ものぐるほし

37

フォークとマグカップと蛍光灯とポワレ

フォークとナイフをなんなく使えるかを大切にする人間もいるけれど、フォークたちのほうが人間をよく見ている、ほら、いま彼女何か言いかけたよ、肉なんて見てないでさあ、あーあ、やめちゃった

・・・

紙カップはマグカップがうらやましくて仕方がない、取っ手があるのがうらやましい、だって取っ手を持たない人も印象に残るでしょう、蓋されることも少なくて中身がさあ見えるのもうらやましい、あとどのくらい一緒にいたい

もっとみる
ありがとうございます、安心して眠れます
11

お醤油のこととか

電気料金の督促状やら絡まったイヤホンやらの隣にわたしを置いてごはんを食べていたあなたが「お醤油がちょっと足りないかなあ」と話しかけるひとができてよかったです、って、お醤油が言ってました

・・・

もしもわたしが冬眠するタイプの動物で、春を迎えるまでの最後の日を選ぶとしたら今日がいいな。青空がほんのりしていて、なんの音も聴きたくない。

・・・

時間を進めたがる君が鬱陶しい、ことばは進んでいかな

もっとみる
キウイの緑色のものはヘイワード種っていうらしいです。
10

おふとんをめくるのと同じくらいのこと

オーケストラのハーモニーが、いかにも、「ほうら悲しいでしょう」と座席まで迫ってくるのに嫌気が差して、フラットがひとつ増えたからって悲しいなんて思わないようにするぞ、と決める。

♭♭♭

中橋先生が教室の後ろの黒板に、「みんな仲良く」って書いたのをみて、「ほんとかなあ」と思ったこととか、くすんだピンクのことを「ダスティピンク」と呼んで、おしゃれな色と認識することとかと似ている。

もちろんもちろん

もっとみる
ありがとうございます!よく眠れますように
9

今日は自分に飽きなきゃ

飽きてきた。鏡を見て思う。また君か。このからだも考えも動きかたも、飽きてきた。それなのに、お湯を沸かしてねぎを切って、明日も健やかに過ごそうとしてる。これさ、こないだも考えたんだよ。今から数分で変わるねぎのほうが、よっぽどすてき。

自分に飽きたのをごまかすために、おいしいコーヒーを飲みに行く。代々木公園近くのフグレンさん。22時を過ぎているのに、カウンターの隣のレジでご注文をする人間が次々とやっ

もっとみる
あ、となりによいことが近づいてるみたいです
9

油断してコーヒー飲めるっていいと思うの

茶色い角砂糖はごつごつしている。じっと見つめると粒の大きさがばらばら。飴みたいな個包装。ガサガサする。取り出したい。でも、お砂糖の入ったブレンドコーヒーは、いらないなあ。

くるくる回したりぱちりとひっくり返したりしていたら、目の前に座っていた友達に取り上げられた。「食べもので遊ばないの」と笑われる。

代わりに、コーヒーフレッシュを渡してくれる。プラスチックの小さな小さなバケツに、ぺりぺり剥がす

もっとみる
うれしいです。いやはや
14

コミック企画タネ「太陽のスケート」

好き:不可能を可能にする、下から上を目指す
あらすじ:
常夏の国の人々がボブスレーで冬季オリンピックを目指した”クールランニング”のように、亜熱帯の沖縄の褐色の美少女高校生フィギアスケーターが全日本ジュニアスケート選手権優勝を目指す話。

小説企画タネ「気持ちが冷めないうちに」

好き:童貞感
あらすじ:
「コーヒーが冷めないうちに」の設定でアナザーストーリー。
好きな子への告白が成功するかを確かめるために、過去に行って告白して正否を確認。OKをもらえたから、現在に戻って告白するもフラれる。理由を聞くと「もう彼氏ができた」から。あの時勇気を出していれば、上手くいっていた未来があったということを胸に歩み始める。

グレープフルーツ

どうしようもなくて、なんにもしたくないあの重さが舌の根っこに引っかかって離れないとき、グレープフルーツの黄色い厚い皮を剥ぎたくなる。大さわぎするほどのことでもない、だあれも悪くないのに自分にだけは悲しいことがあったとき。深夜のスーパーでグレープフルーツを買う。

まな板に置く前に香りを確かめる。はい、爽やかですね。1Kの簡素なキッチンに無表情なひとりぼっち。手にはナイフ。あなたの柑橘の香りだけが華

もっとみる
ありがとうございます!よく眠れますように
9

事件の香り日記

独特の匂いがしますね。異臭というかなんというか……。

傷口を見るに、ある程度は時間が経ってますね。おそらくナイフが使われたのでしょう。あまりに、美しいですから。

現場は階段なのに、損傷も少ないですね。事故とは考えにくいかもしれません。切られた部位も、見当たりませんし。一部だけ遺棄したのか……それも考えにくいでしょうか。

もしかしたら、犯人がまだ凶器と一緒に所持しているのかも。

それより、あ

もっとみる
あ、となりによいことが近づいてるみたいです
10

もういい、ほんとに、あなたって人は

いちばん好きなオフィスの音は、遠くで原稿を読む先輩の声。「よ、う、こ、そ、こ、ん、に、ち、わ」と、印刷所にかける前の最終原稿を声に出して読み、間違いがないか探している。一字一字ていねいに読みすぎて、変なリズム。いつもより声が可愛くなる。

何かに真剣に向き合う人は静かなものだと思っていたけれど、先輩はうるさい。あいうえおを覚えたばかりの小さな女の子が、ひとつずつ指をさしては文字を読むようだ。とき

もっとみる
キウイの緑色のものはヘイワード種っていうらしいです。
16