見出し画像

【インタビュー vol.4 / 秋のショートコース】手を動かして考える、表現をして生きていくこと

Compathは北海道東川町で、デンマークのフォルケホイスコーレをモデルに大人の学び舎をつくっています。コースを準備するにあたって、改めてCompathのプログラムの価値ってなんだろうを考える時間をとっています。これまでCompathのプログラムに参加してくれた仲間たちがどんなことを感じたのか知ることで、あり方をじっくり考えたいという気持ちから、インタビュー企画をはじめました。

今回のインタビューはこうへい。大学の夏休みの時間を使って秋のショートコースに参加してくれました。「森100年、人100年」をテーマに東川の自然に浸り、哲学に触れ、作品づくりを通じて手と心を使いながら自分を見つめた7日間をこうへいの言葉で語ってもらいました。

画像9

■ 話者
こうへい
兵庫県出身、大阪大学基礎工学部在学中。コロナ禍で大学に入学してから対面授業もなく自分が何をしたいか見失ってる時に母から北海道で面白いことしてる人達いるよーと紹介を受けCompath を知る。話を聞いてみたところめちゃくちゃ面白そうだったのですぐに参加を決意。
■聞き手
さき
Compath共同創業者。4年前にデンマークのフォルケホイスコーレに惚れ込んで、モデルにした大人の学び舎をつくりたいと北海道東川町に移住。設立に向けてのいろいろ実験中。参加してくれた仲間たちとの対話をヒントに学校づくりをしていきたい。2021年の目標はおいしいあんこを炊くこと。


表現をすること=生きていくこと

―― お久しぶりだね。こうへいがショートコースに参加しようと思ったきっかけから聞かせてもらってもいい?

受験で忙しく過ごして、いざ大学がはじまったと思ったらコロナの影響で入学早々オンライン授業になりました。いろいろ考えて納得して大学に入ったはずなのにバタバタした半年間を過ごして、あれ自分って何がしたかったんだっけ、何を勉強したかったんだっけ...となっていたときに母から「面白いことやってる人いるから話きいてみない?」といわれて知ったのがCompathでした。話をきいて自分にとって必要な機会だと思ったので参加することにしました。

―― 秋のショートコースはこうへいにとってどんな時間だったと思う?

フォルケの時間は手を動かして作る時間が多くて、モノに触れて自分を見つめ直す時間だったと思います。これまでずっと頭で考えることを多くしてきたけど、手を動かして考えることもできるんだって気づきました。

画像1

画像2

―― 手を動かして考える、面白いね。確かに「つくる作業」に夢中になっている姿が印象的だった。チェックアウトのときに表現したいって言ってたよね?

これまで情報を受けてばかりだったけど、それを受けてどう思うかを表現をしていくことが生きていくことだと思ったんですよね。フォルケには色んな人がいて色んな話をきけたのが面白くて、その中で「解像度」が高い・低いという話が印象的でした。あの1週間は解像度が高かったなと思います。でも高い解像度で生きていると色んなものが見えすぎてしんどいときもありました。解像度を高くして細かいことに集中するときと、解像度を低くして広くみるバランスが大事だと思いました。

―― ショートコースで解像度が高かったときはいつだった?

4日目の自由時間に1人で山にいって散策していたとき、ここに生物がいたんだろうなって考えたり、面白い形のまつぼっくりをみつけたり、普段なら気づけないようなことに気づいたときですかね。帰りの飛行機で街の明かりが煌々と光っている景色を見て泣きそうになったんですよね。普段はその景色を見て何も思わないはずなのに、1個1個のビルがこんな色してるんだとか考えると「ああ帰ってきたんだ、あの時間がすごく楽しかったんだ」って思って泣けてきました。

画像3


もやっとした感覚をゆっくり消化して、伝える

―― あの7日間って、こうへいはどんなふうに感じていたの?

画像4

1日目は森の中で名刺づくりや劇をしながら、その場所に馴染んだって感覚でした。「北海道きたんだ!自然の中にいるんだ!」ってテンションがあがってエネルギーを使ってくたくたになりました 笑。2日目の東川の哲学にふれる時間は、みんなの話についていくので精一杯でただただ圧倒されていました。みんなみたいに思っていることをちゃんと言葉にして伝えることができるようになりたいって思っていました。3日目のバターナイフづくりはとにかく楽しかったです。モノをつくる楽しさを感じたし、北の住まい設計社の家具を見ながらめっちゃいいな、ほしいなーって思ってました 笑。照明もいっぱい置いてあって、シーンに合わせた照明の使い方を読んでいるのが楽しかったです。

画像5

画像6

画像7

2、3日目で色んな人からきいた話がたまっていて、それを消化したのが4日目。ぐるーって自転車でまちをまわっていろんなものをみて、草むらに寝転がって考えを巡らせて思考を宇宙に飛ばしていました。その時間のおかげで5日目はだいぶ思考がすっきりして、思っていることが言語化されるようになってきたから、それを「つくろう」と思いました。色々考えたり思っていることはあるけど言葉にすることは得意じゃなかったので、それを言葉ではなく形にするというのがすごい新鮮で、とりあえず頑張って手を動かしていました。

画像11

―― 6日目には対話するよりつくりたいっていってたよね?

