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【レポート】多様な仲間と過ごした、心地よい8日間 ー週末フォルケ参加レポート/前編ー

はじめまして!本田詩織と申します。11月に、Compath初となる「週末フォルケ」に、メンバーの一人として参加してきました。

このレポートでは、8日間のプログラムを通して経験したことや感じたこと、8日間をどう過ごしたかなどをお伝えします。「Compathのフォルケホイスコーレってどんな場所?」「仕事をしながらの参加は本当に可能?」など、私自身も参加にあたり気になっていたことにも触れながら、お届けできればと思います。

1.私が「週末フォルケ」に参加した理由

私は普段、NPO職員として広報の仕事をしています。元々東京と福島の二拠点で生活していましたが、今年の10月に福岡市に移住。そのタイミングで社内異動し、フルリモートという仕事環境になりました。
Compath共同代表の安井早紀(さきちゃん)と遠又香(かおる)の2人とは、大学時代からの友人。今回私が週末フォルケに参加した理由は2つで、「友人二人が作ったフォルケホイスコーレ(以下、フォルケ)はどんな所なんだろう?」という興味と、「引越しなどもあり暮らし方が大きく変わった今年、東川町で少しゆっくりしながらこれからのことを考えたい」というものでした。

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↑最終日に撮ったお気に入りの1枚。写真前列右から、かおる・さきちゃん・私と、8日間を一緒に過ごしたみんな


そして週末フォルケへの参加の決定打となったのは、「仕事しながら参加できる」こと。前回開催された秋のショートコースは仕事を休んで参加することが前提の、7日間連続プログラム。私は仕事の都合がつかず断念したので、仕事もフォルケも両どりできる今回のプログラムは自分にぴったりでした。

2.多様な仲間たちと過ごした、心地よい8日間

フォルケの魅力の一つは、様々な人との出会い。今回のフォルケでも、東川町で暮らす人、一緒に過ごすメンバー、偶然フォルケの開催時期と同じタイミングで居合わせた町外の人、様々な人との出会いがありました。なかでも全行程を共に過ごしたメンバーは、8日間を通して大切な仲間になりました。

メンバーと初めて顔を合わせたのは、週末フォルケの直前の平日夜に行われた「週末フォルケDay0」。「どんな人が集まったんだろう」と緊張しながらZoomに入ると、想像していた以上に、年齢も所属も多様でした。下は1歳(参加者のお子さん)、上は50代までの14人。会社員もいれば学生もいる、そんな顔ぶれでした。

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↑ Day0で初めて集合したメンバー。
「所属によるメガネ(先入観)を外す」ということで会社名などの所属は伏せて自己紹介を行いました。
また、参加者のなかには家族で参加する人たちが2組もいて、フォルケ=ひとりで参加するものという自分のなかの固定観念が一つ外されました。(デンマークのフォルケでも家族で参加するケースはあるんでしょうか?気になります…!)

滞在中、平日の日中(9:00~19:00)は仕事など各人の時間にあて、それ以外の時間は14人+Compathの2人の16人で過ごすことが多くありました。

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それぞれ週末フォルケで出会うまで全く知らない人同士、そして、年齢も所属も異なるのに、ともに過ごす中で、日を追うごとに一つの共同体になっていく感覚がありました。

「なんで、この人たちと過ごすのはこんなに心地よいんだろう?」
それは、8日間を通して、そして今も私の頭の中にある問いです。まだ上手く消化しきれていないものの、少なくとも「集まったメンバーが多様であったこと」は、一つ大きな理由なのではないかと感じています。

今回集まった16人は年齢も、立場も、そして考え方や価値観も多様でした。でもこれが、私のような「30歳前後の人だけ」のような共通項の多い人たちだけが集まっている場所であれば、「心地よい」という感覚とは少し異なる読後感を持っていたのではないかと思います。(その場合の読後感は例えば、「強い共感」「刺激」など?ときには「ちょっとした嫉妬心」なんかも芽生えそう。)日常的には、同質性が高い人たちとの接点が多いからこそ、週末フォルケでの多様性のあるコミュニティに安心感を抱いたのかもしれません。

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16人で過ごした8日間。印象ったワークショップや体験を中心に、振り返って見たいと思います。

