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漫画原作:『シバセン~紫馬 詮の事件推理帖~』第1話

タグ:#第1話,#漫画原作,#シナリオ形式,#漫画#,マンガ,#推理モノ,#サスペンス,#ミステリー,#歴史学者,#大学

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『シバセン~紫馬 詮の事件推理帖~』第1話シナリオ(マンガ原作形式)

凡例:

文章間に挿入された▼記号は、そこでマンガの該当ページが開始することを示す。

文章間に挿入された●記号は、そこでマンガのコマが変わることを示す。

文章間に挿入された2つの●記号は、そこでマンガのページが切り替わることを示す。

文章間に挿入された▲記号は、そこでマンガの該当ページが終了することを示す。

基本的にそのコマに入る、「 」でくくられた、擬音・字幕・独白・セリフ・解説を先に
記載している。
次いで、そのコマに入る背景や人物の情報が記載されている。
この2つと文章間に挿入された●記号でマンガの1コマに入る情報を区別している。

人名の後の「 」の中には、その人物のセリフが入る。

人名独白の後の「 」の中には、その人物の心の中のつぶやきが入る。

字幕の後の「 」の中には、5W1Hを説明する文が入る。

擬音の後の「 」の中には、そのコマに必要な効果音が入る。

解説の後の「 」の中には、作者の事項に対する解説文が入る。

「 」の中の( )はセリフのルビを示す。

「 」の中の" "はセリフの強調を示す。

( )は、( )の時点で、場面転換・時間経過・画面暗転が発生し、前のコマと次のコ
マとの間でストーリーが転換することを示す。

セリフなどの後の、背景や人物情報などを記載する文章の中の『 』や「 」は、背景や
事物に、カッコ中の文章が記載されることを示す。 

※は、該当コマを作画化する上での注釈や作者の意図を示す。


1ページ


『シバセン~紫馬 詮の事件推理帖~』

第1話 「哀しみのツインシスターズ その1」

扉絵イメージ:
仏頂面で遠くを見据える主人公の紫馬 詮(しば せん)の上半身のアップ。
整えられた七三の髪型で口元にはトレードマークとなる口髭。
仕立てのよい背広姿で。上着の下にはベストを着こんでいる。
ネクタイは紫色で、白い馬の図柄が描かれている。
上着右胸のポケットには、紫色のハンカチが挿し込まれている。
そんな紫馬を、オドオドした表情で見る元教え子で刑事の青砥 鉄(あおと てつ)と、虫の好かない表情をした青砥の先輩刑事である星 求太郎(ほし きゅうたろう)の上半身アップ。
2人とも刑事らしい背広姿で。
背景には、紫馬の研究対象である、歴史史料(古文書の巻物や、古記録の冊子、鎧兜や、刀剣など)が描かれている。
※紫馬と教え子の青砥、民間人でインテリ学者を快く思わない星の関係が読者に伝わるように。

2―3ページ


字幕「宮城県 仙台市」
JR仙台駅の西口外観。
※5月の新緑の季節という設定。天気は、晴れ。

「青葉国際文化大学」と縦書きでしるされた古めかしい銘板のついたコンクリート製の門柱の奥に、大学のシンボルである3階建ての洋館風の本館がそびえている。

擬音「イライラ」
擬音「キョロ キョロ」
右の親指と人差し指でタバコをつまみながら、虫の好かない顔でアスファルトで舗装されたキャンパスを歩く刑事の星 求太郎(ほし きゅうたろう)。
星の少し後ろを、顔を左右に向けながら歩く後輩刑事の青砥 鉄(あおと てつ)。
画面左手には、学生用の掲示物を張り出した掲示板が並んでいる。画面右手には、プラスチック製の3~4人掛けのベンチとともに、灰皿スタンドが置かれている。
※青砥は、母校のキャンパスに久しぶりに戻って懐かしさに浸っている。
※2人の服装は、扉絵同様にスーツ姿で。

