見出し画像

【enlightenment vol.3】静かな余白の時間で出会う「ニュートラル」な自分。


デンマークで175年の歴史を持つ独特の教育機関「フォルケホイスコーレ」
17.5歳以上であれば、いつでもだれでも入学でき、在学中はテストも成績も一切ない。全寮制で、いろんな年代や背景を持つ人が一緒に暮らしながら学んでいくフォルケホイスコーレは、「人生を学ぶ学校」と言われています。

日本からすれば「普通」ではない学校。そして、学位も資格もないので、自分が学んだ価値が見えにくい学校でもあります。
でも、その「目に見えない価値」があるから、今でもたくさんの人がフォルケに通い続けているのだと思います。
今回はデンマークのフォルケホイスコーレへ留学した人たちにインタビューをして、「フォルケで学んだ大切なこと」について一緒に探求していきます。

フォルケホイスコーレの詳しい内容はこちらから↓



<ゲストプロフィール>

スクリーンショット (61)


私を「ニュートラル」に戻してくれた余白の時間と人の多様性

ーななさん今日はよろしくお願いします!早速ですが、フォルケ留学を通してななさん自身に変化はありましたか?
 私の感覚では、フォルケに行って、自分自身が大きく変化したとは思っていなくて。むしろ、フォルケに行ったことで、変わらない「ニュートラルな自分」を知れたような気がしています。

ー「ニュートラルな自分」ですか。
 そう。私はフォルケで初めて、何のしがらみのない状態で私と向き合うことができて、私は本来こういうキャラクターなんだと知ることが出来たんです。

ー「何のしがらみのない状態」っていい言葉ですね。それってフォルケのどういう体験で気づけるんですか?
 フォルケの中で過ごす余白の時間ですね。フォルケって授業がお昼3時くらいに終わったら、それ以降はフリータイムなんです。ご飯を食べる時間以外は何をしてもいい。加えて、授業の宿題もそこまで多くはないので、自分の好きなことを好きなだけできる環境でした。それだけ何もない時間があると、自由すぎて、自分が何をしたらいいのか分からなくなる(笑)。でも、そんな自由な時間に思い付くやりたいことって、本当に自分が心から望んだやりたいことじゃないですか。そうやって、たくさんの余白の時間が自分の声を聞こえやすくしてくれたなと思います。


ー確かに、日本にいると、組織の意向に沿って動かないといけない時が多いので、自分の意思に素直になれない時が多いですよね。何もない余白の時間だからこそ、自分のやりたいことに向き合えるというか。
 そうですね。フォルケにいる人の多様性も大きく関係していると思います。私が行ったフォルケはさまざまな背景を持った、個性豊かな人が集まっていました。みんなで最初に自己紹介をすると、それぞれ話す内容も、発表の仕方も全然違う。高校を卒業後に次の進路を決めるためにフォルケに来る人もいれば、私のように一度社会人を経験してから自分と向き合うために来る人もいます。それだけ国籍や年齢、価値観も、文化も違う人が生活を共にしていると、一人一人が違う人間であることが実感を伴って理解できます。そうなると、自分を他人と比較することが出来なくなり、自分軸で物事を判断するしかなくなってくる。その環境がニュートラルな自分に出会わせてくれたのかなと思います。

ー人との違いをより身近に感じることで、自分のニュートラルな部分が見えてきたんですね。面白い。


画像4


対話する相手を「鏡に映った自分」ととらえるデンマークの関係性


ーフォルケは多様な人が集まると伺いましたが、価値観が違う人と関係性を築くのってすごく大変じゃないですか?
 そうですね。私はフォルケに留学することに不安はなかったのですが、フォルケで大勢の人と一緒に暮らすことに関しては少し不安でした。でも、フォルケで出会った友人たちは人との距離感を保つのがすごく上手だったんですね。無関心でもなく過干渉でもなく、という心地のいい距離感を作ってくれたので、大勢で過ごしていても違和感なく過ごせたと思います。
 あと、みんなで日頃から話していましたね。デンマークでは正解を求める前によく議論することを大事にしているようで、フォルケでもいろんな話をしました。ある時、私がデンマーク人の友人に「幸せって何?」という質問をしたんですね。この質問って深く難しい話だから、なかなか答えられないかもと思ったんですが、彼らはすぐにこう答えてくれたんです。「デンマークでは平等な教育機会や社会保障など、国や他者が与えてくれるものはたしかにある。でも私の幸せは、私しか決められない。幸せは外からやってくるものではなくて、自分の内側で決まるものなんだよ」
 彼らは常日頃からいろんなことを考えていて、用意された正解というより、自分が今思っていることを話してくれる。その人の価値観や文化を知ることが出来るので、自然とお互いの距離は縮まったような気がします。

