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夫婦で育休を一年間取得してみた結果。


2021年4月に第一子となる娘を出産し、今年2022年4月まで、夫婦そろって一年間の育休を取得した。

この決断をした時はとても不安だった。
今では女性が育休をとることは普通になってきてはいるが、男性の育休はまだまだ進んでいないと感じる。私の周りでも、育休をとった男性はいても、数日やひと月程度だった。それすらも取るのに苦労したり、「男が育休なんて」と、嫌味を言われている人も見てきた。
夫婦そろって一年間の育休をとった人の話など、聞いたことがなかった。

そんな、まだそれほどメジャーになっていない「男性の育休」を、自分の夫が、一年間も取る。

夫は「子供ができたら育休をとりたい」と以前から言っていたけれど、いざ取るとなると不安になった。

本当に大丈夫なのだろうか?
仕事に影響はないのか?
お金は大丈夫なのか?
周りに色々と言われるだろうか?
後で後悔することはないのか?
そもそも育児のことがまだわからないのに、本当に二人も必要なのだろうか?

そんな不安を解消したくて、男性の育休に関する情報を探しはじめた。けれど、半年以上取得した男性の発信はそれほど多くはなかったし、育休を取得した男性の妻の視点で書かれているものは少なかった。

その経験から、一年育休をとってみた結果を記録として残しておこうと思った。

今後はもっと、育休を取りたいと考える男性や夫婦が増えてくるだろう。今もし「夫婦で育休をとりたいけれど、あんまり情報がなくて不安だ」と思っている人がいたら、この記録が一例として参考になればいいなと思う。


結論からいうと、夫婦で育休を取って良かったことばかりだった。

第一に、育児中でもしっかりと睡眠をとり、身体を休めることができたこと。

特に産後は動くことすら辛かったので、夫がいてくれたおかげでゆっくりと休むことができた。
妊娠中、「子供が産まれたらしばらくは眠れないよ~」とよく言われた。私もそう思って覚悟をしていた。赤ちゃんを育てるということは、常に寝不足で辛くて、それが「育児」であり、みんなやっている「当たり前のこと」なのだと、そう思っていた。

それが、夫が育休をとったことで完全に覆った。
「二人で育児をする」だけで、睡眠不足は完全に解消できた。交代で育児をすれば、夫も私もしっかりと睡眠をとることができるからだ。

世のワンオペ育児をしている人たちは、日中ずっと一人で育児をし、夜すら通して眠ることができずに夜泣きや授乳に対応している。そして寝不足で疲れた身体で、翌日も一日育児をする。
そんな過酷な状況なのに、「それが普通」「みんなやっていること」と言われてしまうことが恐ろしいと思った。
そんな頑張っている人達からみれば、男性の育休と聞けば「育児なんて一人でやっている人もいるのだから、二人もいらないでしょ」と言いたくなる気持ちもわかる。

けれど、仕事で考えてみたらどうか。
朝から晩まで勤務して、夜中も緊急アラームがなったら即対応する状態で眠りにつく。そして翌日も一人で責任を持って仕事に励む。その生活を365日続けろ、と言われたら、完全にブラックな職場だろう。イライラしたり、体調が悪くなるのも当然だ。

自分が育児している時は、たとえ娘が眠っていても「何かあったら即対応しなければ」と常に気を張っていたし、心から休めることはなかった。だから夫と交代して、「私以外の人間がしっかりと娘の安全を管理・確保してくれている状態」になって、はじめてゆっくりと眠ることができた。

ワンオペ育児は、いわば「24時間フル稼働の機械を一人の社員で回し続けるようなもの」だと思った。

そんな勤務体制にしている会社は恐らくないと思う。どこかで交代して、休憩と睡眠をとっているはずだ。それなのに、育児だとそれが当たり前になっているのだ。

育児も、「二人いて、はじめて心身の健康を保ったまま回し続けられる」のだと思った。

第二に、一年間の娘の成長を全て共有でき、じっくりと話し合えたこと。

赤ちゃんの成長は本当に早くて、昨日できなかったことが今日いきなりできたりする。

寝返りできた、ハイハイした、つかまり立ちした…そうした娘の日々の成長を、口頭だけで伝えるのは難しかった。
直接自分の目で見て、昨日できなかったことをできるようになった瞬間を見て共有できたことは、これから先の人生でとても大きな意味を持つと思う。

そうした成長の喜びの面だけでなく、日々変化する育児内容について、話し合って二人で方向性を決めることができた。

寝返りをするようになったら、寝返り防止をするか?
ハイハイするようになったら、危険な物を移動させるか?それともサークルを買って対応するか?
つかまり立ちをしたら、ローテーブルに買い替えるか?