・五感を使って自分を表現。「自分を味で表現してみると?」

全員が東川町に集まったDay1。お互いにちょっと緊張も残るなか、簡単な自己紹介を挟んで行ったのが、「自分を味で表現してみると?」というワーク。後ろのテーブルには20種類以上のスパイスや調味料が並びます。それをパレットに見立てた大皿に取って行き、キャンバスに見立てた小さな木皿の上に、自分のインスピレーションに任せながら表現。

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趣味でやっていたりしない限り、社会人になると、こういう創作の機会ってめっきり減りますよね。私は小学校の図画工作の時間に戻ったかのような感覚で、夢中でキャンバスに向き合っていました。

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最後に、作品にタイトルを付け、出来上がった人からテーブルに並べていきます。その後、みんなで鑑賞会。

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タイトルの付け方の時点で、一人一人のオリジナリティがにじみ出ています。キャンバスに描かれた絵も、素材を並べるスタイルの人もいればしっかり混ぜ切っている人もいます。

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チャイが大好きな私は、素材の中にガラムマサラやシナモンがあったことからインスピレーションを受け、チャイの素材をキャンバスに集め、最後にその上に大きな宝石をイメージして、はちみつを載せました。そして作品の紹介は、お題が「自分を味で表現してみると?」なので、自然と「作品を通して自分について話をする」形になります。「はじめまして」の人に、「私はチャイが好きで」とか、「ちょっとしたかわいいものをファッションに取り入れるのが好きで」とか、普段の自己紹介では絶対話さないですが、手元に作品があったおかげか気取らず自分のことを話せた気がします。

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他の人の作品紹介からも、言葉だけでの自己紹介だったらなかなか出てこないであろう、その人の価値観や、大切にしている言葉や人の存在など、その人らしさがにじみ出てくる自己紹介を聞くことができました。

・民主主義社会に必要な“筋肉”を鍛える「Democracy Fitness」

8日間のプログラムの間、月・水・金の朝だけ、朝食後に用意されていたコンテンツが「Democracy Fitness」。少し話はそれますが、フォルケ発祥の国デンマークでは、「デモクラシー(民主主義)」が人々の中にしっかり根付いていると言われています。そして、フォルケは「民主主義」と切っても切れない関係でもあります。

Democracy Fitnessは、民主主義に必要ないろいろな考え方やスキルを筋肉にたとえ、一つ一つを鍛えていく体操としてデンマークで生まれたものだそう。私たちは、月・水・金の3日間で、8種(+1)あるという言われる”デモクラ筋”のなかで、「傾聴マッスル(The Active Listening Muscle)」「反対マッスル(The Disagreement Muscle)」「動員マッスル(The Mobilization Muscle)」を鍛えるトレーニングをしました。

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個人的に一番印象に残ったのは「傾聴マッスル(The Active Listening Muscle)」の回。というのも、普段いかに自分が「傾聴しているフリ」をしていたかに気づかされたからです。

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このフィットネスの進め方は、こんな感じです。

2人一組を作り、まず最初にAさんがあるお題に対して話している間、Bさんは目隠しをして、Aさんの話に集中します。その時Bさんは、Aさんの話を遮ることなく、ただ話を聞き続けます。そのあとBさんは目隠しを取り、Aさんの話した内容を復唱します。最後に、BさんはAさんに一つだけ質問をすることができます。

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私は自分がBさん役をやっているときに、つい質問や共感を伝えたくて、何度も口を挟みそうになりました。またAさんが話したことを復唱をしなければならないといので、相手の話していることに集中することに意識が向きましたが、普段であれば「この話にどんなコメントをしようか」と考えていたり、よそ事を考えていたりと、相手の話していることに集中できていなかったことに気づかされたのです。一方で、Bさんの役をやってみて感じたのは、自分が話している途中で遮りが入らないことで、混乱することなく、伝えたいことを安心して話すことができました。

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これを機に、誰かと話をする際には、傾聴筋を意識するようになりました。でも意識しないとすぐにそれまでの癖が出てきてしまうので、フィットネスという名の通り、繰り返し鍛えることが大切みたいです。