字幕「星 求太郎(ほし きゅうたろう) 宮城県警 刑事」
擬音「ポイ」
星「あ~面白くねえ!!」
星「なんで インテリの大学教授(センセイ)に 聞き込みしなきゃなんねえんだ!」
口をへの字に結んだムスッとした表情の星の上半身のアップ。
右手につまんだ吸いかけのタバコを指で投げ飛ばす。

アスファルトの地面に落ちたタバコの吸い殻。

怪訝(けげん)そうな表情でその様子を眺める数人の学生たち。


しゃがみ込んで、星の捨てた吸い殻を指で拾う青砥。

青砥は右手の親指・人差指・中指で握った吸い殻を灰皿スタンドの中にを入れる。

社会人として相応しい振る舞いをする青砥の姿を見て、笑顔を見せる先程の学生たち。
※星と青砥との性格の対比を読者に印象づける。大学OBとして、社会人として相応しい振る舞いをする青砥が好感の持てる人物であるように。

擬音「ギロリ」
星「鉄(てつ)ぅ…お前の恩師(センセイ)ってのは どんな人(ヤツ)なんだ?」
立ち止まり、後ろを振り向いて凄みを効かせた表情で、青砥に話しかける星。
※学者やインテリといった高学歴の人間が嫌いな星の性格を読者に印象づける。また、青砥が大学の卒業生であることを読者に知らせる。

字幕「青砥 鉄(あおと てつ) 宮城県警 新米刑事(青国大OB)」
擬音「ドギマギ」
青砥「会えば…」
青砥「わかると思いますよ…」
ドギマギした表情の青砥の上半身のアップ。何か大事なことを隠すような、後ろめたさを感じさせる青砥。

(場面転換)

4―5ページ


5階建ての講義棟2F窓のアップ。大きく開かれた窓から、講義中の講義室内の様子が見て取れる。
※ややフカンの視点で室内の様子がわかるように描く。

紫馬「…11世紀中葉以降 国衙(こくが)は実質的な支配権を喪失し 太政官(だじょうかん)が訴えの受理・審理・裁定を行うようになってきました…」
100人近くの学生が講義を聴講している。学生は、大学生らしいカジュアルな格好。
真剣な表情で話を聞くもの、手元のノートに書き写しているもの、タブレットの画面で、レジュメ(講義の資料)を見るものなどさまざま。
講義室に史料を解説する主人公の紫馬 詮(しば あきら)の声が響いている。
※紫馬は、このページではまだ声だけの登場。次のページで登場をより強く読者に印象付けるため。
大学教授として学生に講義する日常を描くことで、歴史学者である紫馬の専門性・仕事ぶりを読者に印象づける。

擬音「ZZZ」
字幕「白瀬 兼輔(しらせ けんすけ) 青葉国際文化大学文学部歴史学科3年(日本史専攻)」
紫馬「それまでの前期王朝国家と異なり 中央政府が地方支配に大きく関わることになってきます…」
紫馬「その中で訴訟事項処理機関である弁官局(べんかんきょく)が実務処理機関として位置づけられるようになり…」
講義室の長机の一番通路側に座ったまま、机に突っ伏して居眠りをしている学生の白瀬 兼輔(しらせ けんすけ)。

擬音「コッ コッ」
紫馬「一卑姓(ひせい)氏族に過ぎなかった小槻氏(おづきし)が大夫史(たいふし)を世襲することになり…」
長机の間の通路を兼輔の元に歩いて近づいてくる紫馬の首から下の上半身のアップ。
右手には、500mlサイズの水の入ったペットボトルが握られている。
※紫馬の服装は、扉絵同様にスーツ姿で。この時点で表情はきちんと描かないで見せる。

擬音「ピタッ」
紫馬「官務家(かんむけ)としての小槻氏が成立するのです!」
長机に突っ伏して居眠りしている白瀬の前で立ち止まる紫馬。紫馬の人影が白瀬の上を覆っている。


擬音「ドバドバドバ!」
右手に持ったペットボトルの水を白瀬の頭に上からぶっかける紫馬。
※右手のペットボトルから勢いよく水が、白瀬の頭上に降り注いでいることがわかるような構図で。