あげたらキリがない。
育児は、日々新しい出来事と判断の連続だった。

赤ちゃんの成長は本当に早いので、使うベビーグッズも着せる服も、何もかもが毎日変化していく。それに合わせて、部屋の配置なども変化させる必要がある。
初めての育児で、私だって何もわからなかった。
ミルクの熱さはこのくらいでいいのか。
うつ伏せになったら直した方がいいのか。
鼻づまりが苦しそうだったら、耳鼻科に行った方がいいのか。

そんな些細なことでも、一人だったら戸惑い不安になったし、決断することが怖かった。けれど、そうした不安を共有し、「こうしてみよう」「これを買ってみよう」「ダメならこうしよう」と一緒に決めることができたことで、とても気持ちが軽くなった。

もし一人で育児をしていたら、全ての責任が自分にあるような気がして、プレッシャーに押し潰されていただろう。
そして、もし夫がそうした日々の変化を見ていなかったら、「なんで配置変えたの?」「なんでこんなもの買ったの?」「それは本当に必要なの?」と、分かってもらえなかったかもしれない。自分だって自信がないままやっているのに、そんなことを言われたらとても辛くなっただろう。

「娘に何かあったときには、一緒に考えて、対応してもらえる」

育休中、夫が家にいてくれたことで、そうした安心感が得られたことはとても大きなメリットだった。

第三に、今後共働きしていく上で、完全に対等な関係になれたこと

妻だけが一年間育休をとると、仕事復帰後も、どうしても育児の負担が妻側に偏ってしまう。

もし私だけが育休をとっていたら、「私は今家にいるのだから」と、育児だけでなく、家事も自分がやらないと、と思い込んで、自分を追い詰めていたと思う。

それに、産後から一年間妻が主体となって育児をしていたば、復帰後に急に50:50でやれといわれても、夫側も難しいだろうと思う。それまで人がやっていた仕事を、突然全く同じように半分こなせと言われてもなかなか難しい。

だから、仕事復帰後も完全に分担してやっていくためには、産後すぐから対等に育児する必要があると思った。

それに、どちらか一方しかできない仕事を作ってしまうと、一方に何かあったときに困ってしまう。
そのため私たち夫婦は、育休中は「分担制」ではなく、「完全交代制」で育児を行った。

大体8時間ごとに育児を一方が担当して、もう一方は休憩か睡眠をとる。
夜中もこの交代制で乗り切った。娘が起きた場合、担当者が夜泣きや授乳を行う。
(うちは生後二週間から完ミだったため、授乳も夫ができた)。

このようにきっちりと時間で担当をわけることによって、その間に発生する育児はどちらも全てこなせるようにした。また交代制のため、「手が空いているならやってよ!」というイライラが全く起きなかった。
そしてしっかりと通して育児をしたことで、仕事復帰後も、どちらか一方でも全て対応できるようになれた。

もし夫が育休をとらず、部分的にしか育児していなかったら、「毎日育児をし続ける大変さ」は理解してもらえなかったと思う。


ここまで良かったことばかり挙げたが、育休を取る前は不安もたくさんあった。

まず不安になったのが、お金のことだ。

意外と知られていないが、夫婦で育休をとっても、育休手当はきちんと二人分出る。
そのことにまずホッとしたけれど、それでも本当にやっていけるのかと不安だった。育休手当の金額は、半年以降は2分の1になるからだ。
つまり夫婦で一年育休をとるということは、育休後半は夫婦そろって収入が半分になるということだ。
もしかしたら育休後半は、貯金を切り崩しながらの厳しい生活を強いられるかもしれない――そう覚悟して、ダブル育休に望んだ。

しかし一年経った結果、思ったほど厳しくはなかったと感じている。

もちろん、しっかり節約はした。共働きで働いていた頃のようには貯金もできなかった。
けれど、出産前に心配したほどではなかった、というのが本音だ。少なくとも赤字にはならなかった。

二人して外出せず育児に励んだことで、仕事をしていた頃に比べて出費が抑えられたことが大きかった。

コロナで出かけられなかったこともあるが、ガソリンを給油する回数が激減し、昼食代もお互い家にいるのであまりかからず、仕事に行かないため職場のイベントや飲み会に誘われることもなく、仕事帰りに寄り道してしまうこともないため、外食代や交際費を抑えることができた。