多分自分はつくりたい側の人間で、つくることで思考が研ぎ澄まされていく感覚がありました。感じていることをどうやって表そうと考えたり、モノを置いたりくっつけたりしながらみんなと話したり、作品の中に私たちを置いてみようと試したりするのが面白かったです。

画像10

7日目は寂しくてひたすら泣いてなぁ...。今振り返ると7日間のプログラムってうまく出来てたんだなと思います。最初にもやってしたのがあって、それを頑張って消化してモノをつくることで、ぎりぎり表現できるようになるまでもっていけた7日間でした。最終日にちょっとは人に伝えられるように話せるようになったかなって思います。


モノをつくって表現をする大切さ、楽しさ

―― こうへいのチェックアウトが印象的だった。コロナになって受け入れるばかりで仕方ないと諦めることしかできていなかったけど、本当は自分はもっと作り出す力や抵抗する力があって、その自分を知る1歩として表現したいと言っていたのがすごく心に残ってる。

モノをつくって表現するのを久しぶりにしたらめちゃめちゃ楽しくて、表現するって大事だと思ったし、やっぱりモノをつくるのが好きなんだ、家にこもってゲームするより自然の中にいるのが楽しいって思ったんですよね。小学生の頃は森で遊んでモノをつくることが好きだったけど、中学は部活、高校は学校の活動と勉強に追われてそういう楽しさを忘れていたから、久しぶりに手を動かしてやっぱりこれが好きなんだって再認識しました。

―― フォルケの後、表現することはふえた?

うーーん、ふえたのかなぁ...。行く前より自分からやってみようと思うのはふえた気がします。授業で出されたレポートをただこなすだけじゃなくて、これってどういうことなのかなって大学の図書館で調べてみたり、この分野面白そうって思ったら自分で調べてみたり、オンライン環境でも自分でできることはもっとありそうと思って、自分から色々とやってみるようになったと思います。

画像12


余白をつくって思考を整理する

―― 今あらためてフォルケでの7日間をゆっくり振り返ってみて名前をつけるとしたら?

「余白の時間」かな。ちょうど夏休みだったのもあるし、一回止まってちゃんと色んなことを考えようと思えた時期だったから、この言葉が一番しっくりきます。

―― フォルケを終えて日々の生活に戻ってからも意識して余白をとろうって思うこともあった?

「うわー、今めっちゃ忙しい、課題とレポートに追われてる...」ってなったら1時間散歩にいって何も考えずにブラブラと歩いて思考を整理することをよくしてました。毎日散歩してた時期もあって、1時間課題をする時間はなくなるけど、歩いて頭をすっきりさせたほうが集中できるから意識してそういう時間をつくっていました。フォルケに行く前も散歩はしていたけど、より高頻度で散歩の時間をとるようになりました。余白の時間をつくる意味をしっかり理解したと思います。

画像13

画像11


聞き手のあとがき  fromさき
ショートコース最終日、こうへいのチェックアウトを聞いているときに浮かんできたのは、シューマッハカレッジを作ったサティシュ・クマールの「アーティストとは特別な人のことではない。誰もが特別なアーティスト」という言葉でした。

表現することや作り出すことは才能に恵まれた人の特権のように思い込んでしまうと、どんどん作る側から享受する側/消費する側に慣れていってしまう。実は私たちの中にすでにある、つくりだせる力に再会するための小さな夢中に触れる瞬間。そんな余白の時間を大事にしていきたいなと思いました。

最後にもうひとつ、サティシュの言葉を。
「本来の教育とは、知識を詰め込むことではない。すでに備えられている“アーティストとしての自分”に気づくこと」

(ライター&編集者:Compathインターン/森山寛菜)


【お知らせ】2021.08.21~ compathミドルコースがスタートします!

8月からついにcompathのミドルコースをスタートさせます!
compathにとっては初めてのチャレンジになりますので、一緒にいろんな実験を楽しんでくれる10名の参加者であり仲間を募集します。

・開催日時:2021年8月24日(火)から9月20日(月)
・場所:北海道東川町 

~こんな人におすすめ~
・10月以降に転職予定。再スタート前に整理する時間が欲しい人
・この先も頑張りたいからこそ一呼吸。紡ぎ直すための夏休みがほしい人
・オンラインでなかなか実現できないけど、外の世界に触れたい、新しい考え方や人と出会いたい人

余白を取り共に暮らし学ぶこと、地域に暮らし社会の手触り感を感じることを大事にする1ヶ月にできたらと思います。
詳しくは上記の記事をご覧ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?