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鼻から季節をみる

金木犀の香りがする頃に、いつも鼻水が止まらなくなる。

気温の落差、気圧の上下、秋花粉の飛散で身体がヒィヒィ悲鳴をあげているのだと思う。

うだるような暑さの夏を抜けるとふいにやって来る秋は、サウナの後の水風呂のように気持ちいいけれど、浸りすぎるとやはり風邪をひく。


季節の変わり目には、空気が変わる。

その変化に植物は色づき、その植物を見た人は心動かされる。

嫌われ者の梅雨も、愛される桜や紅葉、全ての色を消す雪も、空気の変わり目を教えてくれる。

ちょっとした特技がある。

その変わり目を人よりも少しだけ早く知ることができるのだ。

どういうことかというと、空気が変わる少し前に、鼻水が出たり、頭が痛くなったり、身体が熱くなったりする。

だから、身体が不調になったら季節の変わり目が間も無くやってくるのを感じる。

最も身体がおかしくなるのが、春を目の前にしながら厳しい寒さに耐える2月の頭だ。

ちょうどその頃から、スギ、マツをはじめとする植物たちは、これでもかと花粉を撒き散らす。

子孫を残そうと必死なのはわかるのだけれども、目が痒く、音がぼんやり、鼻はムズムズ、味はしないし、頭はボーッと、体は火照って、五感のセンサーどころか気持ちまでぼんやりしてくる。

ただ、心も身体も重たくなるその頃にふと、次の季節の景色を頭に思い描くことができる。

スギ花粉到来のニュースでよく見かける黄色い粉を振りまく木々や、人々の話し声でがやがやと浮かれた雰囲気の公園の桜、田植えを控えて水の張られた田んぼが、目に浮かぶ。


今年は昨日からくしゃみが止まらなくなり、電車では鼻水をかみ続け、チラチラと周りの乗客から見られた。

鏡にうつる自分の鼻は、かみすぎでほんのりと赤くなっていた。

ああ、そろそろ紅葉の季節かと思いながら外へ出ると、木々はやはりうっすらと色づき始めていた。

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