2021年1月の記事一覧
まなかい;大雪 第72候 鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)
71候から続く。
一緒に笑ったその犬は、2度と暗い家には入らなかった。
家の並びに芝地があって、そこに立って、真っ直ぐに丘の向こうを見つめている。白い秋田犬と芝犬を合わせたような雰囲気の日本犬に姿が変わっていた。
大きな堂々とした白い胸を張って、光っている。
何を見て居るの?と聞いても、じっとそちらを見つめたままだ。黒い瞳でじっと見つめるその先。
さっきは二人で夕日を見ていた丘。そちらを
まなかい;大寒 第71候・水沢腹堅(さわみずこおりつめる)
深層意識に棲んでいるかつての自分に、会いにいった。
僕は前世のどこかで犬だったというので、いつか見たことのあるビジョンを伝えると、それだという。
草原の丘に建つ一軒家の木の家で、暗い部屋の中からずっと明るい緑の草原と、光を見ている。大きな毛足の短い白い犬で、傍に大きい木のテーブルの脚が見え、赤っぽいペルシャ絨毯のような敷物の、多分上に寝そべっている。その視点で、開いた扉の向こうをじっと見て
まなかい;小寒 第69候・雉始雊(きじはじめてなく)
青山のビルの屋上改修工事が始まって二日目。寒中だというのに、春のような日だった。都会の空は霞がかっていた。
こんな春めいた日なら、早くも雉は鳴くかもしれない。こんなビルの荒野には鴉が舞うくらいしか見えないが、この辺りも武蔵野と呼ばれた頃には鳴き声が響き渡っていたかもしれない。かつては多摩丘陵などで狩りをすると、明治の頃は3日間の猟で1500羽以上獲れたそうだ(中西悟堂『鳥を語る』より)。
繁殖
まなかい;小寒 第68候・水泉動(しみずあたたかをふくむ)
「寒中丑紅」… 本紅は寒中の冷たい清らかな水で作られるものが良いとされた。寒中の「丑の日」に作られたものが特に薬効が高く、唇の荒れに効果があるとか、口中の虫を殺すなどと評判が立っていた。紅は唇を彩るものだから、舌で触れるなどして体内に入りやすい。紅花から抽出された本紅であれば、むしろお薬となる。お猪口に刷かれた紅の表面は玉虫色。薬指や筆で濡らすと、ふわっとほどけて赤となる。
小寒から数えて九日目
まなかい; 冬至 『第66候・雪下出麦(ゆきわたりてむぎいづる)』
冬至から1週間ほど経って、斜めに挿し込む陽光が透かす樹影が揺れるのを見るともなく見ていた。ちらちらゆらゆら陽炎のような動きは止むことはない。光と風の永久運動に見惚れているうち、冬至でしばししんとした命がもう動き出している、そんな小さな音が波が寄せるように聞こえてきた。
今年の大晦日は、都心から出ていない。とても静かだった。電車が深夜走っていなかったこともあったが、外出を控える人が多かったのだろう