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2020年12月の記事一覧
まなかい; 大雪 第63候 『鱖魚群(さけのうおむらがる)』
「母川回帰」というそうだ。
鮭の仲間が生まれた川の匂いを覚えていて、三年以上回遊した海から生まれた川に戻ること。それは最後の旅で、多くの種類は生涯に一回だけ放精あるいは放卵して死んでしまう。
渡鳥とか、海亀の産卵など、そうした母なる場所へ帰ってくるセンサーというのは、地球の律動のままに生きている彼らならきっと特別なことではないのだろう。
震災後はじめた「めぐり花」は、花の連句。
上の句とし
まなかい;大雪 第62候「熊蟄穴「くまあなにこもる)」
平安時代から江戸時代まで長く使われた唐の時代の暦「宣明暦」では「虎始交(とらはじめてつるむ)」だったそうだ。日本には虎はいないから、身近な熊の生態に目を向けたのだろう。
都会でも、早い春にお庭や畑の手入れをすると、冬眠中の蜥蜴や蟾蜍の穴を開けてびっくりすることがある。変温動物の彼らはほぼ仮死状態で動けないので「あ、ごめん、、、」とそのまま元に戻して、なんとなく後から思い出して申し訳ないと思いつつ
まなかい;小雪 第60候『橘始黄(たちばなはじめてきばむ)』
橘は伝説の木。
徐福伝説は各地にあるし、垂仁天皇は田島守にこの実を探しに行かせたという。
別名は「非時香具実(ときじくかぐのこのみ)」。
橘は『夏は来ぬ』でも「橘の香る 軒端の」と歌われ、
太陽エネルギーをたくさん吸い込んだ果実も香り高く、また輝くような色だ。
だから「かぐのこのみ」の「かぐ」にはおそらくその二つの意味、かぐわしいと、かがやくを併せ持っていることだろう。
仙境に生えると
まなかい;大雪 第61候『閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)』
天地の気が塞がっていよいよ冬。
そういえば車の暖房を入れるようになった。車は鉄の箱でよく冷える。
灰色の雲が低く垂れ込める日が増えた。光は低くなり、熱量が減る。
斜めの光はまだ落ちきらないもみじした葉を透かす。きれいではあるけれど、本来の紅葉の輝きとはちょっと違う。それでも半ば透き通った儚げな色は慰謝になる。
先はなかなか見通せないが、植物のように粛々と何も諦めることなく、静かな冬の眠りを