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4. ポップスに和声の考え方を活用する

この記事は和声のマガジンに含まれています。
その0:芸大和声の補足ノート
その1:和声のススメ
その2:知識0でも(きっと)分かる和声概論
その3:実際の曲を和声分析してみる(Ave verum corpus)
その4:ポップスに和声の考え方を活用する
その5:和声課題の間違い探し

こんばんは、オーナーの吉田(@yoshitaku_p)です。

ここまで3回に分けて和声について説明をしてきましたが、和声そのものの勉強が目的で読んでいる訳ではなく、自分の作曲している曲に考え方を取り入れられるかを考えて読んでいる方も多いと思います。

ですので、今回はポップスの作曲の中で和声の考え方をどのように活かすことができるか、いくつか提案してみたいと思います。

芸大和声の禁則・ルール

芸大和声の中では禁則と呼ばれる「してはいけないこと」がいくつかありました。最も大事なもので言うと連続8,5,1度並達8,5,1度で、それらを避けるためのルール(共通音がない場合は上3声をバスに反行させる、など)などもいくつかありました。

ですがこのルールは和声を学ぶにあたってスムーズに勉強を進めるためのもので、III巻まで進むとたくさんの例外が現れてルールなんて関係ないような状態(≒より音楽的)になってきます。

そして、実際の曲では芸大和声のルールを守っていない曲もたくさんあります。そもそも芸大和声が具体的な曲から代表的な要素を抜き出して作られているものなので、それに当てはまらない曲もあるからです。

和声初学者の方は勘違いすることが多いのですが、作曲家の意図を表現するにあたってその要素が必要なのであれば、必ずしも芸大和声のルールに則る必要はありません

他の誰かから「これ禁則ですよ」と言われても、課題ではなく作品の中でのことなので、連続だろうと何だろうと表現したいことを実現させるためであれば使うべきです。

また、芸大和声は4声体(特に混声合唱)のバランスが崩れないようにルールを設定しているので、楽器編成が変わったり各パートの人数が変わったりすれば全く話は変わります。

オーケストラの曲ではフルートとピッコロ、チェロとコントラバスがよくオクターブで重ねられていますが、これを連続8度と言うことはありません。パート毎に人数が違うためどうしても音量バランスは変わりますし、音色の補強(倍音の強調、サブベースなど)と似たようにも考えられるからです。

よく「連続8度になるからピアノの左手をオクターブで弾いてはいけない」とか「連続5度になるパワーコードはダメ」とか勘違いをしている人がいますが、これらも同じく音色の補強と考えていいでしょう。

ポップスでの応用

上に挙げた理由に加えて、一般的なポップスでは各楽器の役割があまりも異なり、それぞれのパートの役割を大きく超えることも少ないため、和声の禁則を律儀に守る必要は全くありません。

ただ役割が似ているパート間だったり、それらがまとまっているセクション内では注意が必要です。

連続・並達○度

例えばオルガンやシンセサイザーなどの持続音が出る鍵盤楽器の場合、和声と同じように共通音を保留したり、左手(もしくはベース)に反行させるように音を進めると自然に聞こえることが多いです。

逆に共通音を保留しないと慌ただしい感じを、左手に反行させないようにすると8度や5度で重複する音を強調させることができます。

この強調されるニュアンスが必要かそうでないかを自作の中でコントロールできるようになるためにも、和声を習得することは意義があることだと思っています。

また、似た役割のパート間での並達○度はできるだけ避けた方がいいでしょう。例えばメインボーカルとハモリパートで、フレーズの終わりの部分が並達1度になる場合、メインボーカルとハモリが同じ人だと音が混ざりすぎるので、そのニュアンスをどう処理するか考える必要はあると思います。

構成音のバランス

コードパート全体で3rdや7thが大きくなりすぎると、コードがあまり綺麗なバランスでは聞こえなくなります。

また、3rdがどのパートでも鳴っていないと空虚に聞こえるので、何かしらのパートには3rdを含めた方がいいです。

ただしC/Dのような分数コードの場合は、Dm7(9,11)のように考えてFを補うと響きが重くなってしまうので注意が必要です。

sus4やadd9などのように構成音が転位しているもの(III巻p.109)でも注意が必要です。sus4の中に3rdの音を入れるとぶつかって聞こえてしまいますが、3rdがオブリガートあたりに短い音であるとあまり目立って聞こえません。

綺麗な旋律線を作る

これは少し対位法によった考え方でもあるのですが、1つ1つのパートが魅力的に動いているのかをチェックすることもできるようになります。

例えばヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロのストリングスセクションを考えるときに、おそらくヴィオラは使い方が分からなくて「ドードシドーレドシドー」のような同じ音の連続になることが多いと思います。

もちろんそれでいい曲もあると思いますが、大サビ前、歌とストリングスセクションだけになるようなところではもう少し動きを持たせたい気もします。

全音符で伸ばすだけしかできないと言う方も、III巻まで(もしくは適当な弦楽合奏の曲を)勉強すればどのように旋律線を修飾するのがいいのか分かると思いますので、ぜひ一緒に勉強しましょう。


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