擬音「ビクッ」
白瀬「うおっ! しゃっけぇ~!!」
目を丸くし、何事かと驚いた表情をして上体を起こす白瀬。
※「しゃっけぇ~」は冷たいを意味する東北地方の方言。

擬音「ガバッ」
白瀬「なにすん…」
勢いよく立ち上がる白瀬の上半身のアップ。頭部から水が滴り落ちている。

背広の上着右胸のアップ。ポケットに挿し込まれているハンカチを右手でつまむ紫馬。

6―7ページ


擬音「スッ」
字幕「紫馬 詮(しば あきら) 青葉国際文化大学 文学部歴史学科教授(日本中世史)」
紫馬「顔を洗ってきなさい…」
右手でつまんだハンカチを白瀬に差し出す紫馬の上半身のアップ。紫馬は、怒っているのではなく何事もなかったかのような冷静な顔で。
※やることは過激だが、学生への優しさも持ち合わせている紫馬の意外な性格を読者に印象づける。

擬音「カァ~」
顔を真っ赤にして恥ずかしがる兼輔の上半身のアップ。

講義室の出入口から廊下へ走り出す白瀬。
※後姿を描く。

入れ替わるように青砥と星が講義室の出入口から講義室に入ってくる。
※先程同様に星が先頭で。青砥は、走り去った白瀬の方に呆気にとられた表情をして顔を向けている。


擬音「ブー」
擬音「!」
講義時間終了をつげるブザーが講義室に鳴り響く。
話の腰を折られて、やや憮然とした表情の紫馬。

擬音「コッ コッ」
紫馬「続きは 次回!」
教壇に向けて通路歩く紫馬の後姿。右手には、空のペットボトルを握ったまま。

紫馬「それでは…諸君」
紫馬「来週(また) お会いしましょう!」
教壇の上の教卓に両手をおいて、学生たちに語り掛ける紫馬。

講義後の講義室。帰り支度をする学生たち。

長机の間の通路を星と青砥が教壇にいる紫馬に向かって歩いてくる。
※今度は、青砥が先頭になって。

8―9ページ


青砥「紫馬教授(せんせい)…お久しぶりです」
教卓の上に置かれた革製の四角い頑丈なカバンに講義の資料をしまい込んでいる紫馬。

擬音「!」
青砥に呼びかけられて、顔をあげて声のする正面をみる紫馬の上半身のアップ。

青砥「お久しぶりです…紫馬教授(せんせい)」
青砥「先生のゼミでお世話になった 青砥 鉄です」
恩師である紫馬に、お辞儀して挨拶する青砥。

紫馬「……」
表情を変えず、しばし無言で青砥を一瞥する紫馬。


紫馬「誰…だったかね?」
素知らぬ顔で仏頂面をした紫馬の顔のアップ。

擬音「!」
意外な紫馬の言葉に驚く青砥と、怪訝そうな表情で紫馬を見る星の上半身のアップ。

擬音「汗 汗」
青砥「あの…先生の日本中世史ゼミでお世話になった…」
慌てて、自分が元ゼミ生であることを名乗ろうとする青砥。
※紫馬のペースにハマってしまい、仕事で来たという当初の目的を忘れてしまう。

擬音「ビシッ」
紫馬「"学生番号"…それに"卒業論文(そつろん)"の表題(タイトル)を言いたまえ…」
右手人差指を上に向けた紫馬の右手のアップ。
※紫馬が脳の長期記憶から何かを思い出そうとするときの合図。

擬音「!」
口を開けたまま、呆気にとられた表情の青砥と、いけ好かない表情で紫馬を見る星の顔のアップ。

10―11ページ


擬音「たしか…」
擬音「ええと…」
青砥「学生番号は"1213101"で…」
青砥「卒論のタイトルは『鳥羽院政期における院北面(いんのほくめん)の動向…です』
左手の親指と人差し指で自分のアゴをつまみ、考え込むような仕草で答える青砥。

