多くのメリットがあり、こうして副業として取り組む社員も出てくることが予想される。


一方で、プラットフォーム労働は、災害時の補償や失職時の生活補償など、雇用労働者に比べてセーフティネットが脆弱であることが最大の問題となっている。具体的には、企業で働く人には雇用保険や労災があり、もしもの時も最低限の補償は得られるが、労働法上の労働者性が認められないプラットフォーム労働者にそれはない。フードデリバリー中に車にひかれても保証は殆ど無い(2019年、ウーバージャパンは事故にあった際の補償として25万円上限、働けなくなった方は30日まで7500円/日が出る障害見舞金制度を開始したが、労災に比べ内容は不十分であるとする意見が多い)。当然副業中に怪我をしても、どこからも何の保証もない(業者の中には上記の様な保証を出しているところもあるが)。


その様な状況の中、2019年10月3日、ウーバーイーツの配達員が労働組合としてウーバーイーツユニオンを結成した。経済的従属性の高さ等を理由として労災の導入を訴える事を続けているが、浜村(2018)によると、プラットホームが仲介機能しか持たず、クラウドソーサーがクラウドワーカーに対して仕事の内容や進め方などをあれこれ具体的に指示しない場合には、こうした使用従属性を中心とする従来の伝統的な判断基準で労働者性を認めることは難しく、通常の労災の対象者にはなりえないとのことである。


一方で、海外の状況は変わりつつあり、2020年1月からカリフォルニアでは労災が払われる様になり、フランスでは、2016年8月に成立した労働法典改正法において、「プラットフォームの社会的責任」が定められ、①プラットフォームが働き手を保護する保険料を負担すること、②働き手の職業教育費用を負担すること、③働き手に団結権、団体交渉権、団体行動権を保障することが定められ、年間5100ユーロ以上稼ぐ人はプラットフォームが労災払うという法律が施行されている。


 厚生労働省もこれらの状況を総合的に鑑み、同省の労働政策審議会部会は2021年6月18日、飲食店の料理などを自転車で宅配する配達員や、フリーランスで働くIT人材について、企業に雇用されない個人事業主でも労災保険に入れる「特別加入制度」の対象に加える省令案の要綱を了承し、同年9月から運用が始まる事が決定した。
しかしながら、ウーバーイーツユニオンは自己負担を伴う特別加入に反対しておりあくまで通常の労災の形にこだわる姿勢を見せている。


社員の副業問題としてもチェックしておくべきこの問題。社員が事故ったときどうする?
このリスクを伝える事も人事の仕事になる日は近いのではないか。


カトキチ@人材・組織開発コンサルタント


(参考文献)
・浜村彰(2018)『プラットエコノミーと労働法上の課題』
・三菱UFJリサーチ&コンサルティング(2020)『フードデリバリーサービスの動向整理』

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