また夫婦でずっと家にいるので、出費についても「来月は車検がある」「おむつはまとめ買いした方が安い」など、話し合うこともできた。平日に一緒に買い物に行くこともできたから、安い大型スーパーで食材や日用品のまとめ買いをすることができたのも大きかった。


二人で育休をとったデメリットについては、考えてみてもあまり思い浮かばない。

金銭的な面でいえばもちろん収入は減るため、夫が育休をとらない方が余裕はあるだろう。
仕事の面でも、もしかしたら復帰後は職場に居場所がなくなるかもしれないし、出世できなくなるかもしれない。

しかしそれは会社の問題であって、夫の問題ではない。

もちろん無視はできない問題だが、「出世できなくなるから」「会社で嫌味を言われるから」というのは、育休を取らない理由にはならないと思う。

もし本当に「育休をとることで出世できなくなる」「上司に睨まれる」「仕事がなくなって干される」というのなら、育休に関係なく問題ある会社なので、今のうちに転職なりなんなり他の方法を考えておいた方が良いように思う。

夫が育休を取ったというと、「良い会社だね」と言われる。
けれど、取るまでの道のりはけして楽ではなかった。上司に嫌味を言われたし、育休中も電話が頻繁にきたり、大変なことはたくさんあった。

もし復帰後に夫が育休を取ったことで、職場で理不尽な目に合うようなことがあれば、全力でサポートしたいと思う。
どんなことがあっても、私も夫も「やっぱり育休を取らなければよかった」という気持ちにはならない。

人生でたった一度きりの、子供との大切な時間を過ごせたこと、一緒に育児できたことに勝るメリットなんて、この世には存在しないと話している。

「母親と同じ責任感をもって育児できる人」は、父親しかいない。
どれだけ実家や周りの厚いサポートがあっても、それは「サポート」でしかない。
私にとって必要だったのは、サポートだけではなく、「人間一人の命を、責任を持って一緒に背負ってくれる」ことだった。

男性の育休取得は妻のサポートのためではなく、一番は男性自身のためであると思う。

まだまだ「育児の主体はママ」という風潮があるから、「男が育休なんて」と、男性が尻込みするのも仕方ないと思う。
けれど「上司に睨まれる」「仕事が減らされる」といった外圧的な理由で、自分の子供の大切な時期を見逃してしまうのは本当にもったいない。
歳をとってから「もっと一緒にいたかった」「子供の成長を見たかった」と思っても、かけがえのない時間はもう戻って来ない。

もし逆の立場で、私が仕事して夫が育児をしていたら、私も育児の大変さは分からなかったと思う。
「一日中家にいるんだから、家事くらいやってほしい」「育児が大変といっても、昼寝くらいできるだろう」と思ってしまったかもしれない。

育児を経験してからは、「自分が子供と離れている時間=パートナーが育児で大変な思いをしている時間」なのだと理解することができた。
私は夫より一足先に仕事に復帰したが、私の仕事中は夫がずっと育児しているため、早く帰宅して夫を休ませないと、と思うになった。

こうしたことを知る機会を、今の男性は当たり前には与えられていない。
自ら「育休をとります」と勇気を出して言わなければ、得られない機会なのだ。

もちろん、夫婦の数だけ育児のやり方があるので、「うちは夫の育休なんて不要」「一人で十分」という夫婦もいるだろう。けれど、夫婦ともに育休をとることがスタンダードになって、そこから各夫婦が選択していくような世の中になってもいいのではないかと思う。

まだまだ男性が育休をとるハードルが高いこの社会で、育休をとれるよう周りの人と仕事の調整をし、頭を下げ、嫌味を言われながらも「一年間の育休をとる」という決断をしてくれた夫には、心から感謝している。

この一年間一緒に育児できたこと、一生懸命育児する夫の姿、そして「この一年間、すごく充実して最高に幸せだった」と言ってくれたことは、ずっと忘れない。

きっと一生覚えている。


※2023年追記

夫婦で仕事に復帰して,一年半が経ちました。
娘も2歳半になり、すっかり元気な保育園児です。

育休をとったメリットときて、上記の記事を書いた後に知ったメリットを追記します。それは…

保育園料が安くなるということ!!

夫婦二人でまる一年休んでいるから,この間は育休手当はあるけど、ほぼ無収入ですもんね。
その分、翌年の住民税がかからないのと、保育園料が一年目(時期次第では二年目)がめちゃくちゃ安くなります。

2023年現在は、保育園の無償化は3歳からなので、これはメリットだな〜と感じてます。




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