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パンフルートの響きとピクニック at ハンギング・ロック

最近、家のすぐ前のバス停を通るバスが、渋谷の映画館前まで直に連れて行ってくれることに気づき、よく出かけるようになりました。

そんな中、とても懐かしい映画の予告を見ました。Picnic at hanging rockというオーストラリア映画です。

予告で流れる音楽を聞いて、一気に映画を見た頃のことを思い出しました。この印象的な響きが、パンフルートという楽器の音であると知ったのはこの時です。

当時はインターネットもないので気軽に調べる手立てもなく、パンフレットだけが情報源でした。再上映やテレビ放映があったのかもしれませんがそれに気づくこともなく、とても美しく神秘的な映画、というイメージだけ残して長らく私の目の前から存在を消していた映画でした。

神秘的なストーリー

1900年2月14日、オーストラリアの寄宿制女学校の生徒たちが、ハンギングロックと呼ばれる岩山にピクニックに出掛け、教師1人を含め4人が行方不明になるというストーリーです。あたかも実話の神隠し事件をもとにしたように見えますが、オリジナルの物語のようです。

少女たちは、普段の抑圧された生活から解き放たれたように、岩山でまったり時間を過ごします。そのうち、4人が「岩を調べたい」(←これが訳がわからないのですが)と言って岩山を登り始めます。

そこで不思議なことが次々に起きます。時計が12時で止まってしまったり、岩山に登った少女たちがにわかに眠くなりその場に眠り込み、目が覚めた後フラフラとさらに登って行き、そこで消息がわからなくなります。少女の1人は恐怖を感じて行動を別にし、叫びながら山を降りてきます。しかしいつの間にか年配の女性教師も1人いなくなり、結局4人の行方不明者を出すという、学校行事としては大惨事のまま一行は学校に戻ります。

1週間後に1人発見されますがなぜか無傷で、記憶がありません。学校は悪いうわさが続いて、校長はその後亡くなってしまいます。

見どころ

神秘的なストーリーが魅力の本作ですが、それは美しい風景、美しい少女たち、そして美しくかつ恐怖さえ感じさせる鋭い音楽がひとつになってこそ、観客に迫ってくるのだと思います。

特に生徒の1人ミランダは、先生が「ボッティチェリの天使のよう」というように現実離れした美少女で、風景の美しさともあいまって絵画の一部のように見えます。

一方、何か俗なものも匂わせています。唯一発見された少女がコルセットをしていなかったり、消息を絶った女性教師がスカートを履かず下着だけで登っていくのが見えたとの証言があったり…。現地に来ていた若者たちが少女たちに注目していたことも描かれていて、何か事件に巻き込まれたのでは…という可能性も伺わせます。

でも、この映画は真相を探るものではなく、神秘的な雰囲気に飲み込まれることを楽しむ映画だと私は思っています。

圧倒的な音楽とルーツの発見

数十年ぶりに映画を見た印象は、こんなにも音楽の効果が圧倒的だったんだ!ということでした。

ゲオルゲ・ザンフィルというパンフルート奏者の演奏が圧巻で、あまりにも映画の雰囲気に合っているのです。ただ美しいのではなく、何か動物の鳴き声のようにも聞こえ、自然の厳しさを含んだような独特の音色です。

すっかり忘れていたのですが、潜在的に私はこの映画の影響を受けており、自分の作る曲にこれまでパンフルートを比較的多用してきました。映画を見ることで、ああ、これだったんだ!と腑に落ちました。

パンフルート演奏以外も素晴らしく、サウンドトラックがあったらぜひ入手したいのですが見つけられていません。どなたかご存知でしたら教えて下さい。

このところ忙しく、noteもなかなか投稿できていない中、無理して映画を見に行って本当によかったと思いました。



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