擬音「スッ」
右手人差指を上に向けたままの右手を目の高さまで持ち上げる紫馬。
※紫馬が長期記憶から記憶を取り出す時のポーズ。

擬音「フラフラ」
両目を閉じ、考え込むような表情で右手人差指を小刻みに揺らしながら、記憶を取り出そうとする紫馬の上半身のアップ。
※紫馬の背後には、先程青砥が口にした学籍番号と卒論のタイトルが飛び交っている。

擬音「!」
星「鉄ぅ~あの教授先生(せんせい)…なにしてんのや?」
呆気にとられた表情で、紫馬の奇妙な行動が何なのかを後輩の青砥に問いかける星。
隣に身を乗り出してきた星のことに気づく青砥。

青砥「記憶を…長期記憶(きおく)を取り出しているんです…」
久々に見る紫馬の奇妙な行動に戸惑いながらも、真剣な表情で隣に立つ星に語り掛ける青砥の顔のアップ

星「記憶ぅ!?」
思いがけない青砥の答えに呆気にとられた表情の星の顔のアップ。


青砥「紫馬教授(せんせい)は…物心ついた子供のころから現在(いま)に至るまで…」
青砥「見聞きした"あらゆること"を…忘れずに記憶しているんです!」
両目を閉じ、考え込むような表情で右手人差指を小刻みに揺らしながら、記憶を取り出そうとする紫馬の上半身のアップ。
※紫馬が長期記憶を取り出す時の奇妙なクセについて先輩刑事の星に解説している。

青砥「教授(せんせい)のご専門(日本中世史)から…日常の出来事まで…"長期記憶"を取り出そうとするとき…いつも ああなさるんです…」
星「…」
言葉もなく、信じられないものを見た時のような表情で、紫馬の奇妙な行動を見る星の上半身のアップ。

擬音「ピタリ」
目を開き、小刻みに揺らしていた右手人差指の動きをとめる紫馬。
右手が良く見えるように紫馬の上半身を横から描いた構図で。
※記憶を取り出すポーズの終了。

紫馬「ああ…青砥 鉄くんか…しばらくだね…」
キリッとした表情で教え子である鉄の顔を見る紫馬の顔のアップ。

青砥「教授(せんせい)…」
紫馬にようやく自分のことを思い出してもらい、感激した表情の青砥の上半身のアップ。
感動のあまり、身体が小刻みに震えている。

12―13ページ


擬音「オロッ」
紫馬「あれから…研究は進んでいるかね?」
青砥が訪ねてきた動機よりも、教え子の研究の進展の方を気にする紫馬。
真顔で言われて、ズッコケる青砥。

擬音「ハハハ…」
青砥「いや…そのう…今日は…」
紫馬のペースにハマって、弱腰のしどろもどろの表情の青砥。
※なぜ青砥が研究のことを聞かれて慌てたのか、今後につながる読者への謎の提示。

擬音「サッ」
星「紫馬教授…宮城県警の星と申します」
警察手帳を掲示して、身分を打ち明ける星。
先程までと違い、キリッとした警察官らしい表情で。
※紫馬と青砥の会話が脱線していかないように、2人の会話に割って入る。

星「ゼミ生の"赤司 夏南(あかし かな)"さんのことでお話しを伺いたいのですが…」
星の表情のアップ。どこか、紫馬への威圧感が感じ取れる表情で。

紫馬「ふむ…」
やや俯きがちに、トレードマークの口髭に右手をのばす紫馬。

(時間経過)
※紫馬の研究室へ移動


紫馬の研究室の出入口の扉。
曇りガラスの下のスペースに「紫馬 詮 日本中世史 研究室」と横書きで書かれたマグネットシールが貼られている。

星「先日 青葉区の雑居ビルで1人の男の他殺死体が発見されましてね…」
研究室内。両脇には天井まである本棚があり、ギッシリと史料や研究書が詰まっている。
その真ん中に、長方形の机が置かれていて、紫馬と星・青砥が向き合う形でパイプ椅子に座っている。
紫馬は、両腕を机の上で組みながら、星は机の上で両手の指を交互に重ね合わせながら、話をしている。
青砥は、机の上に手帳を広げてメモを取っている。
※研究室の様子がわかるよう、ややフカンの構図で描く。

