マガジンのカバー画像

まなかい ローカル72候マラソン

71
まなかい… 行きかいの風景を24節気72候を手すりに 放してしるべとします。                                        万葉集        …
運営しているクリエイター

#ミタマノフユ

まなかい;冬至 第65候『麋角解(しかのつのおつる)』

まなかい;冬至 第65候『麋角解(しかのつのおつる)』

鹿に憧れる。

頭に2本も「木」が生えているから。

きっと角は依代。アンテナ。

そういえば、門松は一対だ。

赤坂氷川神社に奉納させていただいた「花手水」は、お正月らしくということで、横に渡した竹に一対の竹の器を立て、苔のついた槇、松、白梅を挿した。苔の生えた槇の古木はちょっと威厳のある角にも見える。松は千代の命を寿ぐ。

鹿の角は木にそっくりだから、あの角に花が咲き、葉っぱが生え、実がなった

もっとみる
まなかい; 冬至 『第66候・雪下出麦(ゆきわたりてむぎいづる)』

まなかい; 冬至 『第66候・雪下出麦(ゆきわたりてむぎいづる)』

冬至から1週間ほど経って、斜めに挿し込む陽光が透かす樹影が揺れるのを見るともなく見ていた。ちらちらゆらゆら陽炎のような動きは止むことはない。光と風の永久運動に見惚れているうち、冬至でしばししんとした命がもう動き出している、そんな小さな音が波が寄せるように聞こえてきた。

今年の大晦日は、都心から出ていない。とても静かだった。電車が深夜走っていなかったこともあったが、外出を控える人が多かったのだろう

もっとみる
まなかい;冬至 第64候『乃東生(なつかれくさしょうず)』

まなかい;冬至 第64候『乃東生(なつかれくさしょうず)』

「優しく癒す」が花言葉の乃東。「夏枯草(かごそう)」「靫(うつぼ)草」「空穂草」、5月頃から咲いてくるので「郭公草」など、複数の名を持っている。

この草は、夏至の初候と冬至の初候として名があり、生死一対で表されている。

冬の極まるとき、夏の極まるとき、それぞれでその生と死を思い遣る。日の光が最も弱まるとき、この草は夏の草原の輝きを秘めて既に震えはじめ、夏の極まった風の渡る草地では、花の跡がカラ

もっとみる
まなかい; 大雪  第63候 『鱖魚群(さけのうおむらがる)』

まなかい; 大雪 第63候 『鱖魚群(さけのうおむらがる)』

「母川回帰」というそうだ。

鮭の仲間が生まれた川の匂いを覚えていて、三年以上回遊した海から生まれた川に戻ること。それは最後の旅で、多くの種類は生涯に一回だけ放精あるいは放卵して死んでしまう。

渡鳥とか、海亀の産卵など、そうした母なる場所へ帰ってくるセンサーというのは、地球の律動のままに生きている彼らならきっと特別なことではないのだろう。

震災後はじめた「めぐり花」は、花の連句。

上の句とし

もっとみる
まなかい;大雪 第62候「熊蟄穴「くまあなにこもる)」

まなかい;大雪 第62候「熊蟄穴「くまあなにこもる)」

平安時代から江戸時代まで長く使われた唐の時代の暦「宣明暦」では「虎始交(とらはじめてつるむ)」だったそうだ。日本には虎はいないから、身近な熊の生態に目を向けたのだろう。

都会でも、早い春にお庭や畑の手入れをすると、冬眠中の蜥蜴や蟾蜍の穴を開けてびっくりすることがある。変温動物の彼らはほぼ仮死状態で動けないので「あ、ごめん、、、」とそのまま元に戻して、なんとなく後から思い出して申し訳ないと思いつつ

もっとみる