ーでも、それだけで価値観が違う人に共感したりすることは難しくないですか?
 IPCの校長先生はよく人との関係性を「相手は自分の鏡だ」と表現していました。相手は自分とは違うけど、相手は自分のいろんな部分と向き合わせてくれる存在でもある。だから、どこかに自分は相手であり、相手は自分であるみたいな感覚を持っているんだと思います。だから、根本的には「お互いに違う人間だよね」という価値観を持っていながら、どこかで「相手は自分であるかもしれない」という感覚も持っている。そのちょっとした矛盾が居心地のいい距離感を作ってくれているのかもしれません。


画像2


フォルケは自分が存在することだけで肯定される場所。でも、「在る」ことってすごく難しい


ー今まで聞いてきた中で、「ニュートラルな自分」というのがキーワードでしたが、その自分を見つけて、帰国後に変化はありましたか?
 留学前より、自分の状態がはっきり分かるようになりました。フォルケで出会った自分を基準に、「今、自分は無理しているな」とか「疲れているんだな」といったコンディションをつかめるようになったので、それはすごくよかったなと思います。日本にいると、どうしても周りのペースに合わせないといけない部分も多いですが、それでも自分の声を聴きながら過ごせているのはすごく健康的だなと思っています。

ー素敵ですね。ここまでフォルケの話をしてきましたが、ななさんにとってフォルケはどんな場所でしたか? 
 たとえ何もしなくても存在を肯定してくれる場所だったと思います。その安心感があったから、ニュートラルな自分を見つけることが出来たんだと思うし、そこから自分の「在り方」を見出すことが出来たんだと思います。
 一方で、「自分がそこに居るだけでいいのか」という迷いも生まれます。「何かしないといけないんじゃないか」といった迷いや揺らぎが、また自分と向き合う学びを与えてくれる。日本に帰ってきた後もその揺らぎに直面していますが、そこから学びを得られると思えるだけで、自分が揺らぐことをポジティブに捉えられるようになったと思います。フォルケは自分の「在り方」を模索するすごくいい環境でした。

ー人は在ることを肯定されることで、初めて自分を向き合えるのかもしれませんね。今日はありがとうございました!
 こちらこそ、ありがとうございました!

画像3


<聞き手のあとがき by 安井早紀>
デンマークでフォルケホイスコーレってどういうところ?と聞いたら、"Become who you are"な場所、と返ってきました。何かが得られる、何者かになれるではなく、まさにななさんのいう「ニュートラルな自分に出会う」場所。

「ニュートラル="いずれにも片寄らないさま、中立的、中間的"」

周りの価値観に引きずられて、自分の真ん中をどこに置いたらいいかわからないときに、旅をして一人の時間をとる人が多いと思いますが、たくさんの人と共に居るからこそ、ニュートラルを見つける方法もある、ということを伝えてくれたななさんのインタビューでした。

"どうしようもなく一人一人違う人間であること。そうすると違うことが気にならなくなる -- 根本的には「お互いに違う人間だよね」という価値観を持っていながら、どこかで「相手は自分であるかもしれない」という感覚"


【お知らせ】2021.08.21~ compathミドルコースがスタートします!


8月からついにcompathのミドルコースをスタートさせます!
compathにとっては初めてのチャレンジになりますので、一緒にいろんな実験を楽しんでくれる10名の参加者であり仲間を募集します。

・開催日時:2021年8月24日(火)から9月20日(月)
・場所:北海道東川町 

~こんな人におすすめ~
・10月以降に転職予定。再スタート前に整理する時間が欲しい人
・この先も頑張りたいからこそ一呼吸。紡ぎ直すための夏休みがほしい人
・オンラインでなかなか実現できないけど、外の世界に触れたい、新しい考え方や人と出会いたい人

余白を取り共に暮らし学ぶこと、地域に暮らし社会の手触り感を感じることを大事にする1ヶ月にできたらと思います。
詳しくは上記の記事をご覧ください。

(執筆/編集 compathインターン外村祐理子)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?