擬音「スッ」
星「男(がいしゃ)は 太白区八木山に住む無職 黒岩 新(くろいわ あらた)32歳」 
殺害された黒岩の顔写真を机の上に置く星。
写真の黒岩は、黒髪の短髪で無精ひげの生えた人相の悪い顔をしている。
※紫馬が手に取って見やすい向きで顔写真を置く星。

星「特殊詐欺…いわゆる"オレオレ詐欺"グループのリーダー格だった男です」
右手で顔写真を手に取る紫馬。
※男の顔写真がよくみえるような構図で。

紫馬「私はこの男を知らんが…」
紫馬「この男と…赤司くんとの間にどんな関係があるのかね?」
写真から顔をあげて話す紫馬の上半身のアップ。
※緊張感を出すように、アオリの視点で描く。

14―15ページ


白瀬独白「これ(ハンカチ) 先生にお返しして 謝らないと…」
研究室のあるフロアの廊下を1人歩く白瀬。両手で紫馬のハンカチを大事そうに持っている。

青砥「男(がいしゃ)の部屋(やさ)を捜査(ガサ入れ)した際 押収した証拠品から…」
青砥「赤司 夏南(あかし かな)さんが 特殊詐欺グループの"メンバー"らしいことが判明したのです…」
先程までと違い、真剣な表情で紫馬にこれまでの捜査で分かったことを話す青砥。

紫馬「ふむう…」
右手親指と人差し指で口髭をしごきながら、青砥の話に聞き入る紫馬。

青砥「目下(もっか) 赤司さんの所在を捜査中なのですが 教授(せんせい)からみて…」
右手にペン、左手に手帳を握って、紫馬の言葉を聞き洩らさないよう、真剣な表情でメモを取ろうとする青砥。

擬音「ガチャ」
青砥が研究室のドアノブの音に気づき、ドアの方を見る。


白瀬「赤司さんが 詐欺グループのメンバーだなんて…」
白瀬「嘘ですよね?」
研究室のドアノブを右手で握りながらドアを開けたまま、部屋の入口で立ち尽くす白瀬。
左手で紫馬のハンカチを強く握りしめたまま、信じられないといった表情をしている。

16―17ページ


青砥「きみは さっき 講義室から出ていった…」
おやっという表情で白瀬のいるドアに視線を向ける青砥。
隣に座る星は、怪訝そうな表情のまま。

擬音「サッ」
白瀬「白瀬…兼輔です」
両手で紫馬のハンカチを持ちながら、軽く目礼をする白瀬。

星「きみぃ~赤司さん(かのじょ)とは知り合いなのかね?」
机の上に右手をついた姿勢で、白瀬に話しかける星。

白瀬「えっ…まあ」
赤司との出会いを思い出しながら、遠くを見るような目をした白瀬の横顔のアップ。

(場面転換・白瀬の回想シーン)


数10人規模の大きさで段差のある講義室で講義を受ける白瀬のアップ。
不安げな表情で、俯きがちに視線を落としている。
カジュアルな格好をして、ベースボールキャップを被ったままでいる。
長机の上には、隣の学生と違い何も置いていない。

白瀬独白「まずいなぁ…」
白瀬独白「ノートと史料のコピー 忘れてきちゃったよ…」
白瀬が座っている座席の長机の上のアップ。
長机には、何も置かれていない。

教壇の上に立ち、教卓の前でテキストをめくる講義を受け持ちの大学講師。
紫馬とは別人の短髪で白髪交じりの黒縁眼鏡をかけた背広姿の初老の男性。

擬音「ジロリ」
教壇の上から段差のある講義室全体を見渡す講師の顔のアップ。
※講義室で座る学生たちの様子がわかるような構図で。

擬音「ビクッ」
講師「野球帽をかぶった そこの君…」
白瀬のアップ。

擬音「!」
講師「"文治5年"閏(うるう)4月の記事…"読み下し"で読んでみたまえ」
動揺して、しどろもどろになった白瀬の顔のアップ。
※ちなみに、文治5(1189)年"閏(うるう)4月は、兄である源 頼朝に追討され、東北の奥州藤原氏を頼り、奥州にやってきた源 義経が藤原 泰衡に殺害される時期に該当する。

