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第1回 ⑤コンポスト、私の場合  ダンボールコンポスト -生ごみ削減だけじゃないコンポストの魅力

 ①~④で紹介したように、コンポストはじめてみると、生ごみ削減や堆肥づくり以外の、さまざまな発見や気づきがある。コンポストから広がる世界。そこがコンポストの面白さだと思っている。 私なりの気づきや発見をいくつか紹介したい。


種のチカラ、種のミライ


コンポストに入れたカボチャの種が発芽し実をつけた!

 春になると、堆肥を入れた土から、カボチャやトマト、ゴーヤーやメロンなど、さまざまな植物が芽を出してくる。これは、生ごみとして入れた野菜の種が、発芽したもので、植物の種のチカラ、力強さに驚いてしまう。特にカボチャは土の奥底からグイっと芽をだし、大きな双葉を広げる。カボチャの発芽は、コンポスト仲間の間では「コンポストあるある」として共通の話題に上るほどで、そのままにしておくと、プランターに植えた苗のまわりにいくつも芽を出し、我が物顔で茂ってしまう。写真(上)は、発芽したカボチャが育って実をつけたもの。食べてみると、それほど美味しいといえるものではなかったけれど、ひと夏、かぼちゃの成長を見守ることができるのも楽しい経験だった。

 それにしても、コンポストに生ごみとして投入された種の環境は過酷だ。スコップでかき回され、コンポスト内の温度変化も激しい。そんな環境の中でも、なぜか微生物に食べられることなく(生ごみは食べられるのに!)、生き抜いた種は、植えるとちゃんと、生育にぴったりな季節に発芽するから不思議だ。
 約二千年前の地層から発見された蓮の種が発芽し、育てられているという話を耳にしたことがあるが、一粒の小さな種の中には、子孫をつないでいくための大きなエネルギーが潜んでいるのだ。

 しかし、こうした種を育ててもすべてが実るわけではない。一度、堆肥から出てきたトマトを育ててみると、ぐんぐん元気に葉を茂らせたのに花がつかない。せっかく蕾が出来ても花を咲かせることができずに萎れてしまった。これは推測だが、「F1の種だった」からかもしれない。
 F1というのは、両親の良いところを掛け合わせている種だが、自分の子孫を残すことには適していない。そのため、F1の種で栽培する場合は、毎年、種を購入する必要がある。また、種袋を見ると原産国はほとんどが外国産であることがわかる。
 今まで、F1種の種については、少し耳にしていたものの、こうして自分が育ててみて「実がならない」ことを実感すると、種のミライ、私たちのこれからの食糧について、より自分ごととして考えるようになった。

旬の野菜を食べたい


ベランダ菜園の冬の定番、スティックブロッコリー。
スティックのように少しずつ収穫できるので、朝、食べるぶんだけ摘み取って食卓へ。
2~3月末くらい、一株で1ヶ月ほど楽しめる

 区民農園や自宅のプランターで野菜を育ててみると、旬の野菜の美味しさに驚いてしまう。土と太陽のエネルギーがぎゅっとつまっている。
 生でも食べられててしまうほど甘いトウモロコシ、水が滴るほどみずみずしいキュウリ、弾けんばかりの真っ赤なトマト、包丁を入れるとキラキラと光る大根。もう、そのままで十分美味しい。それにベランダ菜園の場合、摘みたての野菜をそのまま、キッチンで調理できるのもうれしい。素材の味を楽しみたいから、料理も焼くだけとか、味付けもちょっと塩をふるだけとか味付けもどんどんシンプルになってきた。
 現在、スーパーには1年中、さまざまな野菜たちが並んでいる。しかし、旬の野菜の美味しさを知ってしまうと、無理に時季外れの野菜たちを買おうとは自然と思えてくる。それに今まで、自分がどんなに季節に無頓着になっていたことに気づかされるのだ。

カリフラワーは冬の一番の御馳走かも!
オーブンで焼いたり、パスタに入れたり、スープにしたり。
口の中でほろほろと甘さが広がる

昔の人の暮しの知恵

 野菜を育ててみると、野菜の旬が短くて、それも一気にたくさんできることを知る。特に夏野菜のキュウリやナスは、1日であっというまにお化けきゅうりのように大きくなってしまったり、トマトは熟れて実が弾けたりして、収穫が間に合わなくなるほどだ。
 特に区民農園を体験していたころは、たくさん採れた野菜で、冷蔵庫がいっぱいになってしまうことも多かった。せっかく育てた立派な練馬大根も、冷蔵庫の中で眠ったまま、干からびてしまうこともあった。
今は、買ってきた野菜を冷蔵庫に入れて保存することが当たり前になっている。しかし、家庭に冷蔵庫が置かれ始めたのは、少し前の時代。100年も経っていない。


たくさん収穫した野菜を天日干し


「野菜の旬は短くて、一気にたくさん採れる。じゃあ、冷蔵庫がない時代はどうしていたんだろう? 」。すると、区民農園の園主さんの家の庭先に、たくさんの大根が干されていた。「そう、漬物だ!」。これを読まれている方は、「こんな当たり前のこと」、とおっしゃる方もいるかもしれない。しかし、恥ずかしながら、漬物といえばご飯の添え物的イメージだったのだ。漬物は「野菜を保存し、長期間食するための知恵から生まれた産物」であること。言葉では知っていたが、本当の意味で理解した大きな発見だった。
 少し昔の暮しでおこなわれていた小さな循環。私の日常にも取り入れていけたらと思っている。

次回は、⑥ベランダは生き物の小宇宙について綴ります。

第1回 コンポスト、私の場合 
- ①ダンボールコンポストをスタート

第1回 コンポスト、私の場合  -②ダンボールコンポストの仕組み

第1回 コンポスト、私の場合  ダンボールコンポスト -③驚くべき堆肥のチカラ

第1回 コンポスト、私の場合  ダンボールコンポスト -④コンポストで生ごみ削減