・「北の住まい設計社」で感じた、作り手のこだわり

平日の日中は自由時間として、それぞれが仕事などに充てていましたが、希望制で東川町を”探究する時間”もありました。
個人で旭川市に出かけたり、農場のお手伝いに行ったり。プログラムとして用意されていたというよりは、場と参加者の中で自然に生まれてたものが多くありました。

「北の住まい設計社」での見学は、そんな東川町を”探究する時間”の一つとして、東川町役場の畠田さんが提案してくださった企画。ある日の昼下がりにみんなで見学に行きました。
北の住まい設計社は、東川町の山奥、元々小学校だった校舎に作業場を構え、家具などを制作されています。

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この日は、北の住まい設計社のスタッフの方が、材木置き場から作業場に至る敷地内の隅々まで2時間くらいかけて案内してくださり、北の住まい設計社の家具づくりについて話を聞くことができました。

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東川の地で環境に配慮しこだわりを持って家具づくりをされている、ということは知っていたものの、話を聞いて、その徹底したこだわりに私は驚きました。

北の住まい設計社では、100年使ってもらうことを前提に家具を作るそうです。それは、木が1本育つために100年近くの時間がかかるから。木を使う家具だからこそ、材料となる木や森を育てることも考える。言葉で書くと当たり前のように感じても、それを実現している商品が多くは存在していないように感じます。

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他にも素材のこと。北の住まい設計社の家具は、丸太から切り出したままの「無垢材」から作られています。
一般的に家具の素材としてよく用いられる「合板」は、薄くスライスした単板(ベニヤ)を何枚も接着したもので、そこにはボンドが使われています。ボンドには化学物質が含まれているため、その合板を使った家具を処分する際には、環境に配慮すると燃やすことはできず、また土に還るまでにも無垢材に比べて長い時間がかかるそうです。
だから、北の住まい設計社では「合板」ではなく「無垢材」を使用するのだと。
かつては技術的な面で無垢材の使用が難しいパーツのみ合板を使っていたそうですが、技術力を高め、今では無垢材のみで家具を製作できるようになったそうです。

「ほとんど無垢材だから、いいか」ではなく、「この小さな部品まで、全て環境に配慮して無垢材にしよう」。

北の住まい設計社が東川の地で家具づくりをはじめたのは30年以上前のこと。大量生産・大量消費が当たり前だった当時から、自分たちの大切にしたいことをぶらさず、理想に近づくために様々な壁を越えてきた姿勢に、私は強く惹かれました。

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私自身、家具を選ぶ時には、無垢材か合板か?などということよりも、価格の安さ、デザインの好みなどで選んでいた部分があります。また、材料である木が育つまでのことと、目の前にある商品について紐づけて考えたこともありませんでした。「作り手のこだわり」も、デザインなどの目に触れる部分だけに求めていたのだと思います。「ものづくりに“こだわる”とは、どういうことなのか?」「買う側の責任とは?」、そんな問いを受け取ったような感覚で北の住まい設計社の見学を終えました。

・なんでもない余白、雑談を楽しむ

こうやって1つ1つ体験したことを書くと、なんだかスタディーツアーやイベントのような類に参加したような見え方になってしまうのですが、この週末フォルケがそういった機会と異なると感じたのは、前後にたっぷりとした「余白」があること。朝昼晩のご飯を食べているとき、ちょっとした移動時間、夜のチェックアウトの時間など、特に意図されていない自由な時間な時間があり、そのなかでメンバー同士で感じたこと考えたことを対話したり、はたまた一人で内省したりしていました。

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北の住まい設計社に行った日も、そのあとゆったりと余白を楽しみました。対話する中で自分が持っていた問いが解消されたり、持続可能な暮らしにしていくために日々の暮らしレベルでどんなことができそうか考えられたりと、一段と思考を深めることができたように感じています。

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↑ 8日間のひとコマたち。特に夕ご飯は、リモートワークでずっとパソコン画面と向き合う日中から、リアルの世界に“帰ってきた”感じがあって、とても好きな時間でした。

長くなってしまったので、後編に続きます。
後編では、東川に暮らす人たちとの出会い・そこからの発見と、平日のお仕事環境の話もできればと思います!


次回は2021年5月23日〜5月30日に開催するそうです。
↓興味ある方はぜひご覧ください!↓


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