18―19ページ


擬音「ガタッ」
意を決して立ち上がる白瀬。緊張で身体が小刻みに震えている。

怪訝そうな表情で指名した白瀬を見る講師の上半身のアップ。

擬音「スッ」
右隣の席から、滑るようにノートが白瀬の座席の長机の上に置かれる。
ノートには史料のコピーが貼りつけされ、綺麗な字で読み下し文が書かれている。

擬音「チラッ」
僅かに顔を左手にずらして、視線を左側に向ける白瀬の顔のアップ。

いとおしむような眼差しで微笑む赤司 夏南の顔のアップ。
肩までのびた黒髪のストレートヘアで顔は美人系。
ゆったりとしたワンピースを着用し、左腕には女性用の腕時計をしている。加えて、両腕に、肘まで隠れるくらいの灰色の「日焼け用UVカットグローブ」を着けている。
※UVカットグローブは、のちに事件解決のためのキーアイテムの一つとなる予定。

(時間経過・場面転換)


数階建ての現代的ビルの外観。
最上階の中央部分は、柱や壁の少ないガラス張りの窓になっている。

最上階の窓のアップ。4人掛けのテーブル席でお互い正面を向き合うように座っている白瀬と赤司の横顔。
画面左側には、女の子と2人きりで俯きがちに緊張した表情の白瀬が座り、画面右側には、白瀬を見ながら笑顔で会話する対照的な赤司が座っている。
テーブルの上には、飲みかけのペットボトルと山盛りの駄菓子が置かれている。
※女性関係に疎い白瀬と、活発で親しみやすい赤司の性格の違いを読者に提示する。

字幕「赤司 夏南(あかし かな) 青葉国際文化大学文学部歴史研究科3年(日本史専攻)」
赤司「へえ…白瀬くんもアルバイトで生活費稼いでるんだぁ~」
右手で飲みかけのペットボトルを握りながら、初対面の相手にも関わらず、屈託のない笑顔で話をする赤司。

擬音「チラリ」
白瀬「オレ…奨学金だけじゃ 足りなくて…」
俯いたまま、顔を真っ赤にして身の上話をする白瀬。

白瀬「それに…」
赤司から顔を背けるように、暗い表情をする白瀬。

20―21ページ


擬音「!」
白瀬「10年前の地震で両親が死んで…親に頼れないからさ…」
ハッとした表情の赤司の上半身のアップ。

白瀬「…ごめん 暗い話をしちゃって」
俯いたまま赤司に視線を合わせようとしない白瀬の横顔。

赤司「ううん…私も 高校の時に両親を交通事故で…」
白瀬「…」
自分同様に、赤司も思いがけない境遇にあることに気づき、俯いたままハッとした表情をする白瀬。

擬音「ギュッ」
赤司「なんだかさ…私たちって似たもの同士ね…」
テーブルの上で、日焼け用UVカットグローブを着けた左手の上に右手を重ねて握る赤司。

白瀬「あの…」
赤司「ねえ…」
白瀬は、俯いていた顔を上げて赤司と見つめ合う。

白瀬&赤司「また今度…会えるよね?」
前のコマと同じ構図。カメラを引いて、ガラス窓越しに建物の外部から2人を見ているようなイメージで。

(場面転換・時間経過・回想シーン終了)


擬音「ジワ~」
擬音「イライラ」
青砥独白「"青春" だなあ~」
星独白「けっ こちとら 大学生(ガキ)の恋愛ゴッコを聞きにきてんじゃねえんだ!」
右手でペンを持ち、左手に手帳を持ったまま、自分の学生時代を思い出しつつ、白瀬の話に聞き入る青砥。
青砥と対照的に、一向に赤司の居所に関する話が白瀬の口から出てこないことにいら立った表情の星。腕を組んで顔を背けながら不満げである。
※青砥と星の個性の違いが際立ち、読者に伝わるように。

白瀬「以来…同じ講義のときは 隣の席に座って勉強しているんです」
講義室の長机で隣り合う席に座り、仲良く講義を聴講する白瀬と赤司。

擬音「ドン」
机の上を右手で叩く星の右手のアップ。

擬音「チラッ」
星「のろけ話はそのへんにして…」
星「彼女のバイト先や行きそうな場所…さっさと話してもらえないかな!!」
凄みをきかせた目つきで、犯人を取り調べ時のように白瀬を睨む星の上半身のアップ。

怯えたような表情の白瀬の顔のアップ。

22―23ページ


紫馬「警察の聞き込みに善意で応じている 学生に対して…」
紫馬「机を叩き 話をせかすとは…あまり歓心せんなあ…」
右手の人差指と親指で口ひげをしごきながら、鋭い視線を向ける紫馬。

擬音「ダン」
星「なにぃ~」
青砥「まあまあ…先輩」
両手を机について立ち上がり、今にも紫馬につかみかかろうとする星。
星は、目上の紫馬に対して、苛立ちの表情を隠そうとしない。
オロオロした表情で先輩刑事の星をなだめようとする青砥。

紫馬「白瀬くん…なにか心当たりはあるのかね?」
先程と一転して穏やかな表情で、白瀬の方に向き直って語り掛ける紫馬。

紫馬に指名されて、戸惑った表情の白瀬。

白瀬「バイトは…接客の仕事をしていると言ってたけど お店の名前までは…」
俯きがちに申し訳なさそうな顔の白瀬の上半身のアップ。

手帳にメモをとる姿勢のまま、具体的な手掛かりが得られず、困ったような表情の青砥。
それ見たことかと、呆れた表情でそっぽを向く星。

白瀬「ただ…赤司さん ときどき妙なんです」
再び顔をあげて浮かない表情で話を続ける白瀬。
※白瀬の回想シーン。


白瀬字幕「おれ…バイトが忙しくて 講義を欠席したときのノ―トを赤司さんから借りていたんです」
白瀬「赤司さ~ん」
赤司から借りていたノートを返却したときのことを思い出して紫馬たちに話す白瀬。
講義室前の廊下。赤司を見つけた白瀬は、右手にノートを握りながら、借りていたノートを返すべく、赤司に駆け寄る。
白瀬も赤司もカジュアルな服装をしている。
ただし、その時の赤司は「日焼け用UVカットグローブ」を着用していない。

擬音「サッ」
白瀬「講義ノート(これ) ありがとう!」
両手でノートの両端を握り、はにかんだ表情をしながら丁寧な仕草でノートを返そうとする白瀬。

赤司「…」
見知らぬ人間や関心のない人間を見たときのような、無関心さの感じられる冷めた目線をした赤司の上半身のアップ。
※姿形は同じだが、別人だと思わせるような印象を読者に与えるように。

擬音「パシッ」
擬音「!」
はぎ取るように、白瀬の手からノートを取り上げる赤司。

白瀬字幕「その時の赤司さん…何だかすごく素っ気なくて…」
白瀬字幕「まるで…人が変わったかのようでした…」
白瀬に背を向けて1人廊下を歩いていく赤司。
その様子を戸惑った表情で見送る白瀬の横顔のアップ。

紫馬「…」
無言のまま、白瀬の話を聞く紫馬。

24ページ


擬音「♪~」
背広の上着の右のポケットに入っているスマホの音がなったことに気づく星。

星「星だ…」
右手で握ったスマホを右の耳元にあてて、かかってきた電話にでる星の上半身のアップ。

擬音「!!」
星「なにぃ! そうか…わかった…」
スマホで会話する星の後姿。

星「赤司 夏南らしき若い女性(おんな)が死体で見つかったそうだ…」
鋭い目つきで遠くをみる紫馬の顔のアップ。

第1話終わり。次回に続く。

進展を見せる事件。発見された女性の身元は…?


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